G Generation Guardian
「ハァ…、やれやれですね。」
「…ここは…?」
ハヤトは少々の痛みを伴いながらも目を覚ます。身体の上には毛布がかけられ、かつてのアカデミーの保健室を想起させる薬品の匂いが嗅覚を刺激した。
「…ここは艦の医務室です。先程は失礼しました。…男の人が訪ねて来ることはあまりありませんでしたから…。」
ハヤトの声に応えたのはノエルであった。彼女はハヤトが横たわるベッドの横の席に座していた。当然、衣服は着用している。
「いや、大丈夫ですよ。俺の方こそすいません。」
意識がはっきりとし、身体を起こしたハヤトは謝罪するノエルに対し謝罪を重ねた。やはり衝動に任せて行動を起こすべきではないと心の中で反省をした。
「何か、私に急ぎの用でもあったのですか?」
「ちゃんとお礼を言おうと思ったんです。「助けてくれてありがとう」って。」
ハヤトはノエルの眼を見て、真っ直ぐにそう伝えた。しかし、ノエルは喜ぶどころか俯いて曇った表情を露にする。
「でも…貴方の仲間や、友達を救う事は出来ませんでした…。もう少し早く駆けつけていれば、間に合ったのかもしれない…」
「でも、貴女が来てくれなかったら、俺もこうして話をすることも出来ませんでした。折角皆が力を託してくれたのに、何も成せないまま俺は死んでいくだけでした。だから貴女やフォックスさんが助けに来てくれて、本当に感謝してるんです!…だから今度は俺に貴女達を助けさせて下さい!!…今のままじゃ足手まといになるかもしれないけど、直ぐに追いついて見せますから!!」
ハヤトはノエルの手を取り、力の籠った声でそう言い放った。彼女は無論、驚愕した表情を見せた。そして同時に、彼女自身が感じていた罪悪感が和らいだのだ。「私は人を助ける事が出来た」と実感した瞬間でもあったからだ。
「…分かりました。あの…」
「ハヤト・イシザキです。ハヤトでいいですよ。」
「…了解です、ハヤト。私もノエルで構いません。…でも、そろそろ手を放して貰えますか?」
「…あっ、ごめんなさい!つい力が入っちゃって…」
ハヤトは急ぎ自分の手をノエルから放す。衝動に任せてはいけないと反省した直後であるのに駄目ではないかと再び自分を戒めた。
「構いませんよ。不束者ですが、宜しくお願い致します。」
そう言った彼女は柔らかな笑顔を見せていた。その貌は一輪の桜の花の様に美しく、晴れやかであり、そして儚くもあった。ハヤトには、その貌が愛おしく思えてならなかった。
しかし少年はやがて知るであろう。この無垢な笑顔の裏にある少女の過去を。そして、彼が経験したこの凄惨な出来事でさえ、この物語の中では只の序章であるという事を。
この戦いへと続く道を、少年は、少女はどの様に歩むのか。
――――――それは、神のみぞ知る事である。
第三話・完
作品名:G Generation Guardian 作家名:かめわん