永遠に…の傷跡 3
「俺だ、島だ。」
ノックの音がした後島の声がしたので相原は通信室の扉を開けた
「ユキはどうだった?」
「今日はユキさんでなく先輩の伊藤さんでした。ユキさんは長官のお供でアメリカの
大統領府へ向かって二日間戻ってこないそうです。だから顔を見ることができなかった
んですが…あまりよくないと思います。顔色はいつも青いしかなりやせ細ってると
思いますよ。どうも長官がいつも行動を共にしているようです。」
「そうか…」
「島さん、そろそろ?」
「あぁ、心配していた事が起き始めた。どうもどこからかの通信を傍受してユキの
スキャンダルを聞いたやつがいるらしいんだ。それもひとりじゃない。まぁ休憩時間が
たっぷりあるし端末つなげば地球のニュースぐらいは衛星が多少生きていれば
飛んでるのをキャッチできる。」
「この航海から飛んでるヤツはユキの事知らないから記事を信じてしまうかもしれない」
「聞かれたら島さんはどう答えますか?」
「そうだな、俺だったら“ユキを知らない人間の噂なんて信じるな、ヤマトクルーを
疑うな”だろうな。俺たちは一緒に戦ったんだ。少しでも疑ったら俺が許さない、と
付け加えれば大丈夫だろう。」
「島さんに言われたら怖くて何も言えないでしょうね。でもそれが一番かもしれません
私も聞かれたらそう答えますよ。」
「俺たちに出来るのはそれぐらいしかない。」
「そうですね。」
二人は通信室を出た。
「これからどうするんだ?」
「はい、これからヤマト農園に行って…それから幕の内さんと4日間の食事の献立の
打ち合わせです。どうせなら残さないでいいもの作ってもらおうと思ってるんです。」
「そうか、今回は…」
「ユキさんが乗っていないので全部私の仕事になっているんですよ。ホント、ユキさん
ってすごいですよね。旧式のレーダー扱って看護師もしてみんなの健康管理も
してるんですよ。んでもって艦載機も乗り回し地上に戻れば長官の第一秘書。
容姿端麗…」
「でもな、ひとつ欠点がある」
「?」
「相手が古代ってことだ。きっと長官のお供であちこち行ってればそりゃぁすごい
大富豪からのオファーだってあるだろうにな。」
島の一言を聞いて相原は納得してしまった。
「懐かしいですね。イスカンダルへ行った最初の航海が。」
「そうだな…何もかも必死で…あ、今も必死だぞ!…でも火星から外にほとんどでた
ことのない人間ばかりで太陽系はおろか銀河を出て…なんて本当、今思うとすごい
危険な賭けだったよな。」
「そうですね。その苦しさを一緒に乗り越えた人間同士だったら絶対に疑ったり
しないだろうにな。」
相原の言葉は当然だった。離れていても一緒に戦ってる…いつもそう思っていたからそれから相原はヤマト農園へ島は第二艦橋へ向かった