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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 13

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 ハモは笑顔で答える。
「船を飛ばすだって!?そりゃいくらなんでも無理なんじゃねえか?」
 ジェラルドには船が空を進む風景が想像できなかった。
「ええ、このままでは飛べませんよ」
 ハモは笑顔のままである。ジェラルドはガクッと肩を落とした。
「なんだよ、やっぱり飛べねえんじゃん!」
「早とちりですよ、ジェラルド。私はこのままでは飛べないと言ったのです。最後にやることがあるのですよ…」
 ハモはシバの方を向いた。
「シバ、あなた方がヘスペリアで手に入れた翡翠の宝石、ちゃんと持っていますね?」
「ええ、ここに…」
 シバは首から下げていたグラビティの翡翠をハモに見せた。
「その石に宿る力を使い、船を飛ばす動力とします。船の舵の中心にそのための装置を取り付けておきました。そこに石をはめれば後は皆の力を使って、船は空を進みましょう」
 ハモはシバを連れ、翼のついた船の甲板へ進んだ。確かに、舵の中心にはちょうど翡翠がはまりそうな穴がある。昨晩、ハモが最後の調整と一晩で造り上げた装置だった。
「ここにこの翡翠をセットすればいいのね…」
「そうです。その翡翠にはイエグロスが持っていた力そのものが込められています」
 ヘスペリアのシャーマン族のナバホと戦ったと言われるイエグロスは、ギアナ族の父親とアネモス族の母親の間に生まれた男であった。
 不思議な力を持つアネモス族の血を引いているだけあって、彼も母親譲りの能力を持っていた。しかし、純粋なるアネモス族ではない彼には力のコントロールが難しかった。
 そこで、イエグロスはエナジーストーンの成分も含んだ翡翠へと自分の持つ力を封じ込め、石を介する事により、力を発揮するようにしていたのだった。
「エナジーを戦いにおいて使う事をよしとしなかった彼は、次第にその石を使わなくなりました」
 そうして使われなくなりだした翡翠は重力を半分以下にし、ものを浮かせる能力をもつため、グラビティの翡翠と名付けられ、ギアナ族の宝として保管されていた。
 そしてシャーマン族のナバホとの戦いにおいて、互いの宝は交換されたのだった。
「男のプライドってやつかしら?全く、分からないわね」
 シバは溜め息混じりである。
「ただ単にエナジーが得意ではなかったのかもしれませんよ。さあ、シバ、グラビティの翡翠をセットして」
 シバは頷き、首からグラビティの翡翠を取り外し、舵の真ん中にはめ込んだ。
 その瞬間、翡翠が淡い光を放ちだした。石に込められた力が舵を通して船全体に流れていく。
「すごい力、これならこんな大きな船も飛ばしてしまいそうね…」
「準備は整いました。後は皆で力を合わせれば船は空を飛びます」
 ハモは船を降り、ロビン達に船に乗り込むよう、促した。
「あ、ちょっと待ってください」
 ロビン達が船に乗り込もうとしていた所でハモが何か思い出し、呼び止めた。
「どうかしましたか?」
 ロビンが訊ねた。
「忘れるところでした、これを皆さんにお渡しします」
 ハモはエナジーを使い、空間から何かを出現させた。ハモの手に現れたのは両手で抱えるほどの大きさの黄金色に輝く四角い物体だった。
「これは?」
 ロビンは受け取り、言った。その物体は思ったよりも重量があった。気を抜けば落としてしまいそうである。
「オリハルコンという貴金属です。私が予見した所、大イースト海沿岸部にチャンパという村がありまして、そこにはかなり腕の立つ鍛冶職人がいます。そこにその金属を持って行けば強い武器を打ってもらえるのではないでしょうか」
 オリハルコンは伝説の金属とも呼ばれていた。伝説というだけあってそれはめったに手に入らない希少価値の高いものだった。そのため、鍛治の素材には十分であるように思われた。
 チャンパの名に聞き覚えのある者がいた。
「チャンパといえばあの海賊パヤヤーム、奴には貸しがあったな、いっぺん殴りに行ってやるか!」
 シンである。彼はかつて海賊をしていたパヤヤームに小馬鹿にされ、恩を仇で返されていた。
「乱暴はいけませんよ、シン。時間は限られていますが、レムリアへ向かう前に立ち寄ってみてはいかがですか?」
「そうですね、これから先もカーストやアガティオと戦うことになるかもしれない、強い武器が手に入るなら行ってみるのもいいかもしれない」
 ロビンはチャンパへ行く意志を示した。他の仲間にもそこへ行ってもいいか訊ねると、彼らは寄り道を許してくれた。
「よし!待ってろよ、パヤヤーム!」
 シンだけは全く違う目的を持っていた。
「空を行けば海を進むよりもだいぶ早く目的の場所へ到達できるはずです。皆さんの旅の無事をお祈りしていますよ」
「はい、ハモ様もお元気で」
 ロビン達は船に乗り込み、舵の前に集結した。そして淡い光を放つグラビティの翡翠がはめ込まれた舵へ皆声を合わせてエナジーを詠唱する。
『グラビティ!』
 エナジーは船全体を流れ、船体の翼を動かした。するとゆっくりと船体は空中へ浮上し始めた。
「と、飛んだぞ!」
「言い伝えは本当だったんだ!」
 地上にいるギアナの民は歓喜に沸いていた。
「まさか本当に船が飛ぶとはな…」
 ガルシアは静かながら驚きを見せていた。
「本当、夢みたいだな!」
 シンは笑みを見せた。
 ふと、ロビン達の心にエナジーが流れ込んできた。ハモの声が聞こえた。
『どうにか無事に飛ぶことができましたね。後は皆さんの気持ちが船を行きたい所へ動かします。どうか、世界を、ウェイアードを頼みましたよ』
 ロビン達は船縁から地上を見下ろした。歓喜に沸く群集の中一人船をまっすぐに見つめるハモが見えた。最早声は届かぬだろう、そう思い彼らは手を振った。ハモも微笑んで手を振り返した。
 志一つに集った戦士達を乗せた翼の付いた船はその翼を鳥のように羽ばたかせながら、歓喜の声響く地上を後に、大空を進んでいった。