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茶屋でのひと時

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「…おせぇーな」

熱かったお茶は冷めきっている。
それなのに佐助は今だに茶屋の中から出てこない。
さすがに心配になり政宗が立ち上がるといつもの声が響いた。

「政宗ーっ!!」

「おまえ俺をどれだけ待たせれ…ば……」

佐助の手には盆に大量に積み重ねられた団子が乗っていた。
しかも一つの盆では足りないようで後ろにも団子が控えている。

「はいっ!!政宗が頼んだ99本」

今日一番の笑顔とキラメキ。

「あ、あぁ…あり、がとう」

予想外の展開に政宗の方が戸惑う。

「どーする?お土産にする??それとも政宗が今食べる??」

「土産に…」

見てるだけで空腹が満たされそうだ。
さすがに今すぐ食べる気はしない。

「俺様が言ってきてやるよ。じゃあ政宗、あーんしてv」

「はぁ?なんでそんな……んっ!!」

隙をついて団子を口の中にいれられた。
吐き出すわけにもいかず一番上の団子を食べさせられた。

「…いきなり何すんだよっ!!」

飲み込み終わると同時に文句を吐き出す。
そんな政宗の怒りなんてお構いなしに佐助は政宗が握っている団子を奪い口にした。

「間接ちゅうv」

「一回死ぬか…?」

目には殺気が宿り、佐助の首を狙うように刃を少し鞘から出す。
勿論騒ぎ立てるつもりはないので人目につかないように隠しながら。

「やだな~冗談だよ冗談。俺様なら間接なんて周り口説いことするわけないじゃん」

「尚更悪い」

刀を鞘に納ながらに吐き捨てるように背を向ける。
佐助は苦笑いを浮かべながら冗談が通じなくても可愛い政宗に熱い視線を送り続ける。お持ち帰りしたいのは政宗なのに、と…。

数分が立ちお土産用に包まれた団子。
ちょっと量があるが、馬に積み込む。

「…本当に大丈夫なのか?」

ここにきて流石に心配になる政宗。
自分から言い出したことなので心配するのが間違いなのもわかっている。
だが、安月給(予想)の佐助に奢らせていいのか気掛かりになってきていた。

「余裕余裕。俺様政宗の為なら出来ないことなんてないし」

「……Thank you」

「…!!」

かなり小さく消え入りそうな声だったが聞き逃しはしない。

あの意地っ張りで恥ずかしがり屋の政宗が俺様にお礼をいってくれた…!!
正宗も大人に…
俺様感動で前が見えない…

「じゃーな」

「えっ!?」

馬は主を乗せ軽やかに進んでいく。その馬の背に揺られながら政宗は手を振る。
まだ抱きしめてない、と…かなり残念な気持ちが残っているが素直な政宗を見れたから満足はしていた。
今はもう手を振る政宗の後ろ姿しか見えないがそれでも良かった。
政宗が喜んでくれたから…。



「さて、手伝ってくれるんだろ」

「…はい」

政宗とのお別れの余韻に浸ることなく肩を叩かれた。
佐助の給料では勿論足りない。足りない分は働いて返すと約束していた。

「兄ちゃん手先器用そうだからすぐできるさ」

「頑張ります…」

佐助はしばらく真田軍にも帰らずせっせと団子を作り続け無事借金返済。
しかし無断欠勤が祟り佐助の給料は引かれるのであった。


END
作品名:茶屋でのひと時 作家名:浅戯