二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
氷雲しょういち
氷雲しょういち
novelistID. 39642
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

第12Q 乗り越えたし

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
1-黄瀬涼太
「ったく、テメェがちんたら飲み物とかとか買ってたから、もう始まってんだろうが、試合!」
「いてっ!」
笠松先輩にシバかれ、会場入りする。階段を下り、観客の熱気を浴びた。
スコアボードを見て、「え?」と不思議がった。
そこには正邦、誠凛の得点が書かれていた。
「12対0!?」
そう、誠凛の圧倒的な負けが描かれていた。
「えええええーーー」
「おいおい、マジかよ……」
先輩も頭を掻いて、ため息をついた。
コートでは、火神にパスが回ったところだ。アイツの前には、たしか、津川が立ち塞がっていた。
火神がボールをキャッチした瞬間に、津川の手が迫る。ドライブどころか、動くことすらままならないようだ。
「うおぉ、すげえ圧力!!なんだ、アイツ!?」
そんなことを言う観客。だが、見た目以上のはずだ。
DVDでスカウディングをしているであろうとはいえ、実際に体験した俺にはわかる。あの圧力は、想像以上のはずだ。
「ハハッ」
笑顔でDFを続ける津川。しかし圧力に変わった様子は見られない。
そこに一人の男子――たしか伊月って奴が火神に近づく。
「火神、持ちすぎだ!よこせ!!」
そう言って、ボールをもらい、そのまま火神ごと津川を抜いた。――走る方向を火神のところで方向転換して、同時にもうひとりの正邦に意表をついて抜いた。
「およっ?!」
彼の想定とは逆の方から伊月が抜けていった。
「よし、もらった!!」
そして、そのまま伊月はレイアップを決め――ようとした直前に、正邦の主将が浮いたボールを弾いたのだった。
おそらく完全にフリーだと思っていたのだろう。驚きが顔一面に広がっていた。
「甘いな。その程度の攻めでうちのDFは崩せない」
そう言い放ったようで、誠凛の主将さんも「守り固ぇ……」と焦ったように呟いた。
観客も「まだ誠凛点が取れない!!すげぇ!!!」と沸く。
俺と笠松先輩は座り、観戦する。
「何やってんすか、もぅ」
「んー、この前やって思ったけど、誠凛は基本スロースターターっぽいな。けど、そこでいつも初っ端にアクセル踏み込むのが火神なんだろうが。そいつがまだ来ねぇから、なおさら波に乗れてねぇんだな」
笠松先輩が説き、戦況を見た。
火神をDFし続ける津川のもとに、正邦の選手のひとりが近づいて、何か言った。それを津川が笑顔で答える。
「大丈夫っすよ。こいつ、思ったほどでもないんで、余裕っす!」
あからさまな挑発、というより無意識な発言であろう。だが、それにもあの火神(バカ)はキレた。
「んだと、テメェ!!!」
と突進するという原始的対抗をした。
もちろん、それがレフェリーに許される訳もなく、「チャージング、白10番!」と示したのだった。
「なっ!」
とちょっと驚いていたが、当たり前である。誠凛ベンチから「火神。落ち着けー!」と叫んでいた。
どうやら、すでに火神はファール2個目らしい。5個で退場なので、ちょっとやばいはずだ。
にしても、やはり動きづらいのであろう。俺も、違和感は強く残る。
パスもろくに出せないので、黒子っちとの連携もほとんど使えてなかった。
現に、いま黒子っちが伊月からボールを回されたが、4人ともフリーでなく、パスコースがない!
黒子っちはボールを慌ててキャッチした。
それを見ながら、笠松先輩が言う。
「正邦のDFは全員マンツーマン。が、波のマンツーじゃねぇ。常に勝負どころみたいに超密着でプレッシャーをかけてくる。ちょっとやそっとのカットじゃ、振り切れねぇ。そして、いくら誠凛のパスがすごくても、フリーがほとんどできないんじゃ、威力は半減だ」
「DF厳しいのはわかったッスけど、んなやり方じゃ、最後まで体力保たないッスよね?」
「あいつらは保つんだよ」
先輩がそう言ったところで、誠凛のタイムアウトが宣告されたのだった。

