永遠に…の傷後 11
ユキの戦いⅩ
とぎれとぎれに人の会話が聞こえてくるが余りはっきり聞こえない。その時誰かが部屋を出て行った
「…動き始めたのかもしれないな…」
進がつぶやくように言った
「きっと…私にいいことじゃないわね…」
ユキの瞳に涙があふれてくる
「どうしてそっとしておいてくれないのかしら…私…なにも望んでないのに…」
そう言うとどっと涙があふれて来た。それと同時に腹部も痛む
「…ユキ…」
「私はただ古代くんと一緒にいたいだけなのに…」
酸素マスクをしているので涙がうまく拭けないユキに代わり進がそっとユキの涙を拭く
「きっとね…俺たちに乗り越えられる、って信じてる神様の試練なんだよ。」
進が優しく言った
「普通の人間じゃ耐えきれない試練を乗り越えろって…きっとそう言ってるんだ。ユキだけ
じゃない。俺も一緒に乗り越えるからがんばろう。…痛むんだろう?ここか?」
進はユキのおなかのあたりの手を置いた。進の温かい手が気のせいか痛みを和らげてくれる感じがした。
「…少し眠ろう…起きたらさっきの斉藤の日誌の続きを読もう」
進の左手はユキの左手を握り進の右手は腹部を覆っていた。少し無理をしていたのかユキはしばらく目をつむるとすぐに眠りに落ちて行った。進は熟睡したユキの左手を布団の中に入れるとみんなのいる部屋に入って行った
「…古代…ユキは寝たのか?」(島)
「やっとね…鎮痛剤が少なくなった分起きてる時間が長くなったけどやっぱりきついみたいだ。」(進)
「もう少し静かな環境で眠らせてやりたいが…すまんな、古代」(真田)
「真田さん、そんなこと言ったら南部に怒られますって…って南部は?」(進)
「今織田とつながってる人間の名刺をとりに出かけた。例の記事を書いたヤツが泉に接触して
きた。泉が気を利かせて携帯で知らせてくれてな…もうすぐ戻ってくるだろう。」(真田)
「…そうですか…じゃぁまたユキの事で記事が出てしまうんでしょうか…」(進)
「…そうならないように手を打ちたいのだが…すまん、古代」(真田)
島も古代から視線を反らした。
作品名:永遠に…の傷後 11 作家名:kei