yamatoⅢ 太陽制御の後で 7
<出航>
翌朝、ユキは誰よりも早く起きて身支度すると迎えのエアカーに乗り藤堂の元へ向かった。
「おはようございます。ご自宅何時に出られたんですか?」
ユキは長官室に入ると笑顔で藤堂に言った。
「昨日から泊まり込だよ。帰ると寝る時間を削るだけだからね。」
藤堂が笑顔でユキに言う。
「よかったな…古代が帰って来て…」
藤堂の言葉にユキは頷いた。
「信じてましたが…今回ばかりはちょっとドキドキしました」(ユキ)
「昨日は話したか?(藤堂)
「いえ…なにも。でも少し艦長とお話しできました。懐かしくて…嬉しかった。
早く古代くんに会わせてあげたいです。」(ユキ)
「そうだな…それにしても沖田も変な所にこだわる…最後の最後まで艦長の
発表はしないでほしい、って…。」(藤堂)
「でも発表していたら別の意味で大変だったかもしれません。今日のような
形が一番なのではないでしょうか。」(ユキ)
「古代も肩の荷が下りた感じだろう…体調も良くなってくれればいいが…
まぁ沖田がいてユキがいれば大丈夫だろう。」(藤堂)
そこへ伊藤がノックをして入ってきた。
「長官、森秘書官、お時間です、よろしいでしょうか?」
藤堂はユキの顔を見て頷くと
「うむ、でかけよう。」
と言って長官室を後にした。
「総衛兵、礼式整列!」
新艦長を出迎えるために全乗組員が甲板に整列していた。メインクルーはタラップのふもとで整列している。そこへ藤堂とユキが並んで入ってきた。
「新艦長は長官か?」
辺りがざわついた時
「新艦長は昨夜からヤマトに乗りこんでおられる。」
藤堂の一言で進は昨日の言葉が空耳でなかったと思った…瞬間、懐かしい声がドッグに響き渡る…
<私は宇宙戦艦ヤマト初代館長、沖田十三である。ただ今よりヤマトは出撃
準備に入る。総員部署に付け!>
呆然としてるクルーに向けてさらに大きな声で沖田は言った。
<重ねて言う、ヤマトは出撃準備に入る!総員部署に付け!>
我に返ったクルーらは慌てて艦内に入り部署についた。ユキは藤堂に会釈してメインクルーと共に急いでタラップを上りエレベータで上を目指す。
進たちメインクルーが第一艦橋で見た人は…懐かしい…沖田の姿だった。
しかし感傷に浸る間もなく沖田は島、山崎、真田、相原、太田、南部とどんどん指示を出す。ユキは静かにレーダー席に座ったが進への指示がまだだった。
「古代…お前は戦闘班長として出港の指揮を執れ。」(沖田)
進は直立不動のまま動けなかった。
「ぼやぼやするな!急げ!」(沖田)
進は沖田に怒鳴られて“ハイ!”と返事をすると急いで慣れ親しんだ自分の席にジャケットを掛けて座った。
(沖田艦長が…生きておられた…)
進は背中に暖かい太陽があるような感じがした。
眩しい朝日の中ヤマトは最後の航海へ飛び立って行った…
作品名:yamatoⅢ 太陽制御の後で 7 作家名:kei