2-紺野舞
「一旦お帰り、みんな」
私が言うと、汗を拭きながらバカ神くんが言った。
それを呆れながら黒子くんが否定する。
「最初に言ってたじゃないですか、紺野さんはこの試合なるべく出ない、と」
そう私は言った。理由は、DFの密着度を考慮して、というのと、
「動きを読むための補正と、まぁあと気になることもあるしね」
そう言ったのだ。
そこで相田先輩は「さぁ、そろそろ話するわよ。火神くんも」と声をかけて、真面目な話を始めた。
「正邦は、古武術を使うのよ」
それを、
「古武術?アチョー、みたいな」
バカ神くんが叩き壊す。
「バカ神くん、それは古武術じゃないよ」
「紺野さん、そうよ。それと火神くん、正確に言うと、『古武術の動き』を取り入れてあるの」
「例えば、なんすか?」
「そうね、ひとつ、『ナンパ走り』っていうのがあるわ。普通は手足を交互に振って走るけど、ナンパ走りは同じ側の手足を振って走る。捻らないことで体の負担が減って、エネルギーロスを減らせるらしいの」
「へぇ」
「ナンパ走りのほかにもふんばらずに力を出したり、タメを作らずに早く動いたり、色んな基本動作に古武術を応用しているの。それが正邦の強さなの」
そこでバカ神くんが呟いた。
「古武術の動き、あの違和感はそうゆうことか」
相田先輩は頷いて、続ける。
「けど消えたり飛んだりするわけじゃないわ。相手は同じ高校生よ!フェイクにもかかるし、不意を疲れれば、バランスも崩れる。やってることは、同じバスケよ!いつも通りやれば、ちゃんと通用するわ!!」
そこまで言い終わってから、バカ神くんたちは立ち上がる。
そして、バカ神くんは伊月先輩に話した。
「伊月先輩、ボール回してもらえないスか?」
「え?」
「もっかいアイツと、津川とやらせてください」
「じゃ、任せていいのか?秘策は?」
「いや、ないっすけど、とどのつまり同じ人間っすよね。相手より速く、ブチ抜けばいいんだよ……です」
そこまで言ったところで、伊月先輩は「うおー、なんだそれ。大丈夫か?」と呆れる。
黒子くんは、
「大丈夫と思います。やるときはやる人ですから」
そうバカ神くんを見つめるのだった。
さて、試合再開。
津川くんがマークするバカ神くんのもとに、即ボールが回る。
それをパス・シュート・ドライブ前の基本状態、ボールを持ったままのトリプルスレットの状態から、相対し、すぐにドライブで左から抜きにかかる。それに反応して津川くんも左に動く。
しかし、予想していたのか、バカ神くんは一度スピードを落としたレッグスルーで左手にボールをやる。
津川くんが一瞬驚き、しかし体が反応できずにいるうちに、さっきのドライブの時よりもハイスピードに左からブチ抜いた。
フェイクを入れての、チェンジオブペース。
そして、
ダッガン!!!!
豪快なダンクを決めたのだった。
「はえええ!電光石火?!!」
と歓声が沸く。
それを見届け、すぐに津川くんのもとに春日さんが駆け寄る。
「おいっ、大丈夫かよ?初めて見たぞ、お前が抜かれたとこ……」
「まだまだっすよ、楽しい時間は」
不敵な笑みを浮かべて、バカ神くんを見据えていた。
さて、次は正邦ボールだ。春日さんがボールを持ち、すぐにパスをした。
「って、もらってから投げるまでがめちゃくちゃ速ぇ!!」
次の選手もどんどんパスをし合う。高速のパスはうちのコートに切り込む。