yamato2 それから 3
目覚めⅡ
島が個室に移って一週間が過ぎた。その間クルーが島の部屋を訪ねてもぼんやり窓の外を見ていたりで島であって島でない、ような感じだった。
誰もが焦っていた。ヤマトが飛び立つまで時間がない…それなのに島は相変わらずでクルーの大半はまだ入院中だった。
その日、なぜかユキは眠れなかった。進は横で気持ちよさそうに寝ていた。夜の点滴は鎮痛剤のほかに睡眠誘発剤が入っている。
ベッドから降りたユキは眼下に広がる地上の様子を見ていた。夜間工事の現場を照らす灯りがあちらこちらで灯っていた。その灯りがとてもきれいに見えた。
(本当に復興工事の進スピードが速い…私達、置いて行かれそうだわ。)
ぼんやりがなめていたと思ったら急に見えてる画がぼやけた
(やだ…私、泣いてる…)
ユキは慌てて涙をぬぐったが次から次へと止めどなく涙が溢れてきた
(古代くん、起きてみられたら心配しちゃう…)
ユキはそっと部屋を抜け出した。
VIPルームの先にはラウンジがあって大勢で面会に来ても大丈夫になっていた。さすがに深夜とあって誰もいない。間接照明の灯りをたよりにユキは窓に向かっておいてある大きなソファーに静かに座ると何度も涙を拭いた
「ユキ?」
突然呼ばれてユキは声のする方へ目を向けた。ラウンジの入り口に島がいた。飲み物を買いに来たのかマネーカードを持っていた。
「ユキ、泣いてるのか?」
島は心配そうにユキの隣に座った。そこにいるのは今までと同じ島だった
「どうした?あいつとケンカでもしたのか?」
島の優しい声を聞いているとテレサの事を思い出してもっと涙が止まらなくなってしまった。
「…俺?」
島が少し間を置いて聞いて来た
「俺がユキを泣かせてるのか?」
ユキは首を振ることができなかった。ユキが答えられずにいると突然島がユキを抱きしめた。ユキは突然の事で驚き抵抗も何もできずそのまま抱きしめられていた
「ごめん、ユキ…少し…このままでいさせてくれ…」
島の力は強くその力強さは進と同じだった。厚い胸板に温かく優しいぬくもり…力が入っていたユキの力が抜けた
しばらくすると島が泣いていた。静かに涙を流していた。
(島くんは一人で泣いてたのかしら…それとも泣けなかったのかしら…)
ユキはその島の心に触れて悲しくなってそっと島の背中に手をまわした
どれぐらい時間が経っただろう…島はユキを解放すると
「ありがとう」
と言って部屋に戻って行った
ユキはそのままラウンジで朝を迎えた。結局眠れずずっと一人涙を流しながら一晩過ごしてしまった。
(古代くんが起きて私がいなかったら心配しちゃうわね)
ユキは涙をふくと静かに立ち上がって部屋に戻った
「おはよう」
進が起きてきた。ユキは顔を冷たい水で洗って腫れぼったい目を何とか鎮めた。
「おはよう…今日は早いね」(進)
「うん、早く起きちゃった。」
さすがに一睡もできなかった、とは言えず…昨日、島に抱きしめられたことも言えなかった。
「あれ?ユキ、目、赤いよ?大丈夫?」
さすがに一晩泣いていたので腫れた瞼と真っ赤な目は戻っていなかった。まだうっすら赤く腫れていた。
「あ、朝ねまつ毛が入っちゃって…なかなか取れなくてこすちゃったの。
さっきまですごい痛かったんだけどもう大丈夫だから目薬もいらなさそう。」
ユキが眼をパチクリさせて言うと
「ユキのまつ毛じゃ痛そうだな。」
そういいながら進はテレビをつけた。ニュースは藤堂の発表の事、ヤマトの復興計画の推進状況などを伝えていた。
「ニュースがないんだな。」
ヤマトが戻ってきてまだ10日程…特番で“ヤマトの英雄たち”なんて番組が放送されるようでその番組宣伝なども流れていた。
「そっとしておいてほしいのにな…」
進はそういうとテレビを消した
作品名:yamato2 それから 3 作家名:kei