yamatoⅢ 太陽制御の後で 2
「ただいま。」
進が三浦の地下都市の部屋に帰宅するとユキが玄関まで出迎えた。
「おかえりなさい。島くんとゆっくりお話できた?」
時計の針はすでに12時を回っていた。
「寝ててよかったのに。」(進)
「えぇ、そう思ったんだけどいろいろあってね。」
リビングに入ると端末が開いていた。
「少し仕事を忘れたらどうだ?働きすぎて体、壊すぞ?」(進)
「あら?それは心配してくれているのかしら?それとも…」(ユキ)
「それとも?」(進)
「仕事に反対したい気持ち?」(ユキ)
「体を心配してるの。ユキは夢中になると何もかも忘れちゃうだろ?」(進)
「そうかしら?古代くんの事は忘れないわよ?」(ユキ)
「そうか?じゃぁ一応、そう言う事にしておくか…」(進)
「いやぁね、一応、だなんて。…お腹はいっぱい?何か食べる?」(進)
「いや、結構つまんだから大丈夫だ。シャワー浴びて寝るよ。」(進)
「そう?じゃぁ私も片して寝る準備するわ。」
ユキは端末を閉じた。
進はシャワーを浴びながら島の言葉を思い浮かべていた。
(お前の恋は成就できる)
一度結婚式前日、まで行った…が、悪魔のような白色彗星が二人の幸せを壊した。辛い戦いだった…地球へ戻れたのは奇跡以外何物でもなかった。それからは復興事業が落ち着いて、さぁこれから…と言う時にまた有事が起きた。
(まるで俺たちを一緒にさせないための負のエネルギーが働いてるような
そんな感じだな)
進はシャワーのスイッチを切った。
ユキも島に話した事を思いだしていた。
(島くん、古代くんに本当に言っちゃったかも…)
進と島はライバルであり親友。ヤマトに乗れば上官と部下の関係になるがそれでも意見を言える立場だ。
(でもケンカとかした感じじゃなかったし…大丈夫ね。)
ユキはシャワーの音が止まったので暖かいカフェオレを二つ用意した。
「いい匂いがする…」
進が頭を拭きながらリビングに入ると湯気を立てたカフェオレが二つテーブルの上に置いてあった。
「どうぞ、お茶にしようと思ったんだけど牛乳が手に入ったから…明日
これでロイヤルミルクティ作ってくれる?」
ユキがマグを一つ持って一口飲んだ。
「あっつい…古代くんも気を付けて飲んでね。」
進はバスタオルをイスの背もたれにかけて自分も座った。
「シャワー室から出たらすぐこのいい匂いがしてさ…いただきます。」
普通の会話…ユキはそれだけで幸せを感じる事が出来た。
(島くん、やっぱり私贅沢かも。これ以上の幸せはバチが当たっちゃうかも
しれないから…このままで充分…)
“アチチ”と言いながらカフェオレをすする進の顔を見てユキはそう思うのだった。
それから間もなく輸送船団が組まれヤマトのクルーはそれぞれ新しい任務に就いて再び宇宙へ向かった。
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 2 作家名:kei