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はるちゃんの彼氏

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りんはるちゃん



凛は遙と一緒に石段をのぼっていた。
神社まで続く石段を半分ぐらい行き左折したところに遙の家がある。
夏が終わり、秋も深まってきて、日が暮れるのは早くなり、そして空気は冷えている。
今日は日曜日で、遙と出かけた。その帰りだ。
まあ、つまり、デートして、家まで送っているところである。
しかし、隣を歩いている遙とのあいだに会話はない。
遙はもともと無愛想で無口なタイプだ。
それでも凛がいると、それは付き合うまえからのことであるが、遙はいつもよりは喋ると言われていた。
今、どうやら遙は機嫌が悪いらしい。
凛は今日あったことを振り返ってみる。
通りかかった店先にあったアクセサリーが遙に似合いそうだったので買おうとしたら、「趣味じゃない」とバッサリ断られた。
手をつなごうとしたら、遙は肩にかけていたバッグを凛のいるほうにかけ直し、凛の側にある手をそのバッグへとやってしまった。
話しかけても無反応というほどではないが、その反応は極めて薄い。
やがて凛も話しかけなくなった。
ツンツン尖った空気が遙から漂ってきているのを感じ取ったからだ。
オレ、なんかしたか?
考える。
今日会ったばかりのときは、遙はいつもと変わらなかった。
もちろん明るい笑顔を向けてくれたわけではないが、今と比べれば、やわらかい雰囲気だったと思う。
いつから遙の様子が変わったのか。
それを石段をのぼりながら思い出す。
昼は凛が肉料理を遙が魚料理を食べられる店にしたので、特に問題はなかった。
それからスポーツショップに行き、遙の天然すぎる行動に凛は世話をやき、そうだ、世話をやく相手ということで連想して「江みたいだな」と自分の妹の名前を出した。
直後、遙の無表情が硬くなった気がする。
あれ以降、遙のまわりの雰囲気が変わったのではないだろうか。
でも、あれのなにが悪かったのだろう。
上から目線で、えらそうに感じたのだろうか。
話してくれなければわからない。
聞くか。
だが、正直、今、凛は遙の態度にムカついてもいる。
ムカつきながら、それでも、やっぱり家まで送りたい。
下手につついて状況がさらに悪化して、遙から帰れと言われたくない。
だから、凛は厳しい表情になってしまってはいるが、黙って石段をのぼっていた。
しばらくして左折した。
少し進むと、もうそこに遙の家の玄関がある。
「……じゃあな」
凛は低い声でボソッと言った。
それから踵を返そうとした。
だが。
「凛」
名前を呼ばれて、凛は遙のほうを見た。
その直後、なにかが正面からぶつかってきた。
「!」
ぶつかってきたのは、遙である。
しかも、ぶつかってきたというよりも、抱きついてきたのである。
えええええええええっ!?
なんだこの状況は!?
凛は驚き、戸惑う。
「ハ、ハル……?」
「俺は」
遙は凛に顔を見せずに言う。
「おまえの妹じゃない」
その言葉の意味を考える。
妹じゃない。ああ、たしかに妹ではない。
じゃあ、なにか。
彼女、だ。
遙は自分は妹ではなく彼女だと言っているのだ。
凛は胸の中で絶叫する。
いつもの遙からは考えられない言動である。
その破壊力はすさまじい。
めちゃくちゃ驚いた。
そして。
めちゃくちゃ、可愛い。
めちゃくちゃ、嬉しい。

「オレは、おまえを一生大切にするからな……!」
どうやら感情がかなり高ぶっているらしい凛がプロポーズのような台詞を口走った。
たった二ヶ月しかいなかった小学校の卒業式で、凛は号泣した。あのころと今では凛の雰囲気はすっかり変わってしまっている。それでも根っこのところでは変わっていないのを遙は感じる。
付き合い始めたきっかけは凛からの告白だ。
凛は知らないのだろう。
遙がどれだけ凛のことを好きなのか、を。
口では言ってやらない。
遙は凛の背中にまわした腕の力を強め、たくましい身体を抱きしめた。

しばらくして、遙が顔をあげた。
その表情はもう硬くない。
その顔のほうに凛は顔を寄せる。
キスをする。









作品名:はるちゃんの彼氏 作家名:hujio