永遠に…の傷跡 16
白昼夢
翌朝院長の山下と看護師の吉田がやってきて点滴の代わりに栄養剤と痛み止めをユキに渡し帰って来たらその足で病院へ来て検査入院すること、決して無理をしないことなど念押しして病院へ戻っていった
二人と入れ替わりに相原と太田が入ってきて3人を迎えにきた
ユキは用意された車いすには乗らずゆっくり自分の足で歩いた。ロビーにつくとフロントに挨拶して用意されていたエアカーに乗りエアポートへ向かった。
地上のエアポートはまだ限られた人間しか利用することはできない。
5人の乗ったエアカーはいくつかのチェックポイントをスルーして地上のエアポートへ入っていくとちょうど後ろから南部たちの乗ったエアカーが入ってきた。エアポートにはすでに“南部重工”と名前の入ったプライベートジェットがいつでも離発着できる状態で止まっていて2台のエアカーはジェットのふもとで止まると
「おはよう」
アスファルトとジェットのエンジンの熱気がすごくユキの体調を気遣って南部が先にジェットに乗りましょうと挨拶もそこそこに全員ジェットに乗り込んだ
ユキはジェットに乗ってすぐ山崎夫婦を捕まえると
「山崎さん、奥さま…本当にお世話になりました。奥さまの野菜スープとてもおいしかったです。
野菜とか入手が難しい時なのに、本当にありがとうございました。何かお礼を…と思っていた
のですが急にこうなってしまって用意できなくて…」
ユキが深々と頭を下げると後から付いてきた進も一緒に頭を下げた
「生活班長、いいんですよ、うちのヤツは料理が得意でね…」
山崎が少し照れるようにして言うと
「ウチじゃ誰も味わって食べてくれませんから…それに私にしてみたら反対に森さんに感謝
してるんですよ。ヤマトの中でこの人の面倒みてもらってるんですからね。よく話をきくんですよ
“メシ喰い忘れれると生活班長が用意して声かけてくれるんだ”って。そりゃぁうれしそうに。
最近じゃわざと忘れて声かけてもらうの待ってるんじゃないかって思うほどです。
本調子になったらぜひ我が家にお二人でお越しになって下さいね。現地でたくさんお話
しましょうね」
にっこり笑う夫人にユキも“よろしくおねがいします”と言った
「このジェットは1階と2階があって2階はユキさんと古代で使って…ファーストクラスよりいい
シート使ってるからユキさんも疲れないと思う。1階はファーストクラスと同じクラスのシートを
使ってるから…みんな汚すなよ!(笑)さて2階案内しようか」
南部が2階に通じる階段を上り始めた時何となく違和感を感じた。南部にユキが続き最後に進が上ってきたが進も何かを感じていた
作品名:永遠に…の傷跡 16 作家名:kei