永遠に…の傷跡 5
午後になり佐渡が回診に来た時ユキの血圧は80/50まで上がっていて今日一日の様子を見て酸素も外そうということになった。
佐渡と入れ替わりでノックの音がして相原が入ってきた。
相原は昨日と同じ荷物を持っていた
「相原…秋田に戻ってたんじゃなかったのか?」(南部)
「えぇ、行ってきましたが…オフクロの顔見てトンボ帰りしちゃいました。オフクロも
そわそわしてたら“私は大丈夫だから帰りなさい”って言われちゃって…」
「お前、親不孝もんだな」(島)
「そんなことないですよ。ちゃんと顔出して朝飯一緒に食べてきたんですから!」
「…っていつ秋田に飛んだの?」(太田)
「昨日その足で…すっごいヤマトの制服って目立つんでしょうがないからトイレで
着替えたんだけど部屋着しか持ってなくて…スエットで里帰り。近所歩くの
恥ずかしくて…で、秋田に置いてある私服でこっちに戻って来たってわけ。
親不孝者じゃないぞ、一泊してきたんだからな!…それよりどうですか?
昨日に比べたら随分顔色いいですね。もう落ち着きましたか?」
「あぁ、午前中に一度目が覚めてね。でも疲れるからって薬でまた眠ってるんだ」(古代)
「そうですか!良かった…向こうは何もなくって…でも手ぶらじゃ…って思って
仕方ないからリンゴジュース買ってきました。…ってこれはユキさんにって買って
来たんですよ!リンゴはきっと胃にやさしいと思ったから!」
相原は特に太田に取られまいとお土産を抱きかかえた。
「それと…伊藤さんから気になる情報が入りまして…」
「噂の出所か?」(真田)
「はい。やはり一般からパルチザンに志願した兵士からの情報のようですね。
報告書にあった通りユキさんは情報将校から図面をもらって解体に成功した。
ここまではいいんです。でもそれは一般市民に公開されていない情報だったんです
一般市民にはパルチザンがトンネル掘ってバリアー内に侵入し爆弾内部で
白兵戦を行い占拠することに成功した。その後ほぼ同時刻ヤマトが本星の起爆
装置破壊に成功、すべての地球市民は救われた!ってことになってたんですよ。」
「でも…情報は漏れた」(島)
「一般のパルチザンにしてみたらユキさんは英雄なんですよ。ただそれを由としない
連中もいるってことです。その内部情報を手に入れた記者が軍に確認したところ
たまたま反ヤマト派だったようで記事をあたかもスキャンダルがあったような言い方を
したようですね。」
「それは誰か分かったのか」
今まで黙って聞いていた進が口を開いた。そこにはユキを見つめる優しい青戦闘モードのオーラが出てる戦闘班長、古代進がいた
「わかりました。…でも、古代さんダメですよ。長官も動いています。……以前に
ヤマトが廃艦になりかけた時…あの頃の防衛会議の議長…誰だか覚えてますか?」
「織田議長だ。」(真田)
「あの時会議に出席していたお偉さん方は地球の危機を未然防げなかったと、地球
の戦闘能力を過信していたと言って総辞職しました。しかし織田議長は中立だった
と頑として譲らず今に至っています。今は議長ではなく一般議員ですが完全に
反ヤマト派だったにも関わらず…辞職せず残っています。
おそらくその時の恨み…といいますか…ユキさんををつぶしにかかったんだと思います。
長官秘書のスキャンダルとあれば長官もつぶせるかもしれない…長官はヤマトの
最初の航海から携わっているから完全ヤマト派だ。長官をつぶせば自然とヤマト
もつぶせる=メインクルーの失脚だ。」
病室の空気が一転した。今にも全面戦争が起きそうな空気だった
「長官は何て言ってるのか」(真田)
「直接織田が手を下したとは考えにくい…と。織田だけを問い詰めてもしらばっくれる
可能性がある。もう少し様子を見て軍の統一を守れない人間を締め出すとの事
らしいのですが…」
「古代…ユキのために動きたいのは俺たちも一緒だ。でも今はユキの傍にいてやるの
がお前の仕事だ。ユキを一人にするな。」
真田が進に…みんなに言い聞かせるように言った。