永遠に…の傷跡 12
ユキの戦いⅩⅠ
ユキの診察が終わったので南部は主湯を持ってくるように頼んだ。
「古代、来たぞ」
南部にそう声をかけられて進が主湯をとりに行く
「ありがとう…」
進はそう言うと小さな器の主湯を受け取り再びユキの元へ行った
「ユキ、食べられるか?」
進が横に座りながら声をかけた。ユキは黙ってうなずく
「熱そうだな、ヤケドするなよ」
「やだぁ古代くん、私赤ん坊じゃないのよ」
ユキがそう言って笑う
「今は赤ちゃんと同じだろ。ほらフーフーしてやるから」
「やぁだ~古代くんったら…」
隣で聞こえる会話はだいぶしっかりして来たようだと島や真田は安心していた。
でも進はユキが無理しているのではないかと反対に心配になった
「お米の味がするけど…やっぱり本当のお米食べたいなぁ…」
ユキがそう言うと
「味気ないよな、それじゃぁ…明日先生に聞いてみようか、薄めたジュースのんでいいか。
相原がリンゴジュース買ってきてくれてるんだ。でもなあいつ俺らには飲ませないって
ユキに買ってきたから絶対飲んじゃ駄目だってさ。それともう少し良くなったら山崎さんの
奥さんが野菜スープ作ってきてくれたんだって。冷凍してあるからいつでも飲めるってさ。
このスイートコンドミニアムっぽくって…ミニキッチンが付いてるから温めればいつでも
飲めるから…先生がいい、って言ってくれたら頂こう。」
ユキがうれしそうにうなずく
「今日もみんな来てくれてるんだよ。はやく良くならなくちゃね。」
ユキはそれを聞きながら子供の茶碗の一杯分の半分弱の主湯を食べた
「…ごちそうさま、していい?」
「いいよ、白湯飲みたかったらいつでも言って。用意してあるから。」
「うん、今は大丈夫…それより古代くんのご飯は?」
「ユキが寝たら食べるよ。」
そう進が言うと
「寝たくないの…」
ユキが器を進に渡しながらつぶやいた
「…?ユキ?どうしたの?」
進は聞き間違いかと思いもう一度聞いてみた
「寝ないと…体力戻らないし…」
進は器をサイドテーブルに置くと雪の左手を握ろうとしたがユキはそれを振り払い布団をかぶった
「ユキ…どうした?何か思い出したのか?」
薬で眠らされていた時と違いウツラウツラすることの方が多いので夢を見ることが増えてきて以前は夢を見てもあまり記憶になかったのだが特に先の夢は夢ではなく事実だった
(…怖い…私は本当に潔白なんだろうか…記憶にないところで誰かが私を…?)
作品名:永遠に…の傷跡 12 作家名:kei