ロウきゅーぶ!~硯谷女学園サイド~1
硯谷バスケ部のレギュラーメンバーはかなり実力が高い。
キャプテンでエースの未有をはじめ、司令塔であるポイントガードのいろはやセンターの塚田久美といった3本柱が要だ。
しかし一つ足りないものがあった。長距離砲である。
ディフェンスの要である矢作蘭(やはぎらん)はミドルレンジのシュートでも少し心許ない。いろはとツーガードとしても務まる甲本みすずも、キープ力は良いがパスの精度はいろはよりも劣り、シュート力も低め。
そこで俺は一人の女の子に目を付けた。
彼女の名前は日高あやめ。5年生。その子のシュートフォームが凄く綺麗だった。
そこで俺はあやめに45度からのシュートを打ちこませていた。
「そうそう。指先だけでボールを弾くように。」
「こう・・・ですか?」
「うん、上手だ。」
あやめのシュートセンスはかなり高かった。最初からワンハンドシュートを打てていたから教えるのも容易だった。
あやめの指導をしていると突然シャツの裾を何者かに引っ張られた。
「お兄ちゃん!未有の相手もしなさい!」
放っておいても上手な未有を見ているのは効率的ではないが、この子は適度に相手しなければ面倒なことになるのだ。
小さい頃から顔見知りの未有は、俺を「お兄ちゃん」と呼ぶ。
ある日頭の後ろで髪を大きなリボン結んできたときに「似合ってるね」と言って以来、毎日リボンをつけているらしい。
「わかったわかった。じゃあいろはと2-1やるか」
「えぇぇ!?未有といろはだけずるいですよ!?依怙贔屓ですか!?」
ずるいといってきたのはセンターの久美だ。男勝りな性格の彼女はズバズバとものを言う。
「あーわかったよ!じゃあハーフの2-2な!」
「えぇぇ!?じゃあ未有お兄ちゃんと組む!異論は認めないんだから!」
こうなってくるとしちめんどくsじゃなくて収拾がつかなくなる。
後ろであやめが「うぅぅ・・・」とか言ってる。
小学生は最高だぜ!なんて歌があるが、あれは嘘だな。小学生は大変だぜ!が正解だ。
練習が終わり、解散をすれば俺の時間になる。18時から21時までの使用許可だ。
火曜日と金曜日はウエイトトレーニングに割くが、それ以外は一つのゴールをミニバスの高さから通常の高さに変えて、シュート練習といくつかの障害物を置いて技術を織り交ぜたドライブの練習等をする。外と違ってフロアーだとシューズのブレーキが効くからかなり違う。
フットワークの練習も、走り込みも体育館を使った方がよい。
「お兄ちゃん、また自主練?」
声をかけてきたのは普段着に着替えた未有だった。
「まぁね。未有はどした?」
「うん。未有も自主練。」
未有はよく居残ってシューティングをしていることがある。
そういう時俺はいつも走り込みをする。1500mを5分30秒目安で3セット。
5分30秒というタイムには実際意識していなかったが、ある日未有に指摘された。
「お兄ちゃんが走り込むときっていつも5分30秒くらいだよね」
自分では気づいていなかったが、適度なスピードよりも少しきつめにしている1500mのタイムがたまたま5分30秒だった。それからは意識するようになった。
3分のインターバルを入れて3セット終わる頃には未有のシューティングも終わるのだ。
そして未有はたまに俺のシューティングのパス出しもしてくれる。
コーチしてくれるお礼らしい。
夜の自主練は未有が付き合ってくれるが、早朝の自主練にはいろはがたまにやってくる。いろはが来ると走り込みができず、シューティングで終わってしまうため、最近は朝4時に開始して外で走り込んでから体育館に入るようになった。
早朝は朝5時~7時までの使用許可が出ている。7時からはバスケ部が使うからその時間前には切り上げる。
コーチに就任してから2週間が経った。
顧問の先生・・・芹沢麻美(せりざわあさみ)先生が練習試合の申し込みを受けたらしく、相手校を体育館に迎えていた。
相手校は前大会のシード校の私立景愛小学校。そこそこ強いらしい。
硯谷バスケ部コーチ就任以後、初めての試合である。麻美先生から采配を任されてしまった・・・。
「よし、みんな集合!」
「「「はい!!」」」
集合といった瞬間、素早く集まってくる。本当によく訓練されている。野火止先生って結構ハード??
「今日は練習試合だ。みんな、勝ちにこだわらず楽しんでおいで!」
「え!?勝つに決まってるでしょ!」
「・・・・」
即答してきたのはエースの未有。さすがは強豪校のエースといったところだ・・・・でも・・・・
「・・・勝たなきゃ楽しくないもんな!まぁいいや。どんどんメンバー変えてまわしていくからね!」
「「「はい!!」」」
勝ちにこだわるバスケ・・・確かに勝つことは大事だし、強豪校としてのプライドもあるだろう。でもバスケって勝つだけがバスケじゃない・・・そういうのを指導してこなかったのだろうか?どうしてそうなってしまうのだろうか?
