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【腐】恋愛妄想疾患【亜種】

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「恋愛妄想疾患」



君は、とても恐がりだね。

この世界は君に優しくないから、君はいつも怯えて、それを知られないように、強い振りをしてる。

人知れず泣いている君の側にいたいと、そう思った。

ねえ、君が望むなら、この世界を壊してあげるよ。




「まさかねえ、こんなことが起きるなんて。だって、ねえ、あたくしが子供の頃は、鍵なんて掛ける家の方が珍しかったですよ。ええ、そんなことをしたら、まるで近所に泥棒が住んでるような扱いじゃないですか。そうですよ、あなた。ええ、ええ、分かってますわ。この辺も変わってしまいましたわね。新しい家も随分建って。でもねえ、まさか、こんなことが起きるなんて」

ドレスに押し込まれた豊満な体を揺すりながら、オパール伯爵夫人はまくし立てる。彼女の白くぽってりした手に、ガーネットはそっと自分の手を重ねた。

「お可哀想に。さぞショックだったでしょう。泥棒が侵入しただけでなく、警察にまでお屋敷を荒らされて」
「そう、そうなの。もちろん、刑事さん達は同情してくれましたわよ。でもねえ、あたくしが夫と出会う前に魔道士であったことを、あの人達えらく気にしてるのよ。きっと、自分達の仕事を横取りされると思ったんだわ。魔道士は、外部の干渉を嫌いますからね。あたくしも、あの人達があんまり失礼な態度でしたら、昔なじみの方にお願いしようかと思いますけど。でもね、あの方達もお仕事ですもの。多少のことは目をつぶらないといけませんわ」
「刑事さん達は、あなたのことを酷く責めたりはしませんでした? あなたのコレクションの一部について」

ガーネットに水を向けられ、夫人は途端にしょんぼりとうなだれる。

「管理がなってないと言うんですのよ。酷いと思いません? 鍵付きの金庫だなんて、そんな大げさなものにしまっておいたら、手に取って見たいと思った時に、鍵が開かなかったらどうしますか。そりゃあ、中には、ちょっとばかし危険なものも混じってますけど。ねえ、あなた、もし泥棒が、あれを壊したり傷つけたりしたら危険ですわ。あれは宝石ではないのですもの・・・・・・。ああ、やっぱり、お友達に連絡して、取り戻してもらった方がいいかしら?」
「そうですわね。私は、魔道具にはあまり詳しくないので・・・・・・アンバーに聞いてみましょうか?」

アンバーの名を聞いて、オパール伯爵夫人はにっこりと笑った。

「あなたの大切な婚約者様に? いいえ、大丈夫。ありがとう。彼、魔道士とは思えないくらい、素敵な方ね。本物の紳士だわ」

その言葉に、ガーネットもころころと笑う。

「あら、伯爵夫人にそう言われたら、彼はきっと困ってしまいますわね」
「まあ、本当のことですわよ。あなたが彼と婚約したと聞いた時、あたくしは本当に良かったと思いましたわ。ねえ、お式はいつ頃になりますの? あたくし、ドレスを新調しませんと」
「具体的なことは、まだ。でも、決まったら一番にお知らせしますわ」
「楽しみにしてますわ。あなたは若くて美人だから、何を着ても似合いますわね。ああ、ごめんなさい、お茶が冷めてしまったわ。すぐに取り替えますわね。いいえ、いいのよ。さあ、ケーキをもっと召し上がれ」