なにも聞こえない2
図書室につくと、もうカギが開いていた。
「あれ?誰か当番間違えたのかな?」
「違いますよ」
ビクッ
まあ、開いてるんだから、誰かいるとは思ったけど…
「誠くん…もしかして、開けてくれたの?」
「はい、先輩が遅いので」
「ごめん、すぐ開けられなくて…」
「別に、僕は困ってません」
「でも、図書室に用事があったんだろう?」
「いえ、ありません」
「…前から思ってたんだけど、毎回、なんのために来てるの?」
「…」
「言いたくないと?」
「…知りたかったから」
「え?」
「…」
誠くんは俺を無視して、いつもの場所についた。
俺も、図書委員として、仕事を始めた。
図書室には二人しかいなくて、会話もしなかったから
俺の作業してる音だけが聞こえていた。
完全下校の時間になったので、俺は片づけを始めた。
「さ、帰りましょうか」
「ごめん、今日はちょっとよりたい所があって…」
美穂との会話を思い出し、なんとなく
一緒に帰るのをやめようと思った。
「じゃあ、僕も一緒に行きます」
「それは…無理なんだ」
「なんでですか」
「…彼女の家に行くんだ」
とっさに思いついたが、ほんとに行こうかなと思った。
「…わかりました。今日は一人で帰ります」
無表情の中にも、少しだけ寂しさが感じられた。
そして自分も、美穂の家に行くまでの道を
一人で行くのが寂しく感じた。
街の明かりのおかげで道は明るいが、
一人で歩く道は、なんとなく暗い感じがした。
おかしいな…。いつも一人で歩いていたのに…
美穂の家についたが、しばらくインターホンを押さなかった。
2END