囚われの君
生きていくのにどうしようもなく疲れたら、ヒューゴはきっと解き放ってくれるだろう。傷ついても曇りはない綺麗な緑柱石の瞳から、純粋な涙を零しながら、それでも懸命に笑みを浮かべて、こうして自分を殺してくれるに違いない。
「今度こそ、絶対に守ってよ?」
「それを言われると耳が痛いな」
「クリスさんはすぐに約束破るから」
「……すまない」
真なる炎の紋章を宿したヒューゴの生は、きっと長く長く続く。自分の命はもうヒューゴに預けたも同然だから、どのような形であれ、これから先も傍にあり続けることは間違いないし、いずれは自分が先に倒れることになるのだろう。ヒューゴに比べてただの人間であるクリスの命は限りあるもので、置いていくことはあっても置いていかれる心配はないし、もし彼の手にかかることがあれば、幾星霜の時を経たとしても彼の中で自分は残り続ける。
約束を果たす日が来なければいいと思いつつ、けれどもそのときがいつか来ることを、クリスはひそやかに願った。
同じ呪いに侵されることなど、夢にも見ずに。