熟れた熱
「俺はルカにだから話した。他の誰かにそうしたかったわけじゃない」
「あー! わかった、わかった! わかったから今日はもう勘弁してくれ、な? これ以上はマジで死ぬ」
無理やり話を遮ると、ルカは自分の手を振り解いて勢いよく立ちあがった。
「そうだ、飯食いに行こう。おまえ腹減ったっつってたし。話し込んでて夕飯食いっぱぐれるなんて嫌だろ?」
「……ああ」
ベッドの上から下りるまでを、ルカは待っていてくれた。逃げるように話を打ち切ったのに、放っておいて完全に逃げようとはしないのがルカらしい。ルカはあれこれと文句を言いながらも自分の世話を焼くのをやめないし、自分を置いて行こうともしない。
「まだ時間は早いけど、今なら空いてるしいいだろ。どうせまたおまえバカみたいに食うんだろうし、混んでる時間帯よりは……」
「ルカ」
「何、ユー……」
振り返ったルカの口が、ス、の形で固まる。
唇で挟み込むように耳朶を食んだ自分の顔が離れていくと、一瞬遅れて、ルカの顔がまた熟れた果物のように真っ赤に染まっていった。
そして押し戴いても拒まなかった手のひらの温度とその眩しさが、繰り返し何度も何度も、自分に百年の終わりを告げていた。