魔王と妃と天界と・2
確かに、悪魔は悪しき者なのだろうと。今の魔王も妃も甘いのだろうと。
それでも、そう語る奴等の顔は、一様に穏やかなもので。楽しそうなもので。
「……くそっ」
一度疑問が生じてしまえば、それを打ち消す事が困難になってしまう。
今までであれば、それこそ己の思い込みと決めつけで無理矢理に、力づくでもそんなものは潰してしまえたのに。
「………いや!!惑わされるな!!これは悪魔達の罠だっ!!」
己に言い聞かせる様に、ブルカノが声に出す。振り切る様に、力強く。無理矢理に。
もう既にその台詞に説得力など無い。
ブルカノ本人でさえも、それを信じきる事などできないというのに。
「……私は、認めなどしない……!!」
ハリボテだろうと虚勢だろうと。
今のブルカノには、そう口にする事しかできなかった。
────ぱきり、ぱきりと音がする。
夜の暗闇の中。
不穏で、不安を掻き立てるその不吉な音は。
魔界と天界を繋ぐ扉から、響いていた。
次いでその奥から聴こえるのは────
作品名:魔王と妃と天界と・2 作家名:柳野 雫