yamatoⅢ 太陽制御の後で 1
「長官、この任務の後、ヤマトはどうなるのでしょうか?」
進が通信室で長官と一対一で話していた。
<うむ…古代、私もどうしようかしばらく考えていた…今回は二つの星間戦争に
巻き込まれ…ボラーの中心人物が戦死したとはいえ今後地球に再び来ない、
という保証はない。ヤマトの改造は全て終わっている。真田くんと相談して
メンテで済むようであればしばらく地球の坊ヶ崎の秘密ドッグで休ませよう
と思っている。>(藤堂)
「ではヤマトは地球上に…」
進は緊張していた顔を緩めた
<ははは、古代はわかりやすいな…安心したまえ。暗黒星団帝国が攻めて
来た時のことを思うとやはりヤマトは地球にないと困る、という事が
判明した。>
藤堂の言葉に進はうなずいた。
「あの時は…誰もが必死でしたから…」
ユキと離れ離れになりお互いの生死を確認する術もなく信じる事だけで戦った…
<古代も、ユキも…クルー全てが強くなった…ヤマトに乗りこんだクルーは
その後も誰もが先頭で指揮を執り働いてくれている。ヤマトは人を強くする。
だから沖田も…最期まで頑張れたんだ。>
進もユキを連れて艦長室へ向かった時の事を思いだした。
(ユキの意識が戻って報告に行こうとしたら佐渡先生が泣きながら一升瓶を
抱えていて…艦長室に行ったら艦長はベッドの上で…)
「そうですね…北野や坂本は元気ですか?」(進)
<あぁ、元気だよ。二人とも偶然金星にいて…どうしようもできず傍観して
いた、と言っていたがあの時無理に地球へ来ていたら今あの二人は生きて
いないだろう。正しい判断だったと私は思っている。>(藤堂)
「私もそう思います。だけど血の気の多い坂本が…北野が止めたんですか?」(進)
<いや…二人の判断らしい。運よく彼らに同行していたのが伊藤だったのだ。
伊藤は相原と万一の時の通信回路を持っていて…伊藤がそれにつないだら
偶然地下都市にある防衛軍とヤマトとの通信を傍受したそうだ。あれは
普通の通信士では探せない電波を使ったんだが…まぁそれのおかげで地球に
戻らず様子を見ようという事になったそうだ。ボラーとの戦いの時は
輸送船だったから戦いに参加するのは足手まといになると思って出られ
なかったそうだ。>(藤堂)
「輸送船じゃただ的になってしまうだけですね…しかし坂本も冷静な判断が
出来るようになっていたんですね…北野と一緒だったのか。それも運命
かもしれませんね。」
進は伊藤が傍受した通信があっても坂本だけだとヤマトを追ってきてしまったかもしれない、と思った。同期ならそれを止める力がある…自分と島の事を思った。
<ヤマトは地上の放射能除去作業が終わったら一度月面基地に戻り乗組員を
乗せて地球へ戻ってくれ。その後1か月の休暇を与える。>
藤堂はにこやかな顔になった。
<古代、辛かっただろう。その若さで艦長職を与える事に私は反対だったが
他に適任がいなかった…と言うより誰もヤマトの艦長をやりたくないのだよ
キミ達はすでに出来上がった組織だ。そこへ入れる上官がいないのだよ。
ユキにも申し訳ない、と伝えておいてほしい。>
藤堂は責任感の強いふたりがどうなるのか…想像できた。
「…伝えます。ところで長官、今後のユキは…」
進は晶子が秘書をしていたのでユキがどうなるのか知りたかった。
<ユキは今まで通り、私の秘書だ。晶子はまだ早すぎる…少し休ませて
訓練後軍へ入れる事にする。最初の任務がここじゃ…晶子も辛かっただろう
相原がいたから耐えらえたんだろうと思うが…軍はそんなに甘い所じゃ
ない、という事を知らないといけない。>(藤堂)
「では晶子さんは…?」(進)
<正式に、と言うわけではないが半年ぐらいヨコスカ基地に出向させて
勉強させようと思っている。晶子もこのままじゃ勤まらないと言うのを
感じてるようでな…せっかく相原が戻って来るのに、と思われそうだが
孫娘、だからとひいきする事、出来ないのでね…>
藤堂が一瞬“祖父”の顔になった。だがすぐに表情を引き締めて
<まぁ、あと一週間、頼む。>
藤堂が敬礼したので進も敬礼で返し通信は切れた
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 1 作家名:kei