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茶屋でのひと時

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「たまにはこういうのも悪くねぇな」

陽光の日が降り注ぐ茶屋で政宗は空を仰ぐ。
今日は町の偵察ついでの休息。いつも後ろで小言をいう小十郎を置き去りにして、城を抜け出してきた。

「まったくだよねぇー」

「…って、なんでお前がいるんだよ!!」

先程まで確かに隣には誰もいなかった。
しかし、今は佐助がお茶を飲みながらちょこんと座っている。

「もちろん俺様の大好きな政宗がいたから来たに決まってるじゃん」

「なっ…!」

恥ずかしがることもなく、満面の笑みで言う佐助の直球の言葉に一瞬動揺する。
それをしめたと思ったのか、佐助はさらに詰め寄ってくる。

「政宗も俺様に会えて嬉しいだろ?」

「HAっ!!やかましいのが来ていい迷惑だ!!」

「つれないこというなよなぁー。俺様は政宗に会えて嬉しいよ」

「…」

佐助の言葉は本気なのか冗談なのかわからない。仮に本気だとしても素直に受け入れるのは癪だし、佐助が隣にいることが本当は嬉しい自分の心にも腹が立つ。
出来るだけ関わらないようにそっぽ向くことが、今できる精一杯の反抗だ。
そんな政宗を見越してかいきなり肩を抱き寄せられた。

「…っ!!暑っ苦しいから離れろ!!」

「無理だね。今日は俺様がいくらでも奢ってやるからたくさん食べな」

「いくらでも?」

「あぁ。俺様の政宗がお腹空いて倒れでもしたら大変だからなぁー」

佐助は上機嫌らしく気持ちが大きい。
そんな佐助を見てニヤリと心の中で笑った。

「おばちゃん。団子99本追加」

「はっ!?き、99本!!?政宗そんなに頼むの!!?」

「お前が何本でもって言ったんじゃねぇか。俺も鬼ってわけじゃないからこれでも遠慮してんだぜ」(←あえて100本頼まない所)

くっ…どんなに数えてもそんなに団子を買うお金はない
ってかそんなに食べたら政宗がぶよぶよに…
じゃなくていっそのこと食い逃……
いや、ちょっと待て
さすがそれはヤバいんじゃないか
でも政宗に良いところみせたい(本音)
でも…旦那給料一括とかしてくれなさそうだし…
今俺様かなり大ピーンチ!!

「どぉーしたんだよ。別に無理しなくてもいいんだぜ」

勝ち誇ったような顔。
「可愛い!抱きつきたい!!」と、いう衝動に今は耐える。

この戦いだけは…
この戦いだけは絶対に負けられない…!!
政宗にいいとこみせたい…!!

「政宗はそこで待ってて…!!」

引きつってはいるが精一杯の笑顔を政宗に向け団子屋の中に姿を消す。

「…別に、無理しなくてもいいのによ」

ボソッと呟いた言葉は佐助には届かない。先ほどまで側にいた佐助がいなくなってしまったのが少し寂しい。
ただ一緒にいられればそれだけで良かったのに…。
だが、そんなこと口にも表情にも出してはいけない。今の関係が気に入ってるし気持ち的に負けた感じがして嫌だから。それに自分が言った言葉を取り消すのは尚更嫌だったから…。

今まで佐助が座っていた場所をみて政宗は軽く苦笑いを浮かべた。


作品名:茶屋でのひと時 作家名:浅戯