Wizard//Magica Infinity −8−
「俊平っ…凛子ちゃんっ…コヨミぃ……」
しまった、予言日記を濡らしてしまった。
だってしょうがないだろ…
涙が止まらない…いくら手で拭ってもいくらでも溢れてくる。
俺はなんて馬鹿なんだろう。
自分一人が絶望していたなんて勝手に思い込んで。
皆は…探検部の皆は全く絶望してなんかなかった。
皆、過去、現在、未来を受け入れていたから。
俺だけが、過去から逃げていた。
現在を受け入れられなかった。
未来を望んでいなかった。
「うっ…グスっ……」
「ハルト…」
「…解ったよ…答え」
3つの予言日記を持ち、俺は立つ。
やっと見つけた。俺の、俺が探し求めていた答え。
「…やっと見つけたのね、あんたの、ハルトの生きてきた答え」
「あぁ」
答えは至ってシンプル。
良い意味でも、悪い意味でも、全てはインキュベーターの言う通りだった。
皮肉にも、奴は俺より先に俺自身の答えを知っていたんだ。
いや、俺だけじゃない。
俺と、魔法少女達の生きていく答えを知っていたんだ。
「俺達は、ずっと過去から逃げていた。だから希望を求めた。
絶望から逃げ、たった一つの逃げ口の希望へと。だけど、それじゃあ駄目なんだ。
希望と絶望、どちらも一緒、最初は一つだったんだ。俺は過去−絶望−から逃げ続けていた。
そして魔法−希望−を得て仮初の快楽で満足しきっていた。
だからあえて受け入れなくちゃあいけない。
過去と現在を受け入れられない限り、俺達は未来を得ることはできない。
そうだ…俺達が求めていた未来こそ、本当の意味の希望だったんだ!」
−「やっと、見つけることができたんだね。ハルトくん」−
頭の中に聞き覚えのある声が響き渡る。
俺はこの声の主を知っている…まさか!
「まどか…ちゃん?」
「まどか!」
−「頑張ったね、ハルトくん。やっと自分自身が今まで戦ってきた意味と答えを見つける事ができたんだね」−
「あぁ、ありがとう まどかちゃん。やっぱり君は、俺自身の希望だった。君が教えてくれたんだ…そしてもう一つ、俺が魔法少女を救ってきた本当の意味も、見つけ出すことができた」
−「…気づいたんだね、えへへ」−
「あぁ…遅すぎたけどね」
「だったら、教えてもらおう。お前が魔法少女達を救ってきた本当の意味というやつを!」
「っ!」
「あいつ…こんなところまで!」
気がつくと、俺達の目の前にもう一人の『俺』がドライバーを出現させた状態で立っていた。
いや、俺はもうこいつと戦わない。
こいつは、俺自身なんだ。
「……来い、俺の絶望」
「ハルトっ!?」
「結局、俺と戦うのか。いいだろう、相手に−−−」
「違うっ!!」
「?」
俺は両手を広げる。
変身する気にもならない。
なぜなら、戦う必要性は全くないからだ。
「俺は…お前−絶望−を受け入れる!俺が希望だというのなら、俺はお前を受け入れなければいけない使命がある!!」
「…俺を受け入れれば、お前自身の姿をした個体は消えてしまう。それでもなお、俺を受けれるというのか?」
「あぁ、俺はもう現実から逃げない。俺は、自分のこの姿を満足しきっていた。過去が受け入れられなかったから!」
「ふん!お前が俺を受け入れたところで、何もかわらない!!お前は今まで戦ってきた意味も理解していないからな!!」
「それは違う!!俺は、ようやく見つけ出せたんだ!!俺は、確かに魔法少女達の絶望を振り払い、希望を与えてきた。だけどそれは違った!俺が本当に彼女達を守ってきたもの、それは、彼女達の『心』だっ!!」
「っ!!『心』…だと?」
「俺は、彼女達から消えそうになっていた『心』を救ってきた!!希望も絶望も、一つの心なんだ!!これが俺自身の答えだっ!!もう一人の俺!!」
「………良いのか?」
「あぁ、覚悟はある!!」
俺自身に迷いは全く無い。
俺は全てを受け入れる。
なら、もう一人の俺を受け入れる!
「……覚悟しろ、希望」
「っ!!」
「絶望は、ちょっとばかり重いぞッッッ!!!!」
その瞬間、もう一人の俺は強大な魔力を放ち、少しずつ身体の形を変えていった。
するとどうだろうか…人間の身体をしていたもう一人の俺は銀色の…龍、そうだ…『ドラゴン』の姿へと変貌した。
『さぁ!受け入れてみろ!!絶望をッ!!』
「ハルトっ!」
「大丈夫だよ、さやかちゃん」
腰のベルトを出現させ、俺は右手に指輪を装着した。
「『リボーン』プリーズ!」
「ドラゴンっ!!俺に従え!!!!」
俺はドラゴンに指輪を掲げる。
そして…辺り一面が真っ白になる−−−。
作品名:Wizard//Magica Infinity −8− 作家名:a-o-w