スタメンはレギュラーを出した。
ポイントガード・白川いろは
シューティングガード・甲本みすず
スモールフォワード・藍田未有
パワーフォワード・矢作蘭
センター・塚田久美
作戦はハーフコートのゾーン。
ここで試したいことがあった。あやめだ。この先必ず必要になる存在だった。みすずにもシューターとしての意識を持たせて練習させていたが、やはりシュートセンスはあやめのほうが高い。未だ5年生ながらここまで開花していると試したくなってしまう。
「あやめ、身体あっためておけよ。」
「は、はひぃい」
だめだ、緊張しすぎている。
試合開始の笛が鳴った。相手校のボールになり、一気にゴールを決めてきた。さすがシード校だ。
悔しそうな声を上げて未有がボールを拾っている。
いろはにパスを出して全員が上がる。
「一本とってくよー!」
いつも能天気ないろはだが、試合になると人が変わったように冷静になる。さすが俺の妹だ。
硯谷の魅力は軽快なパス回しだ。久美を起点にディフェンスを翻弄し、立て直しにいろはをつかうとみせかけて未有で一気に崩す。
未有のシュートフェイクにかかった相手のセンターのマークが外れた久美にボールが渡り、それを難なく決めた。
いい形だ・・・そう思った瞬間に景愛は速攻をかけてきた。
相手はラン&ガンだ。
シュートまで10秒強だ。しかしいろはは落ち着いている。ペースを乱されていない。さすが俺のいもうt
「未有!」
「よっしゃーー!」
受けて立ってやがる。だめでしょ・・・様子見しなさいよ・・・
一気にゴールまで攻め込む未有だったが相手の戻りは早かった。
「未有!戻せ!!」
俺の声に反応した未有は我に返っていろはにボールを戻した。ふぅ・・・
「みすず!」
「おっけー!」
みすずはボールを貰うとすぐにシュートを打った。ちょっとはやすぎですよお嬢s・・・
パスッ
入っちゃったよこれ・・・みすずのロングは5割くらいだったはずだ。でもこれがきまったのは大きい。
「戻り早く!」
相手のリズムを止めないと話にならない。いろははちゃんと分かっている。さすがは俺の妹だ。
キャプテンでエースの未有をはじめ、司令塔であるポイントガードのいろはやセンターの塚田久美といった3本柱が要だ。
しかし一つ足りないものがあった。長距離砲である。
ディフェンスの要である矢作蘭(やはぎらん)はミドルレンジのシュートでも少し心許ない。いろはとツーガードとしても務まる甲本みすずも、キープ力は良いがパスの精度はいろはよりも劣り、シュート力も低め。
そこで俺は一人の女の子に目を付けた。
彼女の名前は日高あやめ。5年生。その子のシュートフォームが凄く綺麗だった。
そこで俺はあやめに45度からのシュートを打ちこませていた。
「そうそう。指先だけでボールを弾くように。」
「こう・・・ですか?」
「うん、上手だ。」
あやめのシュートセンスはかなり高かった。最初からワンハンドシュートを打てていたから教えるのも容易だった。
あやめの指導をしていると突然シャツの裾を何者かに引っ張られた。
「お兄ちゃん!未有の相手もしなさい!」
放っておいても上手な未有を見ているのは効率的ではないが、この子は適度に相手しなければ面倒なことになるのだ。
小さい頃から顔見知りの未有は、俺を「お兄ちゃん」と呼ぶ。
ある日頭の後ろで髪を大きなリボン結んできたときに「似合ってるね」と言って以来、毎日リボンをつけているらしい。
「わかったわかった。じゃあいろはと2-1やるか」
「えぇぇ!?未有といろはだけずるいですよ!?依怙贔屓ですか!?」
ずるいといってきたのはセンターの久美だ。男勝りな性格の彼女はズバズバとものを言う。
「あーわかったよ!じゃあハーフの2-2な!」
「えぇぇ!?じゃあ未有お兄ちゃんと組む!異論は認めないんだから!」
こうなってくるとしちめんどくsじゃなくて収拾がつかなくなる。
後ろであやめが「うぅぅ・・・」とか言ってる。
小学生は最高だぜ!なんて歌があるが、あれは嘘だな。小学生は大変だぜ!が正解だ。
練習が終わり、解散をすれば俺の時間になる。18時から21時までの使用許可だ。
火曜日と金曜日はウエイトトレーニングに割くが、それ以外は一つのゴールをミニバスの高さから通常の高さに変えて、シュート練習といくつかの障害物を置いて技術を織り交ぜたドライブの練習等をする。外と違ってフロアーだとシューズのブレーキが効くからかなり違う。
フットワークの練習も、走り込みも体育館を使った方がよい。
「お兄ちゃん、また自主練?」
