La Campanella
電話がかかってきて久しぶりに話をした。
ごく最近に姿を見たし声も聴いたが、それはテレビの中のことだった。あのとき閣僚として威厳に満ちた様子で演説する彼の姿を冷たい画面越しに眺め、そういえばあれから一年経ったんだなと思った。
倒幕軍が江戸城に攻め込み、開城させたあの日。
あの日はまだ一緒にいて、ともに戦っていた。
だがそれ以降は、自分は万事屋にもどり、彼は政府入りした。
そして、要人となった彼はもちろん隠れ家を引き払って官庁に近い邸宅へと越し、簡単に逢うことなどできなくなってしまった。
こちらから連絡することはなく、向こうからも音沙汰はなく。
そんな日々があたりまえのように過ぎていったので、電話をかけてきたのが彼だと知ったときには驚いた。
用件は墓参りに行かないかということだった。
誰の墓のことなのかは聞かなくてもわかった。彼が告げた日は松陽の命日だったから。
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作品名:La Campanella 作家名:hujio