約束を破ると損をする
ーーー後日。
「知ってるか?ハーヴェイが罰則をくらったって」
「あぁ、そうらしいな。しかし、あれはどういう趣旨で…?」
「さぁな。俺には全くわからないな」
噂の対象のハーヴェイが、軍主ラズロとの約束を破り今日1日間の罰則を受けることになった。
「くっそ~…なんで俺がこんなことをしなきゃなんねーんだよ!」
みんなの注目を浴びながら、ハーヴェイは不機嫌極まりない顔で船内を歩く。
「ハーヴェイが約束を破ったからだよ。それに、軍主の命令って絶対ですし」
「だってさ。まぁ今日1日の辛抱だな」
ラズロとシグルドはそんなハーヴェイの後ろを楽しそうについていく。
「だからって…だからってなんで『女装』なんだよ!!?」
『罰則 ハーヴェイは軍主ラズロとの約束を破った為、罰則を課す。
本日「女装」にて1日を過ごす事。
by ラズロ』
ハーヴェイの格好はフリフリのついた乙女といわんばかりの可愛い格好だ。
貴婦人という言葉がよく似合う服だろう。
『女装を今日1日続けること』…それがラズロからの罰則だ。
そのため、ハーヴェイは脱ぐこともできずに軍主命令でやむをえなく船内を歩き回っている。
黙って帽子でも被ってたらどこかの品のよいお嬢様にも見えるだろう。
しかし、今日のハーヴェイは口を開けば文句ばかり飛び出す。
女らしさなど微塵も感じられなかった。
「俺がお嬢さんをエスコートしてやろうか?」
「そんなのいるか!!」
シグルドがハーヴェイに向かって手をヒラヒラさせるも、ハーヴェイの怒りが増す。
「それは残念」
どんなにハーヴェイが剣幕に怒っても、残念ながら怖さの欠片もない。
シグルドはわざとらしく肩をおろす。
「たまには楽しみもないとだよね…次は言葉遣いも罰則にいれてみようかな?」
「あっ、それいいですね。その時は俺もお手伝いしますよ」
爽やかに会話するラズロとシグルドだが、内容は黒さがにじみ出ていた。
「おまえら…俺で遊ぶなーっ!!!」
ハーヴェイ女装の噂はすぐに広まり、みんな一目見ようと集まった。
そんなハーヴェイにとってこの最悪な一日の中で一番救いだったことは、キカが外出中だったということだ。
もちろん、後に女装騒動はキカにバレて、一生懸命弁明するハーヴェイが目撃されていた…。
ーーー後後日。
早朝の光を浴びながら、ラズロはいつものように海を眺める。
「次は誰で遊ぼうかなー…」
次なる獲物を求めて腹黒笑顔で笑う。
今日も平和な一日です。
by ラズロ
END
作品名:約束を破ると損をする 作家名:浅戯