yamatoⅢ 太陽制御の後で 1
「南部くん、ったら相原君をいじめちゃダメよ。」
クスクス笑いながらユキが言った。
「いいんです、幸せなんですから。俺だってユキさんが幸せだから古代を
いじるんですよ。不幸なヤツをいじってたら本当のイジメになっちゃい
ますからね。」
南部が嬉しそうに話す。
「まぁ…今回の航海は妙な距離があって…どうなる事やら、って思いましたが
デスラーが出てきた辺りから随分変わりましたね。」(南部)
「古代くんが?」(ユキ)
「そう。ユキさんに対してすごく自然だった。」(南部)
「そうかもしれないわね。やっぱり一度一緒に戦ったからなのか同士、って
感じがあるのかもしれないわね。」(ユキ)
「それもあるかもしれませんがデスラーがユキさんを見る時、俺たちと違う
視線で見るんですよ。」(南部)
「デスラーが?」
ユキが笑いながら言った。
「多分、スターシアさんに似てる、と言うのもあると思うんですが…好きだった
人の面影を残すユキさんの事をデスラーも特別な人と思っているのでは
ないでしょうか。」(南部)
「…そうね、スターシアさんと面識があるという事は妹のサーシァさんとも
面識があったかもしれないものね…スターシアさんが見間違えるぐらい
だもの…私とサーシァと…懐かしい想いが心をよぎるのかもしれないわね…
デスラーにとってそれが辛い事じゃなければいいんだけど…。」(ユキ)
「デスラーは嬉しそうでした。古代とユキさんに会えて…二人に会えれば
デスラーは満足しますよ。」(南部)
「そんな事ないわ。たくさん話したわ…デスラーはなぜヤマトが強いのか…
それを聞きたがっていたわ。デスラーには腹心の部下が少ない…ヤマトは
上司と部下、と言うより古代くんを中心に誰もが持ち場を守る事を優先
してる。だから強いんだと思うわ、って言ったの。で、メインクルーの
事、じっくりお話してきたの。通信でよく見る顔だからすぐに覚えて
くれたわ。古代くんもクルーを紹介する時“ここにいるメンバーが一人でも
欠けていたらイスカンダルに行けなかっただろう、って言ってたわ。
私達…何度も苦しい戦いを潜り抜けてきたけど…それだけじゃない…
白色彗星が現れた時…誰もが自分の身を顧みず戦ったわ。死線を越えた
戦い…もう、ない事を祈るけど…ヤマトとこのメンバーがいれば誰にも
負けない気がする…古代くんも最後そう言ってた。私は前の航海で乗り損
なって地球に残った…辛い戦いだったけど一緒に戦えた、って思ってる。
今まで一緒に戦って結果を出してきたのと同じように別の場所で戦って
いたけどよく考えたら一緒に戦っていたのよね。その後ヤマトが戻って来た
後も…一緒に戦ってくれた…私は幸せ者だわ。」
ユキは南部の顔を見た
「南部くんにはいつも助けられてばかり…本当にありがとう。最初に結婚する
って決めた時も一緒に式場巡りしてくれたりいろいろアドバイスしてくれて
助かったわ。ドレスも教えてもらったところで作ったけど…結局タンスの
肥やしになっちゃった。」
ユキは赤い舌を少し出した。
「あれね、古代くん見てないの。ほら、ずっと飛んでたでしょう?なんだか
くやしいから本番までお預けにしてたんだけど…ヘタしたら一度も見ない
まま…だったかもしれない、って…」
南部はユキが結婚式を諦めていない事を知った。今までこんな話したことなかった。
「じゃぁ余計、下に行ったらダメですよ。放射能が強いからこれから子供を
産もうとしてる女性にはよくないですからね。」(南部)
「やだ…南部くん、ったら…」
ユキはほほを押さえて南部を軽くぶつような仕草をしたが
「だけど本当よね…宇宙放射線病になると女性も男性もリスクが高くなる。
防護服ちゃんと着てるわよね。」(ユキ)
「大丈夫ですよ、その辺りはしっかりしていますから。」(南部)
「そう、よかったわ。早く地上で深呼吸したいわ。」
ユキは嬉しそうにこれからの事を南部と語った。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 1 作家名:kei