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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 14

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 コンサバトは動揺を見せた。彼は前から頭が禿げ上がっていた。レムリアでは頭髪が禿げるのはあまりないことであり、ここまで禿げているのは彼ぐらいだった。対する歳の変わらないハイドロは禿げるどころか年老いているにもかかわらずまっすぐで髪に艶があった。
「おや、肩に白髪が。抜けたのかな?」
 ルンパはさらに追い打ちをかける。コンサバトは慌てた様子で自分の頭を確認した。
「さっ、言い争いはここまでです。ハイドロ様ピカードがお見えですよ」
 ルンパはうまく二人を落ち着けるのに成功した。
「どうやら終わったみたいです。皆さん、ハイドロ様の所に行きましょう」
 ピカードが言うと、ロビン達は動き出した。
「ピカードよ、それには及ばぬこちらから行こう」
 ハイドロは玉座を立ち、ピカードの所まで歩み寄ってきた。
「ふん、ワシは行かぬぞ!」
 コンサバトは言った。
「ならばそうすればよい…」
 ハイドロは取り合わなかった。
「見苦しい所を見せてしまったな…」
 ハイドロはルンパを後ろに控え、ロビン達と向き合った。
 千年生きるのが当然のレムリアにおいてかなりの年取った姿を、ハイドロはしていた。老いがおとずれるのは万年近く生きたものであり、つまりはハイドロの年齢は万に近いと言うことになる。
 レムリア人のもう一つの特徴である美も未だ健在で、年こそ取ったもののかきあげた水色の長髪は艶を失っていなかった。
「いえ、気にしていませんよ」
 ハイドロの言葉にピカードが応じた。
「ピカード、この度は本当に残念であったな。後少し早くに帰り着けば母に会えたであろうに…。運命とはかくも残酷なものよ、いや私がお主を外に出さなければよかったのだな。本当にすまぬ、ピカードよ」
 ネティスにとって掛け替えのない子を旅立たせてしまったことにハイドロは負い目を感じていた。
「いえ…、ハイドロ様に落ち度はございません。母は病気でしたから、永くはなかったでしょう。それに、母のためにあのような立派なお墓を建てていただき、感謝に尽きません」
「ピカード、この私を許してくれるのか。本当にすまない…」
 ハイドロは消え入りそうな声でピカードに詫びた。
「もう、この話はやめましょう。ハイドロ様、勅令通り世界のあちこちを探索して参りました」
 ピカードは大きめの紙を取り出した。それは今のウェイアード全体の地図であった。
 これまで詳しく知らされていなかったピカードの目的とは、レムリアの外の世界の様子を調べることだった。ロビン達はこの時初めて彼の目的を知った。
 ピカードは地図を広げた。両手でも収まりきらないほどの地図は彼の手によって描かれたものだった。
「初めに僕の使命を手伝ってくれた方々を紹介いたします」
 ピカードはロビン達に目配せすると、一人一人の名をハイドロに伝えた。それに続くように彼ら自身も名乗る。
「僕はロビンと言います」
「私はガルシアと申します」
「オレはシンだ」
 他の仲間達も一様に自己紹介をしていった。
「ロビン達とガルシア達とで別々の場所を旅してきました。ロビン達と合流し彼らの地図を見せてもらう事によってこの地図を完成させることができました」
 ピカードが世界中を旅してきた目的は世界のあらゆる場所へ赴き、地図を作ることだったのだ。
「そうか、ついに現在の地図が完成したのか!これで全てが証明できる、錬金術消失と世界との関係が」
 ハイドロは言うと、ピカードの地図を自らに渡すよう求めた。そして受け取ると近くの台座に地図を広げた。
「皆、少し下がってくれるか?」
 ロビン達はハイドロの言うとおりにする。ふとパチンッ、と指を弾いた。すると床が一瞬水色に輝き、波紋が広がったかと思うと、水面に物が映るように、先ほどピカードが渡した地図が床全体に映し出された。
「すげぇ、一体どんな仕掛けになってんだ?」
 ジェラルドは感嘆しきっていた。
「それほど驚くものではない、ただのエナジーによるものだ」
 ハイドロは答えた。それよりも、とハイドロは床に映った地図を凝視した。
「かなり正確に描かれた地図だな、ピカードよ。ご苦労であったな」
 ハイドロはねぎらった。
「勿体ないお言葉をありがとうございます。ロビンとガルシアが世界中を回ってくれたおかげでこれほどのものが完成しました」
「しかし、改めて見ると昔とはかなり変わってしまったな…」
 ハイドロは足下に視線を落とした。
「ハイドロ殿、昔とはどのくらい昔なのですかな?」
 スクレータが訊ねた。
「昔といってもつい最近の事、ほんの二、三百年前の話だ」
 百年を超える年数を言われ、スクレータだけでなくそこにいたレムリア人ではないもの全員が驚愕していた。それを見てハイドロは微笑を浮かべた。
「そうだったな、外界の人からすればとてつもなく永い時であったな」
 数千年生きたハイドロにとっては百年、二百年などほんの一時にすぎなかった。
「さて、ルンパよ。お主の地図も私に貸してくれぬか?」
 ルンパは待っていたとばかりに地図を取り出した。ピカードがルンパをここへ来るよう指示したのは地図を携えてきてほしかったからだった。
「こちらはあたしがまだ外界にいた頃の地図でさぁ。大体二百年くらい前のものになりますかね」
 ルンパはレムリア人ではなかった。彼は当時ウェイアード中を股に掛ける大海賊であった。海賊として世に知られるようになってからしばらくして、彼はこれまで集めた財宝を使い、ハイディアにほど近い場所に彼の名を冠した村を作り上げた。そして海賊からは足を洗い、自分の村で家族をもうけ、静かに暮らしていたのだった。
「名前を聞いて偶然ではないと思っていたのじゃが、ルンパ殿があのルンパ村を作ったお方であったのか!」
 ルンパの話を聞き、スクレータは驚いていた。まさか二百年も時がたってルンパ村の創立者が健在であるとは思わなかったのだ。
「お、爺さん俺の村を知っていたのか。今も変わらないでいるのかい?」
 ルンパは訊ねた。
「村そのものは変わっていませんぞ。ただ、お孫さんの悪口は言いたくはありませんが、今の村長がとんでもない悪人でしてな、こちらにいるイワンの仕える主人を人質にして金品をせしめているのですじゃ…」
 これを聞いて血相を変えたのはルンパであった。
「人攫いを、だって!?ドンパは、息子がしっかりしていればそんなことにはならないはずだぞ!」
 スクレータは静かに首を振った。
「ルンパ殿、今息子さんがいくつになったとお思いか?このワシと同じ、老いぼれた爺さんになっとりますぞ…」
 ルンパははっとなった。レムリア人ではないながらも、自らも時の流れをレムリア人と同じに考えていた。
「そうか…、奴は俺よりも早くくたばるのか」
 子よりも親が長生きすることの辛さを、ルンパは思い知らされた。
「…このような事態を二度と繰り返すまいとレムリアは外界から完全に遮断されたのだ」
 ハイドロが口を開いた。昔、まだハイドロがピカードほどの青年であったくらい大昔にはレムリアとウェイアードは一緒であった。レムリアの特殊な時の流れはエレメンタルによるものであり、水の力を大量に受けた事により、レムリアの時間は大河のごとくゆるやかなものとなった。