ロウきゅーぶ!~硯谷女学園サイド~1
硯谷の戻りが早くなったおかげで速攻は止まった。ここから様子見だ。
相手は見た感じ2センター。少し厄介かもしれない。久美の負担は大きくなるだろう。
そこは蘭の本領発揮だ。彼女のディフェンスはかなりプレッシャーだ。
攻めあぐねた景愛は未有のパスカットで攻撃を終えた。未有はそのまま速攻をかけて一人で決めた。
そして速攻を止める。いいリズムだ。
第1Qが終わり12対8で硯谷のリード。未有と久美の得点力は高い。
「みんな、いいリズムだったぞ!」
「へっへーん」
「よし、次はみすずとあやめ交代。蘭と百江が交代な。」
橘百江ドライブの切れがいい子だ。シュートの精度は高くないが、相手をオフェンスで翻弄できる。
「あと未有、つぎのクウォーターは体力温存な!」
「えぇ~~!?・・・あ、お兄ちゃん・・・アレやるの?」
「ああ。アレだ。」
「ふっふっふーそれならおっけい!」
第3あたりからアイソレーションを試したい。未有はそれを察していた。
俺は未有のエースたる姿を見たかった。
「いろは、お前もロングどんどん打っていいぞ?」
「うん!」
いろははここまで一本もシュートを打っていない。彼女は俺に影響されてか、元々フォワードだった。しかし未有の実力とその性格を考慮して自ら司令塔として活躍する役を買ってでた。だから元々いろはのシュート技術は高い。しかし司令塔はその役割からパス回しや状況判断に神経を使うため、シュートを打つ機会が少なくなってしまう。
しかしやはり花形はシュートを決める人だ。第1Qではいろはにロングはないと印象付けられた。そこを突く。
「よし、いっておいで!」
「「「「硯谷ーーー!ファイ!!おーーー!!!」」」
第2Qは序盤、あやめが緊張の為か少し堅かったが、その緊張もすぐに解れ、いろはとあやめのロングシュートがサクサクと入った。
その攻撃に対して景愛もマンツーで応戦。そこからは久美の無双となった。
未有も適度にフォローに入って前半終了で20対14となった。
第3Qからはメンバーを戻し、アイソレーションで未有無双である。
彼女の技術はすごかった。滞空時間の長いジャンプからのダブルクラッチやバックハンドシュート、フックシュートまで見せていた。
景愛はトランジションが止められ、硯谷のディレイドでリズムを崩され、終始主導権は硯谷が握った。
終わって見れば44対26・・・圧勝である。
得点の半分を未有が決めていた。エース強し。
「ふふっふーーお兄ちゃん!ご褒美は?」
「先生がジュース奢ってくれるらしいぜ?」
「えぇぇ~~!?」
ご褒美をねだる未有はさておき、みんなよく頑張ってくれた。硯谷は本当に強豪なんだなと実感できた。
もしかしたら相手は出しきっていないように見えたが、こっちも実際出しきっていない・・・はずだ。うん。
~~~~~~~~~
その日は何故か俺の家で焼き肉パーティーが開催されていた。
どうしてこうなった・・・
「お兄!あーーん!」
「あっちぃ!!!あちぃって!いろは!」
「ふぇ!?ごっめ~~ん!」
隣に座るいろはが焼き立ての肉を無理やり口に付けたおかげで大惨事である。
今回来ているのはレギュラーメンバーに加えて麻美先生と百江とあやめだ。
押しかけてきてしまったため、今日の自主練は中止になってしまう・・・。
「まぁたまにはいいじゃん!」
気楽に言う未有の笑顔に負けてしまいそうになる。でもシューティングだけはやっておきたいものだ。
「それで白川さんは彼女いるんですか?」
なんてことを聞いてくるんだこの子達は・・・
「隠してない~?お兄~?」
隠してませんよ妹に隠しごとできませんよ。
「ほんとかなぁ~?」
もうこいつらさっさと帰ってくれないかな・・・
「よし!今夜はここに泊る!」
なにいってらっしゃるんですか未有さん・・・
「あたしもーー!」
「じゃ、じゃあ私も!」
おいおいおいおい・・・・・・
こうして俺の自主練が中止になって長い夜が始まったのである・・・
作品名:ロウきゅーぶ!~硯谷女学園サイド~1 作家名:れいもん