こらぼでほすと 花見5
確かに自然界の摂理で言うと、そういうことになる。刹那は、成人して大人にはなっているが、親猫と共に在る限りは、自然界の常識では子供になる。あの調子では、しばらくは子供のままだ。そう思うと、ニールも自然と微笑んでしまう。
「ナイトサファリのほうも見学するんですか? アスランくん。」
「ええ、昼の虎と顔を合わせて食事してからトラムで廻ろうと予定しています。」
「それなら、僕らは昼の虎と顔合わせしたら帰ります。どっかの坊主と食事しますんで。」
「それなら、俺が帰りますよ、八戒さん。」
「せっかく、刹那君が戻ってるんだから、一緒に遊んであげてください。どうせ、うだうだ呑み会をやるだけですから。」
今回、坊主は参加していない。食事の支度はしてあるが、一人だと適当なことになるのは、どこでも一緒だ。
「そうそう、ママニャンは刹ニャンと遊んでやれよ。俺ら、ここには何度も来てるから、もう飽きてんだ。その代わり、サルのほうも頼むぜ。」
沙・猪家夫夫は、悟空と何度も来ているから、目新しいものはない。のんびりと親子猫を遊ばせるには、坊主の世話をするほうが得策だから、そう言う。
いや、それは申し訳ないです、と、ニールが手を振っていたら、背後の扉が開いて刹那が顔を出した。むずっとニールの腕を掴むと、運動場へ引き摺られる。
「え? 」
「虎が、あんたにも挨拶したいんだそうだ。」
「ええっ? 」
「あはははは・・・ほらね? ニール。じゃあ、後で。」
うわぁーと叫んでいる間に、扉の中にニールは引き摺られていった。虎にすると、長時間、小虎を一人にすると母親が心配するだろうと考えているのだろう。
組織のほうでは、次の予定を組んでいた。五月に入ったら、まずアレルヤがキュリオスリペアで地上降下する。それが、うまくいったら、ティエリアが降下して、また少しだけ一緒に旅行する。五月の終わりにロックオンがデュナメスリペアで降りて、ラボとの打ち合わせをすることになっている。
「俺は、二週間ほど、アレルヤと同行して戻るつもりだから、おまえが降下する頃に上がってくる。」
「了解。俺、アイルランドのほうにも用事があるから、特区には短期間しかいないけどいいよな? 」
「別に好きにすればいい。カタロンとの接触をするなら、コンタクトは、こちらで手配するが? 」
「うーん、クラウスと直接、会うつもりはないから適当にする。二ヶ月くらい留守してもいいか? ティエリア。」
「いいだろう。情報収集に必要なものがあれば連絡してくれ。それと、ニールへの説教はしておくように。」
地上でないとできないこともある。ロックオンは、元エージェントもやっていたから、そちらの用件も携えて降下する。世界は、恒久的平和に向かっているが、ちらほらと火種はある。そこいらの確認をロックオンがやってくることになっている。例の企業体関係の確認がメインだ。
「先に、ティエリアがやるんだろ? だいたい、俺が、なんか言っても効かないぜ? 」
「一応、やっておけ。ニールには繰り返しやることが重要だ。」
「へーへー、やっておくけどさ。」
まあ、実兄は自分が何を言っても、はいはい、と、笑って頷くだけだ。内容が耳を素通りしているだろうが、それでも、心に届くまで続ける必要はある。届かないから、やらなければ何も変わらないからだ。
「ようやく、飲みに行けるかな。」
「無茶に飲ませるな、ロックオン。まだ、体調は万全ではない。」
「わかってるよ。なんていうか、二人だけで飲んでみたいってだけだ。ほら、あの人の傍って、たいてい、誰かいるだろ? 」
大変寂しがり屋で、ちと壊れているので常に誰かが傍にいる。だから、なかなか双子だけで、というのは難しい。デートしてくれ、とは言ってあるから、今度なら時間を空けてくれるだろう。これといって小難しいことを話したいわけではなくて、昔話をぽつりぽつりとやりたいだけだ。それができるのは、双子の片割れだけだからだ。
作品名:こらぼでほすと 花見5 作家名:篠義