声をかけてきたのは普段着に着替えた未有だった。
「まぁね。未有はどした?」
「うん。未有も自主練。」
未有はよく居残ってシューティングをしていることがある。
そういう時俺はいつも走り込みをする。1500mを5分30秒目安で3セット。
5分30秒というタイムには実際意識していなかったが、ある日未有に指摘された。
「お兄ちゃんが走り込むときっていつも5分30秒くらいだよね」
自分では気づいていなかったが、適度なスピードよりも少しきつめにしている1500mのタイムがたまたま5分30秒だった。それからは意識するようになった。
3分のインターバルを入れて3セット終わる頃には未有のシューティングも終わるのだ。
そして未有はたまに俺のシューティングのパス出しもしてくれる。
コーチしてくれるお礼らしい。
夜の自主練は未有が付き合ってくれるが、早朝の自主練にはいろはがたまにやってくる。いろはが来ると走り込みができず、シューティングで終わってしまうため、最近は朝4時に開始して外で走り込んでから体育館に入るようになった。
早朝は朝5時~7時までの使用許可が出ている。7時からはバスケ部が使うからその時間前には切り上げる。
コーチに就任してから2週間が経った。
顧問の先生・・・芹沢麻美(せりざわあさみ)先生が練習試合の申し込みを受けたらしく、相手校を体育館に迎えていた。
相手校は前大会のシード校の私立景愛小学校。そこそこ強いらしい。
硯谷バスケ部コーチ就任以後、初めての試合である。麻美先生から采配を任されてしまった・・・。
「よし、みんな集合!」
「「「はい!!」」」
集合といった瞬間、素早く集まってくる。本当によく訓練されている。野火止先生って結構ハード??
「今日は練習試合だ。みんな、勝ちにこだわらず楽しんでおいで!」
「え!?勝つに決まってるでしょ!」
「・・・・」
即答してきたのはエースの未有。さすがは強豪校のエースといったところだ・・・・でも・・・・
「・・・勝たなきゃ楽しくないもんな!まぁいいや。どんどんメンバー変えてまわしていくからね!」
「「「はい!!」」」
勝ちにこだわるバスケ・・・確かに勝つことは大事だし、強豪校としてのプライドもあるだろう。でもバスケって勝つだけがバスケじゃない・・・そういうのを指導してこなかったのだろうか?どうしてそうなってしまうのだろうか?
スタメンはレギュラーを出した。
ポイントガード・白川いろは
シューティングガード・甲本みすず
スモールフォワード・藍田未有
パワーフォワード・矢作蘭
センター・塚田久美
作戦はハーフコートのゾーン。
ここで試したいことがあった。あやめだ。この先必ず必要になる存在だった。みすずにもシューターとしての意識を持たせて練習させていたが、やはりシュートセンスはあやめのほうが高い。未だ5年生ながらここまで開花していると試したくなってしまう。
「あやめ、身体あっためておけよ。」
「は、はひぃい」
だめだ、緊張しすぎている。
試合開始の笛が鳴った。相手校のボールになり、一気にゴールを決めてきた。さすがシード校だ。
悔しそうな声を上げて未有がボールを拾っている。
いろはにパスを出して全員が上がる。
「一本とってくよー!」
いつも能天気ないろはだが、試合になると人が変わったように冷静になる。さすが俺の妹だ。
硯谷の魅力は軽快なパス回しだ。久美を起点にディフェンスを翻弄し、立て直しにいろはをつかうとみせかけて未有で一気に崩す。
未有のシュートフェイクにかかった相手のセンターのマークが外れた久美にボールが渡り、それを難なく決めた。
いい形だ・・・そう思った瞬間に景愛は速攻をかけてきた。
相手はラン&ガンだ。
シュートまで10秒強だ。しかしいろはは落ち着いている。ペースを乱されていない。さすが俺のいもうt
「未有!」
「よっしゃーー!」
受けて立ってやがる。だめでしょ・・・様子見しなさいよ・・・
一気にゴールまで攻め込む未有だったが相手の戻りは早かった。
「未有!戻せ!!」
俺の声に反応した未有は我に返っていろはにボールを戻した。ふぅ・・・
「みすず!」
「おっけー!」
みすずはボールを貰うとすぐにシュートを打った。ちょっとはやすぎですよお嬢s・・・
パスッ
入っちゃったよこれ・・・みすずのロングは5割くらいだったはずだ。でもこれがきまったのは大きい。
「戻り早く!」
相手のリズムを止めないと話にならない。いろははちゃんと分かっている。さすがは俺の妹だ。
作品名:ロウきゅーぶ!~硯谷女学園サイド~1 作家名:れいもん