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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 13

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第49章 三つの意志、一つに


 戦いが終結し、アレクス達が去った後シンが下へおりると、回復し、意識を取り戻したロビンとガルシアがにらみ合っていた。
 当然の事だった。彼らは今日までずっと敵同士であったのだ。灯台を解放しようというガルシアに対し、ロビンはそれを阻止しようとしてきたのである。今度も彼はガルシアを止めに来たのだった。死んだと思われていたガルシアが生き延び、再び灯台を灯さんとしているという知らせを聞かされ。
 言い争いをしている様ではなかった。ただ静かにお互い向き合っているだけだった。
 そこへ放たれた言葉はただ一つ。
――何故、灯台をともすんだ…
 その場はいつ戦いになってもおかしくないほど張り詰めていた。終始無言を貫くガルシア、側にいた妹のジャスミンはこのような雰囲気に耐えかねて何とかこの場を穏やかなものにしようとする。
 しかし、大人しくしていろ、とガルシアに一蹴され、ジャスミンは萎縮してしまった。
 シンもまた離れた所から見守っているだけだった。
 更なる沈黙の後、ガルシアはついに口を開いた。
――理由は必ず話そう、だが、今は…
 今は待て、そう告げるのだった。
 共に負傷した身である。今はそう積もる話ができる状態ではなかった。しかも事と次第によっては戦いにも繋がりかねない事態でもあった。
 ロビンもそれを察し、ここは追求するのを止めた。そしてある提案を残して退却を始めた。
 ギアナ村に戻って、それからじっくりと話し合おう。そんな提案だった。
 ガルシアは了承した。最早潮時か、彼もそう思ったのだろう。
 去り際にロビンは一言残していった。
――逃げるなよ、ガルシア
 ただの一言がガルシアにはかなり重く響いた。運命からは逃れられない、そう実感させられた。
 先に退いていったロビンを追って、ガルシアもすぐに灯台を下りた。袂を分かち、二人別の目的のため旅してきた旧友との戦いの可能性も胸に秘め、ガルシアは仲間達とともにギアナ村を目指した。
 村にたどり着くと、もう夜も更けていた。そんな中偶然外を出歩いていた村人にロビンとその一行が村に来なかったか訊ねた。
 ガルシアはどこか心の中でロビンが何らかの事情でまだ到着していない事を期待していた。少しでも彼らと会う時を遅らせたい、そんな気持ちから生じた期待であった。
 しかし、村人は告げた。
 暮れ方に金髪の戦士と数人の者達が村にやってきて、北に離れた家屋に向かって行った、と。
 ガルシアの期待は見事に打ち砕かれた。
 それから、ガルシアは覚悟を決めて、村人の言っていた場所へ向かった。
 村の北に位置する所に、確かに他の家とは離れた場所に一軒だけ立つ家屋があった。これだけで十分に確信に値するものだったが、さらに決定づける者が、その扉の前に立っていた。
 ガルシアは目を見張った。底冷えする夜更けに暮れ方から立っていたのか、その者は冷たい風にその黄金色の髪を揺らし、旧友の訪れを待っていた。
 その金髪の少年はすぐにガルシアに気付いた。そして微笑を浮かべる。
「約束、守ってくれたんだ。来てくれて嬉しいよ、ガルシア」
 ロビンは言った。
           ※※※
 ジュピター灯台の頂上で、アレクス達が消え、シンとシエルは二人取り残されていた。
 ふと、シエルがシンを呼んだ。
 彼女の口から発せられた言葉、それはアレクスがもう人外のものになっている可能性があるという事だった。
「アレクスは恐らく邪法を使い、人はおろか、エナジストでさえも有り得ない力を手にしています…」
「なんだと!?」
 かつて悪魔と死闘を繰り広げた神であるシエルの目には狂いはなかった。アレクスの空中浮遊、空間移動といった能力は水と風の力を合体させることで成し得る技だった。
 エナジストは自らが属するエレメンタル以外のエナジーは絶対に使えないのだ。水のエナジストであるアレクスが風の力を使えるのは何かよからぬ方法でその力を得た、そう考えるより他はなかった。
 では彼はいかなる邪法を使ったのか、そこまでは見通すことはできなかったが、もうアレクスには後に退く手段はない、そう判断できるほど邪悪な力をシエルは感じ取ったのだった。
「彼は、やもすれば私が戦った悪魔よりも厄介な存在になるかもしれません」
 それは全ての灯台が灯り、錬金術が復活した時をさしていた。
「なら、ロビン達の言うように灯台は灯しちゃいけないって言うのか?」
 いいえ、とシエルは首を振る。
「三つの灯台が灯ってしまった以上、世界はかなりバランスを崩しています。このままにしておけば、ウェイアードが消えてしまう事になるでしょう」
 シンは驚いた。
「それだけではありません。もしもかの悪魔が蘇った時、唯一の抑止力となるのが錬金術です。錬金術がなくては悪魔を倒すことはできません…」
 灯せばアレクスに力を与えてしまうことになる。かといって灯さずにいればウェイアードが崩壊する事態に陥る。そして錬金術はシエルが差し違えた悪魔を倒す力にもなる。
 どの道を選んだとしても灯台の解放にはリスクが伴っていた。しかし、そのまま手をこまねいていては確実に世界は悪い方向へしか進まない。
 やはり灯台は灯されるべきものであった。
「悪魔の封印は間もなく解けてしまいます。もしかすれば、悪魔の力に対抗できる不確定要素があるかもしれません。ですが、確実に抑止できるのはやはり錬金術です」
「不確定要素…」
 それは自分達の中の誰かなのか、それとも全く知らない者による力なのか。シンは考えた。
「シン、あなたにいくつかお願いしなければならないことがあります…」
 シエルは改まって言う。
「どうしたんだ、今さらまたそんなに改まって?」
「灯台は、必ず灯してください」
「そんなの今さら言われなくたって…」
「それから灯した後に錬金術が復活したら、絶対にアレクスに渡してはなりません。彼に渡れば必ず世界は破滅します」
 邪法を使ってまで悪しき力を手にしたアレクスである。世界を征服できるほどの力を彼が手にすれば間違いなく悪なる事に使うことは目に見えていた。
「そして、これが最後のお願いです。先にもお願いしたとおり、リョウカを護ってください。私が神として復活することができればより悪魔に対抗できる力になれるはずです」
「当たり前だ、リョウカもお前も絶対オレが護る。命に変えてもお前たちを消させはしない!」
 シンは意気込みを見せた。
「本当に、ありがたいことです…」
 シエルが微笑むと、彼女の姿が半透明化し始めた。
「っ!?おい!」
 まさか消えてしまうのか、シンはかなり驚いた。
「心配しないで、私が顕現できる時間が過ぎてしまっただけですから」
 シエルは安心させようと微笑み続けた。
 シエルがこうして外界に顕現できるようになったのはごく最近の事である。それほどまでに自らの力を回復したのであるが、それでもこうして姿を表せるのは新月の晩とその前夜だけであった。
「シン、どうか彼女のそばにいてあげて。そして、絶対にアレクスに力を与えないで」
「ああ、約束する!」
 シエルの微笑みは淡く輝きながら、次第に消えていくのだった。
     ※※※