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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 13

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第46章 復讐の刃、怒りの刃


 長い時を経て、ついにジュピター灯台へ足を踏み入れた者が現れた。
 朝日射す中でロビン達は目の前に立ちはだかるジュピター灯台を見上げていた。ここまでとても長い道のりであった。ヴィーナス灯台での激戦の後、彼らは敵対していたサテュロスとメナーディを倒した。
 その二人の死によって、錬金術の復活の野望は絶たれたように思われた。しかし、実際はこれで終わりではなかったのだ。
 ロビンとジェラルドの旧友、ガルシアが彼らの計画を継ぐつもりだと言い出したのだった。全てが終わり、ガルシアとはもう敵対する必要はなくなった、そう思っていたロビンには衝撃的事実であった。
 しかし、その野望は大地の異変によってすぐに打ち砕かれた。同時にロビンの心までも打ち砕かれる。旧友の死を目の当たりにしたことで。
 それからロビン達はトレビの支配者バビの依頼によりレムリアを探す旅に出た。その旅の中で彼らはある人物との邂逅を果たす。
 アレクスである。錬金術復活に加担する、いわばロビン達の敵に当たる人物であった。
 一触即発の状況下で、アレクスより語られた言葉によって、ロビン達の使命が復活する。
 ガルシアもシバも、そしてシンも生きており、灯台の解放を目的とし旅を続けている、と。
 すぐさまガルシア達を止めるべく、ロビン達は急ぎアテカ大陸へと舵を取った。
 ガラパス島から西へと長い長い航路を行き、実に数週間にも及ぶ航海となった。
 そして今、彼らはジュピター灯台へと到達した。まだ入り口は開いていない、どうやら今回はガルシア達よりも早く到着する事ができたようだ。
 灯台の入り口は虹色の壁に阻まれ、中に入れないようになっていた。風のエナジストの力なしでは。
「ついに灯台に着いた。でもここで張っていてもガルシア達が来るとは思えない。頂上の火口まで先回りしよう」
 ロビンが提案した。彼の言うとおり、この場で見張りを行ったとしても、ガルシア達がわざわざ姿を見せるはずがなかった。別の進入口があったとしたらそこを使われる可能性もある。ならば尚更火口を守った方が確実であった。
「げほ、ごほ…ごほ…」
 いざ突入しようというところで、一同の間に咳き込む声がする。
「ごほ、ごほ…」
 咳き込んでいたのはリョウカであった。口に手を当て、目を固く瞑りながらいかにも苦しそうに肩を揺らしていた。
「リョウカ、大丈夫ですか?」
 メアリィが訊ねた。
「げほ…、心配するな。ただちょっと喉がおかしいだけだ…」
 リョウカは言うが、若干顔が赤い。熱があるようだった。
「おいおい、風邪なら休んでた方が」
 ジェラルドが彼女の身を案じて言う。
「平気だ、こんなものは風邪の内に入らん」
「けどよ…」
「気にするなと言っている。大丈夫だ」
 実はここ数日リョウカの体調は優れない、微熱がもう何日も続いていたのだった。咳をする度激しい胸痛もあった。それでも皆に心配はかけまいとずっと黙っていた。
「ロビン、私なら大丈夫だ。さあ、早く灯台に入ろう」
 リョウカは言う。
「あ、ああ、分かった。イワン、このバリアを解けるか?」
 ロビンもリョウカの体が心配であったが、それ以上は追求せず、イワンに訊ねた。
「試してみます…」
 イワンは虹色のバリアが張ってある入り口に近づき、それに触れた。イワンの手が触れた瞬間、水面に波紋が広がるように、バリアが波に揺れた。
 イワンが念じ、エナジーを伝えるとバリアはひび割れ、砕け散っていった。
「これで大丈夫です」
 イワンは振り返って言った。
「よし、行くか」
 ロビンの言葉と共に、一行はジュピター灯台へと足を踏み入れた。
「ごほ…!」
 再びリョウカから咳が洩れる。口に当てた手を離し、掌を見ると、赤い点が幾つか付いていた。
 リョウカは目を見張った。
「おい、どうしたリョウカ。やっぱり休んでるか?」
 ジェラルドが灯台の入り口から声掛けた。
「いや、すまない。今行く…」
 リョウカは手を服で拭って、一行について行った。
     ※※※
 刃が火花を散らし、すれ違った。
 短刀を片手に、シンが対峙するのはあの赤毛の少女である。
 リョウカはまっすぐこちらを向き、敵意を露わにしていた。シンも迎え撃つべく、一本の短刀をリョウカへと向ける。
 再びリョウカは仕掛けてくる、シンはそれに対応すべく刃を振るう。
 次の瞬間リョウカの姿が残像と化した。殺気がシンの背後から感じられた。
 襲いかかるは転影刃である。シンはすぐに見抜き、体を翻した。再び刃と刃がぶつかり合い、火花を散らした。
 二人は一度距離を置き、間合いを取る。リョウカは構えると間合いの外にもかかわらず素早く抜刀した。それと同時に真空の刃がシンを襲う。
 シンはそれを弾いた。すると、突如として背後からも気配を感じた。
 気の錯乱か、とシンは後方に視線を向けた。しかしそこに在ったのは幻影などではない、しっかりと形をもったものだった。
 シンは驚愕した。背後にいたのは昨晩森で見かけたあの白頭巾の剣士であった。彼はその白頭巾をその身のこなし、剣技からリョウカであると思っていたのだ。
 しかし、今まさに対峙しているのはリョウカ本人である。これではリョウカが二人存在することになってしまう。
「がはっ!」
 突然、これまで戦っていたリョウカが血を吐き膝を付いた。
「リョウカ!」
 シンは慌てて駆け寄ろうとする。その間にあの白頭巾が一瞬にして入り込み、リョウカの前に立ちはだかった。
 そしてリョウカを抱き、宙を舞い始めた。
「待て!」
 シンの制止は通じない。彼女らはどんどん上に昇っていく。
「リョウカ!リョウカ!」
 シンの叫びは真っ白な空に、虚しく響くだけだった。
     ※※※
「リョウカ!」
 シンは目を覚まし、叫びと共に起き上がった。
 夢を見ていたらしい。そこは昨晩から野宿していた森であり、日はすっかり登りきっていた。
「びっくりした…、気が付いたのね、シン」
 そばにいたのは彼の叫びに驚き目を見開くジャスミンであった。
「ジャスミン…?」
「あなた、ずっと眠っていたのよ。兄さんから聞いたわ、何でも魔物にやられそうになってたとか…」
 最後にシンの記憶に残っているのは昨晩の戦いである。ワーウルフを倒し、スレイヤーを一体倒した後の記憶は朧気であった。毒にやられ、全身が麻痺してしまったせいだった。
 しかし、なぜか最後に完全に記憶がなくなる前、夢にも出てきたリョウカと出会っていたような、そんな気がしてならなかった。
「シン、何度もうわごと言っていたわよ。リョウカ、リョウカって。妹さんの夢見てたの?」
「ああ…、ヴィーナス灯台の時みたいにあいつと戦う夢をな…」
 さらに気になる事がもう一つあった。
 昨晩魔物の群を一瞬にして蹴散らしていったあの白頭巾は、間違い無くリョウカのはずであった。あの太刀筋、体捌き、どれもかなりの水準まで上がっていたが、彼女の技そのものだった。
 しかし、夢に出てきたリョウカは白頭巾など被ってはおらず、リョウカとは別にあの白頭巾が現れた。そしてその人物の登場と同時に、リョウカは倒れ、白頭巾と共に消えていった。