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祭りの前

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1.

「ハロウィン? ――知ってるよ、金持ちから何でもかっぱらっていい日だろ?」
 ゾラの前で、クロウの養い子はこんな台詞を平然と言ってのけたのだった。

 ダークシグナーとの戦いの後、シティとサテライトは十七年の時を経て統合を果たした。
 ポッポタイムに遊星とクロウとジャックが住み出してから二か月ほどのこと。家主のゾラがハロウィンの話を持ちかけて来たのだ。曰く、噴水広場界隈でイベントを行うので、元サテライトの子どもたちも一緒に参加してはどうか、と。
 遊星はもちろん、快く申し出を受け入れた。統合されたとは言っても、サテライトはまだまだ物騒。夜中に街中を出歩くハロウィンなんかもっての外である。彼は早速養い親のマーサに話を通し、彼女が世話をしている子どもたちがポッポタイムを訪れた。その中に、クロウの養い子もいたのだ。
 ……クロウと遊星がいるガレージの片隅。そこにはハロウィンイベント用の用具が山積みになって置かれている。衣装の材料、電飾のコードや電球、その他諸々。
 ガレージに、甲高い金属音が断続的に響く。
 遊星は現在、橙色の鉄板をハンマーで筒状に打ち出しているところだ。クロウは黒いボア生地をちくちく縫いながら、彼をちらりと見た。

 あの日。あの台詞が子どもの口から飛び出した時点で、クロウは「終わった」と思ったのだった。
 セキュリティからの戦利品をお土産と称して度々持ち帰った自分も自分だが。ここはシティなんだ、お前たちには少しでいいから空気を読んで欲しかった。せっかくのイベント話が早速お流れじゃないか、と。
 シティ出身の人々は、サテライト出身の者を環境に恵まれない人間と見る傾向がある。仲間の龍亞と龍可でさえ、実際に子どもたちを目にするまでは、サテライトを怖い場所だと認識していたのだ。十七年の間に培われた偏見は容易には拭い去れない。シティ側が慈善事業のつもりで元サテライト側に接し、元サテライト側がそれに自分たちの流儀で返すなら、遅かれ早かれ双方の関係は破綻するだろう。
 顔を引きつらせるゾラの前で、遊星はそれに何と返したのだったか。
「今年のハロウィンからは、少しルールを難しくしようと思っている。誰かから獲って行くだけでなく、誰かにあげられるようなハロウィンに。この先、考え方が違う人たちとやって行くんだ、こっちもレベルアップしないとな」

 できれば否定はしたくない、と遊星は言う。劣悪な環境のサテライトで今日まで生き抜いて来た、子どもたちの道のりを。そうしなければ生きて来られなかったし、第一自分にはそれを否定する権利や資格はないのだと。
 クロウの脳裏に、ルドガー戦での遊星の悲痛な叫びが蘇る。「親父の研究がなければ」。もしもクロウとジャックのどちらかが近くにいたならば、生涯彼の心の内に封印され続けていたはずの言葉が。
 シティとサテライトの統合は、遊星の長年の悲願でもあった。
「遊星」
「? どうしたクロウ」
「今年のハロウィン、絶対成功させような」
 遊星は目をぱちくりさせて、それから、ああ、と力強くうなずいた。

作品名:祭りの前 作家名:うるら