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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 14

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「水の中、でしょうか。でも息ができる…」
 イワンは深呼吸して空気があることを確かめた。
「水がキラキラ光ってますわね、とても綺麗…」
 メアリィは風景に魅了されていた。
「ふふふ…、我が居城、お気に召したかな?」
 突如としてどこからか声が聞こえた。
「誰だ、どこにいる!?」
 ロビンは叫び、背中の剣の柄に手をやった。
「出てこい!」
 ガルシアも腰の剣に手を伸ばした。
「ふふふ…、威勢のいい事だ。ならば我が姿をみるがいい…」
 声と同時に空間に水泡が集まり始めた。泡が一つになり、破裂すると声の主と思しき者が姿を現した。
 現れたのは初老の男であった。真っ白になった髪と口髭を蓄えている。手には三つ叉に分かれた槍を持っており、衣服を纏わない上半身は金剛の如く逞しい。
「あれは、もしや…」
 いつの間にやら姿を現したスクレータは言った。
「海魔神ポセイドンではないか!?」
 長く伸びた髭を撫でながらポセイドンと呼ばれた男はニヤリとした。
「ほほう、私のことを存じておったか。いかにも、我が名はポセイドン。この魔の海域を統べる者よ!」
 ポセイドンはその体躯に違わぬ野太い声で名乗りを上げた。
「お前がポセイドン…、僕がレムリアから放り出された元凶」
 ピカードは静かに言った。
「そこの小僧、その姿、レムリア人と見る。レムリア人は島より外に出ぬ者達と聞く。それが何故ここにおるのか」
 相変わらずポセイドンは髭を撫で続けている。
 ポセイドンは数千年も昔に世界が戦乱に渦巻く時、戦乱に身を置いていた人々の悪しき心から生み出された存在である。言うなればその存在はジパン島のオロチと同じものであった。
 オロチが大地を統べるものであるならば、このポセイドンは世界の大海を統べるものでもあった。
 外界からレムリアに近づけぬのも彼が原因であった。ポセイドンによってレムリア周辺の海は魔の海域となり、何者も近付けぬようになったのである。
「ポセイドン!お前に訊きたいことがある。お前が魔の海域を拓く事でレムリアを外界から遮断したのは何故だ!?」
 普段は大人しいピカードが珍しく声を荒げていた。ポセイドンは動じず、髭を撫でて含み笑いを続けた。
「ふはは…、レムリア人にしては随分と感情的だな。いいだろう、教えてやる、我が深遠なる目的をな!」
 ポセイドンは語り始めた。
 彼の目的は全ての海を魔に染め上げる事だった。そう、彼が根城にするこの魔の海域のように、である。
 世界中の海を魔に染める事で全ての海を統べる者となり、そして行く行くはウェイアードそのものをその手中に収めるのがポセイドンの目的であった。
 しかし、全ての海を魔に染め上げるためには相応の力が必要であった。レムリアの民の持つ水の力、そして民へもたらす何千年という時を生き長らえる事のできる力である。
 レムリアの人々は千年以上もの寿命を持つが、それは不老不死ではない。いつかは彼らにも死の時はやってくる。
 しかし、魔神であるポセイドンはその例ではなかった。彼は魔神故にその寿命はレムリア人に匹敵するほどある。そんな彼がレムリアの不老長寿の力を得れば、不老不死の存在となることができる。
 決して倒れることのない魔神が誕生する事となってしまう。そのような事が起これば、世界を魔に包み込むのも不可能な事ではなかった。
「何て奴だ…!」
 ピカードは静かに憤った。
「ふはは、そう怒らないでくれ。大丈夫さ、レムリアの力を得た後に世界を魔に染めても、レムリアの地は私の居城とし続けよう」
 ポセイドンはピカードの怒りを受け流すだけだった。
「ポセイドン!お前は必ず僕がここで倒す!」
 ピカードはポセイドンに向かって半身に構えた。
「ははは…!私も甘く見られたものよ。レムリア人ごときがこの私に勝てると思っているのか?」
 勝算はほぼ皆無であった。ピカードには多少武術の心得があったが、魔神相手にどこまで通用するか分からずにいた。エナジーにいたってもその差は歴然であった。
「絶対に打ち倒す!」
 そんな絶望的な状況下であってもピカードは意志を覆さなかった。
「ふん、ならば完膚無きまでに叩きのめしてやろう。出でよ、我がしもべ共!」
 ポセイドンがエナジーを発すると空間から魔物が現れた。三つの首を持つ水中の魔物、パイロヒドラ、しかも二体も召喚された。
「くそ、仲間を呼びやがったか!」
 シンは双刀を抜きはなった。
「ここは俺達が当たる、ピカードは奴を叩け!」
 ガルシアも腰の剣を抜き、戦闘態勢に入った。
「ありがとう、ガルシア。行くぞポセイドン!」
 ピカードは構え直し、一心にポセイドン目掛けて駆け出した。
 水中の居城で乱戦が繰り広げられていた。ロビン、ガルシア、シンが先頭に立ち、それぞれチームを作って魔物との戦いに臨んだ。
 一体につき四人のチームで魔物に当たった。
『プロミネンス!』
 ジャスミンはエナジーで身体に炎を纏った。水中であるが、周りの環境は地上とほぼ同様であるため、炎を出すことができた。
「やあ!」
 ロビンは剣を一閃した。ドラゴンの頑強なる体をも斬ることができるガイアの剣は簡単にパイロヒドラの体をも切り裂いた。青紫の血が飛び散った。
「はっ!」
 ロビンに続いてガルシアも攻撃した。オリハルコンを錬成し、できた剣はロビンの剣並に威力が増していた。
「くらいやがれ!」
 ジェラルドも暗黒の大剣で攻撃した。あちこちを斬られ、パイロヒドラは早くも満身創痍となった。
「これで終わりよ!『プロミネンス・ジャベリン!』」
 ジャスミンは身に纏う炎一点に集結させ、一筋の槍のようなものを作り出した。それを槍投げのように魔物へと打ち出した。
 魔物は苦悶の雄叫びを上げた。勝負は一瞬にして決したように思われた。
 しかし、驚くべき現象が起こった。
「何だって!?」
 ロビンは驚きのあまり声を上げた。最早虫の息とも言えるほどの傷を受けたというのに、パイロヒドラの傷は次第に塞がっていったのだ。
「奴め、かなりの自然治癒力を持っているようだな…」
 ガルシアも眉をひそめた。
「ちっ、オロチみてえな奴だな!」
 この超回復能力は確かにオロチのそれとよく似ていた。しかし、オロチとは違い、回復の速度は遅く、回復の隙を与えなければ撃破の可能性は十分にあった。
「奴はオロチとは違う、一気に叩けば倒せる!行くぞみんな!」
 ロビンを先頭にガルシア、ジェラルド達は再び魔物へ向かっていった。
「くっ、自然回復とは、これは小手先の攻撃は通用しない…」
 リョウカは言うと咳き込んだ。
「リョウカ!無理はするなよ」
 シンは言った。彼女の体はとうに戦える状態ではなかったが、それでも剣を手放すことはなかった。
 彼女が戦ってはならない理由、それはシンの口からは言えなかった。リョウカを宿主としているシエルとの約束があったからである。
 彼女自身も自らの体の変調に気付いていた。それでも戦いになれば動く事はできた。故に、兄のシンに戦わぬように言われても、ただ守られるだけの存在とはなりたくなかったのである。
 リョウカには本当の事が言えず、シンには彼女を止めることはできなかった。しかし、そのような中でも一つ約束を交わした。