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氷雲しょういち
氷雲しょういち
novelistID. 39642
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第12Q 乗り越えたし

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そして、ゴール下の水戸部先輩らの下に飛んできた。
「行ったぞ、水戸部!!!」
岩村さんはキャッチしてすぐにゴールを見据えて水戸部先輩に向かい合う。
直後、津川のペネレイトを察し、パスを送る。
バカ神くんも着いてきていたようで、後ろから手を伸ばしてレイアップを弾こうとした。けれども、
ピーーー!!
やはり腕に触れたようで、ファールが宣告された。
って、もう3つ目じゃん……。
「動きが早いというより、モーションが少ないわね」
「構えないで投げてる、みたいな、ですかね」
「DFだけじゃなく、OFも……さすが、王者ですね」
私やクリ旗くんの発言に相田先輩が答える。
「たしかに、正邦には黄瀬くんや火神くんみたいな天才型のスコアラーはいないけど、タイプが違う……OFもDFも古武術の応用がある。特に三年ともなれば、相当なレベルよね。正邦は天才がいるんじゃない。達人がいるのよ。でも、」
先輩はそう続けて、ニヤリとした。
「達人はうちにもいるわよ」
そこでちょうどボールがコートから出た。
「アウトオブバウンズ!白ボール!」
第一Qは残り五分。
津川くんはボードを見ながら、すこしションボリとしている。
「9点差、か。んーんーんーん?」
黒子くんとぶつかる津川くん。
「すいません」と謝る黒子くんに、「あれ、君は?」と疑問符を掲げ、
「誰?ってか、誰よ?!試合出てたっけ?!!」
それは一気に膨れ上がった。
それに対し、黒子くんは淡々と、
「黒子テツヤです。出てました」
返し、津川くんは、
「うっそだー!!マジ?!!存在感なさすぎっしょ!!!!!」
動揺を隠せないでいる。
……ってか、昔対戦したのよね?
「よく知らねぇけど、補欠みたいな?じゃあ、そのまま頑張っててよ!」
そこまで言って、いきなりピースを出す。
「去年先輩たちはさ、誠凛に第一Qで20点差つけてたらしいんだ。だからさ、」
と指を二本から三本に変えて続ける。
「俺は三十点差くらいつけたくてさ!じゃね、補欠の人!」
津川くんは黒子くんの肩をポンポンッと叩き、去る。
それを黒子くんは静かに見送り、伊月先輩に近づいた。何かを相談して、散る。
誠凛ボールでそれぞれがハーフコートマンツーマン。マジでベッタリだから、パス回すのもしんどそうだ。
しかし、伊月先輩は構わず投げた。
それは水戸部先輩に行くかと思いきや、水戸部先輩に対する岩本さんの背後を抜け、ラインを出、
る直前に黒子くんがボールをUターンさせてDFの裏から水戸部先輩に回した。
それに意表を突かれたらしく、驚く岩本さんを尻目に水戸部先輩はシュートを入れる。
この一部始終で観客は歓声を上げる。
「何だ、今のブーメランみたいなパス?!戻ってきた?!!」
「チゲぇよ!誰かがタップパスで向きを変えたんだよ!」
「誰が?」
「……さあ」
みたいな。
それを見て、相田先輩はニヤついた。
「いくら鉄壁のDFも壁の内側からパスくらったことは無いみたいね」
コートでは正邦の選手たちが「くそっ……」と苦しげに口にしている。
それを見据えてか、春日さんはゆったりとした口調で声を出した。
「まぁまぁ、落ち着きんしゃーい」
そのまま伊月先輩をするりと抜け、力を落としまくったまま、すとーんっと優しいドリブルをした。なのに、早い。
そして、のっそりという効果音がついてるように腕を伸ばして、
「っしょーい」
とシュートを撃つ、いや、放った。
が、手を離れたボールはバカ神くんが叩き落とした。
「うおぉ、ブロック高ぇえ!!誠凛、俄然勢いづいてきた!!」
そのボールを伊月先輩がキャッチして、日向先輩に渡す。
そこから流れは明らかに誠凛であった。
日向先輩が正邦選手に立ちふさがり、伊月先輩がレイアップを決め、黒子くんは津川くんのボールを弾いた。
「あっ?!!」
と津川くんが驚愕し、そのボールは日向先輩に渡って、流れるようにシュートを撃った。
バッシャアアア
ネットが揺れて、ブザーは鳴って、第一Qが終了を告げた。
そこで岩本さんが津川くんの首を担いで、日向先輩に近づいた。
「そういえば、コイツがまたバカ言ったそうだな」
「ああ、いや、ぶっちゃけ、はい。去年のトラウマ、思い出したし。けど、まぁ全然いいっすよ」
先輩は腰に手を当て、一堂は介した。
「乗り越えたし」
19-19。同点となれたのだった。

NG
黒子「最初に言ってたじゃないですか、紺野さんはこの試合なるべく出ない、と」
火神「ってか、サボりか」
紺野「……ハハッ」
バキャンッ
火神「腰!!俺試合中だぞ!!痛いって!!決まってるって!!!!」