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【APH】ライナスの毛布

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明日は三月に一回、ロシアの一部になってしまった実家に戻る日だ。もう既に名義は自分のものではないが、紛れもなく自身を形成する身体の一部だ。三月に一回、来訪し、滞在すること。それがロシアが出したプロイセンがドイツの元へ戻る唯一の条件だ。自分のものではなくなった実家の様子も気になったし、自分の自分たる由縁はやはりかの地だ。昔の美しい町並みは戦争によって破壊され、見る影もなく変わり、冷戦崩壊後は経済の破綻の煽りを受け、治安は悪化し死に体だった街も今は景気も治安も回復しつつある。かつて、自分が王を迎えた城は跡形もなく、城があった場所には味気のない建物が立っているが、自分が祈りを捧げた大聖堂は再建され、当時を偲ぶことが出来た。二度とその地を踏むことが出来ないと思っていたからこそ、出されたその条件をプロイセンは喜んで飲んだ。だがそれを良しとドイツは思ってはいない。
「嫌だ」
即座に返ってきた言葉に、プロイセンはどうしたもんかと眉を寄せる。…この弟は兄離れしているようで、出来ていない。それを困ったとも思うし、嬉しくも思う。
「嫌だって言われてもな」
「兄さんの家はここだろう。何故、今更、ロシアのところに行く必要があるんだ」
「そうだけど。あそこはもと俺ん家だもん」
「………」
「気になるだろ。一応、俺の身体の一部だし」
「…解っている。だが、嫌なものは嫌だ」
ぎゅうっと腰に回った腕の力が強くなり、それにプロイセンは溜息を吐く。
「何が嫌なんだよ?」
プロイセンの溜息にドイツは肩に額をぐりぐりと押し当てた。
「…兄さんが帰って…来ないんじゃないかと思うから、嫌だ…だから、行くな」
未だにあのことを引きずっているのか。…馬鹿だな。
「帰る場所はお前のところしかない。あそこはもう他人の家みたいなもんだし。でも、そうだと割り切るにはあそこは思い出が有りすぎる」
首筋を擽る蜂蜜色をした金髪に頬を摺り寄せる。くしゃくしゃとその髪をプロイセンは撫でる。
「いつだって、俺はちゃんとお前のところに帰って来てるだろ?」
「…だが、」
「あんまり駄々捏ねるなよ。ホットケーキ、作らせるぞ」
「…何だ?…それは…」
呆れたように顔を上げたドイツにプロイセンは口を尖らせた。
「ムキムキに抱きつかれて腹減ったぜ。ホットケーキ焼け。三段重ねでバターとメイプルシロップをたっぷりだ。…あ、アイスも忘れんなよ?」
作品名:【APH】ライナスの毛布 作家名:冬故