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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 14

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第51章 海魔神


「っ!?まずい、船が渦に飲まれかけてる!ガルシア、舵を!」
「やっている、面舵一杯だ!」
「大変です!今度は岩礁にぶつかります!」
「くっ!」
 ロビン達一同はレムリアへと向かうべく、霧に包まれた海域へと船を進めた。
 ヴィーナス灯台の頂上よりロビンが見たのは遥か北の大イースト海に見える霧に包まれた海域だった。ロビン達は事前にバビからレムリアのある海域は常に霧に包まれていたという事を伝え聞いていた。
 海上からはついに見つけることができなかったバビは、空からレムリアの位置を探り出すため、自らの名を冠したバビ灯台なるものの建設に取り組んでいた。
 全てはバビの延命の為、レムリアの薬を再び手に入れ、この世に在り続けることが目的であった。その役目をロビン達は担う事となっていた。
 しかし、バビはアレクスの手に掛かり、最早一向にアレクスを探す必要はなくなったように思われた。
 しかし、今度はレムリア人であるピカードの提案によって一行はレムリアを目指すことになった。彼がレムリアに帰還しなければならない理由は一つであるように思われた。しかし、彼はまた違う理由で故郷を目指していた。これはまだロビンにもガルシアにも他の仲間にも知らされていなかった。
 海上からは霧の影響で見通しが悪く、岩礁にぶつかるなどといった危険性があった。それを恐れ、バビの派遣した船員達は霧の海域、まさに魔の海域と呼ぶにふさわしい、そんな海域を避けていたのだった。
 ロビン達は彼らの二の舞にならぬような装備があった。船に取り付けられた巨大な翼である。これにより空を行き、霧に隠れた岩礁にぶつかる事は防いだ。
 しかし、空からでは霧かかった領域そのものは見て取れても中はとてもみることなどできはしなかった。
 そこでロビン達は空より魔の海域へと侵入し、そして荒れ狂う海流に翻弄されていたのだった。
「取り舵一杯!」
 舵を目一杯に操り、どうにか渦潮に巻き込まれるといった事はなかった。しかし、操舵するガルシアに多少の狂いが生じるだけで一瞬にして船は海の藻屑と化す状況であった。
「う…、頭がずきずきします…」
 メアリィはその場に崩れ落ちた。これほどまでに荒れた海にいては船酔いもしかたがなかった。
「ちきしょう、オレもだぜ…」
 ジェラルドも顔が真っ青になっていた。
「二人は船室で休むんだ。イワン、シバ、介抱してやってくれ」
 ロビンが言うと二人は分かりました、分かったわ、と二人に肩を貸して船室へ入っていった。
「リョウカ、お前は大丈夫か?」
 シンは訊ねた。
「うん、私は」
 リョウカは平気な様子だった。
「それならいいんだが、無理はするなよ?」
「大丈夫だって、兄様」
 シンはジュピター灯台でのシエルとの邂逅の際にリョウカの肉体が限界であると知り、それ以来彼女に対して過保護になっていた。
 考えられ得る危険はどんなものであれ、彼女から取り除こう、そう考えていた。本来ならば真っ先に船室で大人しくさせておきたいところである。
 突然、船が一際大きく揺れた。
「大変です!船が海流にのってしまいました!」
 ピカードは叫んだ。魔の海域の海流はとてつもなく速く、船が抗することはできない。かといって、抜け出すこともままならない。
「くそ!何とか抜け出す。面舵一杯、舵が折れるくらいに切る!」
 ガルシアは叫びながら力いっぱい舵を切った。しかし、海流の影響か、舵が非常に重い。
「手を貸すぞガルシア!」
 ロビンがガルシアの腕の間から頭を出し、共に舵を握った。しかし、それでも重い。男二人がかりでも舵はびくともしない。
「岩礁に衝突しますよ!」
 ピカードは叫んだ。
『颯の術・改!』
 シンは詠唱し、風の力を受けて宙を舞った。そして身を翻し、船の外に出ると力の限り船に体当たりした。
「これで動きやがれ!」
 シンによる外部からの圧力により、船の軌道が少し変わった。これにより舵が僅かに動いた。
「よくやったぞ、シン!」
 ロビンとガルシアは軽くなった舵を二人力を合わせて切った。
 しかし、岩礁をかわすにはまだ及ばなかった。
「くそ、ぶつかるか!?」
 ガルシアは叫んだ。
「させるかよ!」
 シンは空中に浮いたまま再びエナジーを発動した。
『爆浸の術!』
 シンは爆発を起こし、岩礁を破壊した。しかし、完全には破壊できなかった。
 僅かに残った岩礁が船体を掠めた。衝撃により、船が大きく揺れた。
「うわあああ!」
「くっ、座礁したか!?」
「いや、すんでのところでかわせたみたいだ」
 船体には目立つ傷ができてしまったが、岩礁に激突し、そのまま沈没するような事は避けられた。また、シンの活躍により、急な海流からも逃れる事ができた。
 荒れ狂う渦潮を越え、激しく流れゆく海流を抜けた先はこれまでとは打って変わり、穏やかな海域であった。
――ここまでたどり着くとはたいしたものだ…――
 どこからかロビン達に呼びかける声が聞こえた。すると次の瞬間、周囲の水面を覆ってしまうほど大きな渦潮が発生した。
「な、何だこれは!?とにかく渦から脱出するんだ!」
 ロビンは叫んだ。
「無理だ、舵が全く動かん!」
「ちきしょう、どうなっちまうんだ!?」
 船はどんどん渦に巻き込まれていった。
     ※※※
 ロビンは自らを呼ぶ声で目を覚ました。
「よかった、気が付いたのね!」
「ジャスミン…、ってここは!?」
 ロビンは飛び起きて辺りを見回した。急に起き上がった事を心配するジャスミンの声は耳に入らなかった。
 ロビンの視界に入り込んだ風景はこれまでに見たことのないものだった。
 辺りは全てが青く、日の光を受けキラキラと輝いていた。水中にいるようだった。しかし、どういうわけか呼吸はでき、体が浮かび上がらない。環境は地上と大して変わらない。
 岩礁らしき岩の根本が風景に広がっている事から、どうやらここは海の底であるようだった。
 ロビンは目の前の風景に気を取られてしまっていたが、ふと正気に戻った。
「そうだ、みんなは!?」
 ロビンは叫んだ。
「落ち着いて、ロビン。みんな船の中にいるわ。まだ目を覚ましていないけど、誰も怪我はしていないわ」
 一番に目を覚ましたのはジャスミンであった。彼女はロビン達が荒れ狂う海に悪戦苦闘している間、船酔いに倒れた仲間の介抱を手伝っていた。
「ん、うう…」
「あ、ててて…」
 甲板で横たわっていたガルシアとシンも目を覚ました。
「シン、ガルシア!目を覚ましたか」
「ロビン、それにジャスミンも。無事だったか」
「いててて…、寝違えちまったか。しかし一体ここはどこなんだ?」
 シンは首を抑えながら訊ねた。
「ここはどうやら海の底らしい。けど、不思議なことに息はできるんだ」
 ロビンは簡単に説明した。
「確かに息はできるな、船にも損傷はないようだ」
 ガルシアは言った。
 ふと、船室のドアが開いた。
「皆さん、無事でしたか」
「ピカード、それにみんな、気が付いたみたいね」
 ピカードの後に続いて他の仲間も続々と外に出てきた。
「ちきしょう、まだ頭がガンガンしやがるぜ…」
 しかし、ジェラルドの頭痛はすぐに吹き飛ぶこととなった。
「って、何だここは!?」