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yamatoⅢ 太陽制御の後で 6

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<信>
  「古代くんを?救う?」(ユキ)
  「私も絶対に艦長がした、という事が信じられないんです。古代艦長を
   信じたい…だから…ユキさんが聞いたこと、教えてくれませんか?」

ユキは香山の顔を見て驚いた。

  「確かに…あの時強制的に降ろされて納得できませんでした。だけど後の
   事を聞いて…私達じゃムリ、って思いました。経験がなさすぎる…って。
   古代艦長はご自身の体験から森さん以外の女性じゃこの危機は乗り越え
   られないと判断したんですよね…あのまま女性が残っていたらその後の
   戦闘でパニックを起こしていた事でしょう。女性クルーのほとんどは戦闘を
   体験した事のない生活班と技術班ばかりでしたからね…。」

香山はコーヒーを一口飲んだ。

  「古代くんと林田さんは同じ養成学校の卒業生なの。古代くんは林田さんの
   履歴を見てこのまま月面基地に行って使いものにならなければ艦載機の
   パイロットをクビになる事を知ったの。古代くん、艦載機のパイロット
   出身なのよ。ちょっとわけありで途中、砲手に転向したんだけど…苦労して
   努力してパイロットになったのに…クビになんてさせられない、って
   思って少しでも貢献できたら、って射撃訓練を見てあげてたらしいの。
   さすがに…艦載機の訓練はできないからね。」

ユキがコーヒーカップを手に取って一口飲んだ。

  「結構…成績が悪くて…一度突き放したらしいわ。だけど毎晩訓練に
   来てて…古代くん、ヤマトでも最後に全員のレコード確認してたから…
   そこでクルーの誰が訓練来てる、とか昨日のレコードと比べて的中率が
   どう、とかを確認していたわ。」(ユキ)
  「じゃぁ…毎晩一緒に訓練してた、って言うのは?」(香山)
  「ないと思うわ。かなりきつく突き放したみたいで…古代くん、ヤマトに
   乗ってても最後に射撃訓練して…レコードを見てたわ。100%じゃないと
   何言われるかわからなくてドキドキしたものよ。」(ユキ)
  「…そうなんですか。」

香山はそう答えながら“違うじゃない”と心の中でつぶやいた。

  「最後の日…林田さんはいつもより荷造りで訓練に来たのが遅かった…
   古代くんが行った時ちょうど訓練中だったんですって。で、最後だった
   から少し話したらしいの。せっかくパイロットになれたんだからもっと
   頑張れ、って。だけど…林田さんはそれを勘違いしてしまったらしいわ。」

ユキが寂しそうに笑った。

  「ほら、古代くんって誰にも同じように接するでしょう?女の子は勘違い
   しやすいの。」(ユキ)
  「確かに…それ、ありますね。」(香山)

香山は第二の地球探しの時にヤマトに生活班の一員として乗務していた。その時新人も元のクルーにも分け隔てなく声を掛ける進に親近感を覚えたのを思い出した。

  「林田さんも勘違いしたみたいで…ふらついた林田さんを支えようとし時、
   反対にキスされて…押し倒されちゃったらしいわ。」

ユキは視線をコーヒーから外さない。

  「笑っちゃうわよね…あの古代進が押し倒されちゃったのよ?柔道の得意な
   太田くんが聞いたら驚くわ。」(ユキ)
  「まさか…古代艦長?」(香山)
  「まさか、の事はないわ。ただ、林田さんに“2番目でいい”って告白
   されたらしいけど…女性が“2番”で満足するわけないのよね。絶対に
   古代艦長は自分の事が好き、って思ったからその行動に出たんだと思うの。」

ユキはコーヒーに口を付けた。

  「ユキさん、それ本当だと思いますか?」

香山がもう一度聞いた。

  「えぇ…古代くんがそんな事で自分を守る様な嘘はつかないはず…多分、
   こんなうわさが出たら私と不仲、とか婚約破棄とか…いろんな噂が出て
   私がどう思われるか、を考えてくれたのよ。だから私には本当の事を
   話してくれたって…信じてる。」

ユキの“信じてる”と言った時視線は香山に向いていた。まっすぐできれいな瞳だった。

  「古代艦長はご自身を守ろうとか思っていないのでしょうか?」(香山)
  「古代くんは…そうね、自分の事あまり考えていないのでしょうね。」

ユキは思い当たる節がたくさんあるのかクスクス笑った。


作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 6 作家名:kei