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さらば… イスカンダル 3

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ふたり


  「ただいま」
  「お邪魔します」

二人が玄関を入ってリビングに上がってきた。

  「「お帰り」」

ユキの両親が二人を待っていた。

  「うわぁ…」

テーブルにはお料理がたくさん載っている。

  「さぁ疲れたでしょう?さきに召しあがって。」

ユキの母がそう言うと進はバッグからワインを取り出して

  「お料理に合うかわかりませんが…」

と言って渡した。

  「あら…ありがとう。早速いただこうかしら。」

ユキの母が笑顔になった。いつもタジタジになるが笑うとユキに似てると進は思った。

二人はイスカンダルの事は伏せて訓練の事だけ話した。守の事は軍も公表していなかった事なのでその事に触れず今回の航海の話をした。

そしてそろそろ、と言う時に進がかしこまった。つられてユキもかしこまる。

  「どうしたの?二人揃って?」

ユキの母が二人を交互に見ながら聞いた。

  「ご両親にお願いがあります。余りに都合が良すぎると言われそうなんですが…」

進はここで一回切って

  「ユキさんと一緒に暮らす事を許して頂こうと思い参りました。」

進が深々と頭を下げる。

  「なぜ…なんだい?」

ユキの父が進に聞いて来た。進は頭を下げたまま

  「離れたくないんです。」

と言った。すると父の穏やかな声が聞こえてきた。

  「結婚してからではおそいのかい?」(父)
  「そうよ、結婚してしまえばいいじゃない。」(母)

母も父親に同調する。進は頭を上げた。

  「実は、前の戦いで戦死したとされている兄なんですが…じつはイスカンダル
   で生きていたんです。本当はヤマトに乗って帰ってくる予定でしたが兄は
   イスカンダルの女王と結ばれて…そして今回訓練航海中にイスカンダルに
   事故が発生し惑星自体が暴走してしまいました。私たちは軍の指令で二人を
   救出すべくイスカンダルへ向かいました。結局私たちは女王を救う事が
   できませんでした。救えたのは兄と姪だけで女王は星と共に…本当は一緒に
   ヤマトに来ると言っていたのですが女王は兄とほんの一瞬離れた隙に…
   一人イスカンダルに残り…星を爆破させました。」

進の告白にユキの両親は息を飲んだ。

  「私は軍の人間ですから兄のようにいつも一緒にいられるわけではありませんが
   少しでも時間があるならユキと一緒にいたい、と思うようになりました。
   先の戦いで傍にいる、と言う意味が分かりましたが地上にいる時は少しでも
   傍にいたい、って思うようになりました。婚約したからそろそろ一緒に暮
   らそう、ではないんです。
   今回、私はもう会えないと思っていた兄と再会する事が出来ましたが義姉
   を失いました。」

進の言葉にユキの両親は結婚式は遠い事を感じた。

  「私も…古代くんと一緒にいたい。守さんを見て思ったの。後悔しない
   人生なんてないだろうけど…少しでも後悔したくないって…。だからお願い
   します。ふたりで暮らすのを許してください。」

ユキも立ち上がって頭を下げた。進も一緒に頭を下げる。ユキの両親は困惑してしまった。

  「二人の意志は固いようだな。」(父)
  「あなた…」(母)
  「進くんもユキも寮だから黙っていても一緒に住む事なんかできるのに…
   進くんの私たちを思う気持ち、ありがたいと思う。まぁ…二人とも座りな
   さい。」(父)

進とユキは目を合わせて座った。

  「ユキは何を言っても自分を通す子供だった。小学生までは素直だったん
   だがな…。」

父はそう言いながら高級品になったタバコに火をつけた。

  「本来なら反対するところなんだろうが…いい加減な気持ちじゃなさそうだし
   考えてみたら何事もなければふたりは幸せに暮らしていただろう…」

父は諦めたような言い方をしたが…

  「ただ、一つだけ頼みがある…結婚するまで孫の報告は聞きたくないんだ。
   世間体、とかではなくこれはふたりのけじめ、として…。いいかね?」

そう言って笑った。母は“あなた!”と言って釈然としない感じだったが

  「ユキが一緒にいたい、と言ってるんだ。キミに似てガンコだからね。反対
   したって無駄だよ。ほら、鏡見てるみたいだろ?」

父が笑いながら進に話しかける。

  「はい、とても似てますが…笑うと本当にそっくりで…ユキの将来って
   こうなるんだろうな、って時々思います。」

進が正直に答える

  「古代くん!」「進くん!」

二人の声が重なりまた声もよく似てるから笑える。父も笑っていた。

  「これからは進くんもうちに来る時は“ただいま”って言うんだよ。」

父は優しく進に言った。



作品名:さらば… イスカンダル 3 作家名:kei