島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)4
二人は家族寮に戻って来てソファーに座りコーヒーを飲んでいた。
「結婚式の準備、ってこんなにトントンで話進めるの?」
進は前回ノータッチ。全く分からない。
「そんな事ないわ。前回はまず式場幾つかピックアップしてもらって…で、
足を運んで場所決めて…呼ぶ人が全員入る式場選ぶのが結構大変だったの。
で、場所が決まったら料理を選んで席順を決めて…で、私のドレスをあの時
は両親と選びに行ったわ。それから司会を頼む人と打ち合わせしたり
スピーチ頼む人に会いに行ったり…手間だけど一つ一つ別々の日に、って
感じだったわ。」
ユキが当時を思い出す。進に親戚がいないのでユキの方も親戚の来賓は控えてもらい両親のみ、で行う予定だった。
「イスカンダルに行った人たちだけより…今の方が人が増えて大変かもね。」
太陽制御の時下した女性陣も呼ぶ予定だ。
「香山さん…あの後一度少しお話した位で…あんなにお世話になったのに…」
ユキが申し訳なさそうに言うと
「そうだな…あの時はもう、ダメだと思ったよ。懲戒免職かな、って正直
思ってた。ユキも大変だったしな…あの時ユキはWでダメージ受けて…
Wじゃないな…その後の噂もすごかったし…それなのにユキを置いて
ガルマンガミラスへ向かわないといけなかったから…心配でしょうが
なかったよ。」
ため息をついた進が“そう言えば”と言って少し厳しい顔をしてユキを見た。
「真田さんから聞いたよ。」
ユキは一瞬何のことかわからず“ん?”と言う顔をしたが思い出したらしくハッとしてバツ悪そうな顔をした。
「俺の帰る場所を作って待ってる、って言ってて…それなのに…」
進がそう言うとユキの瞳に涙が瞬く間に溜まる。ヤマトが自動操縦で戻って来た時、ユキは進が死んだと思い進のコスモガンを抜いて自殺を図ろうとした時の事を言っているのだ。
「だって噂に耐えてて…早く帰って来てって思ってたのに…突然音信不通に
なったまま…帰って来たと思ったら………古代くんが死んじゃったら私
もう、生きて行けない、って思ったの…。音信不通の間ずっと“こんな事に
なるなら付いて行けばよかった”ってそればかり思っていたわ。」
ユキの瞳からポロポロ涙が落ちる。
「もう…ひとりで耐えられない、って思ったの…。」
進は自分で言い出したのにこう泣かれてしまっては強く出られない。だけど…
「俺は…俺の仕事は絶対安全、と言えない仕事だ。だから万一、と言う
事もあることはユキも理解してると思う。だけど…例え肉体をなくしても
魂はユキのところへ帰るから…絶対後を追うような事はしないでくれ…
頼む。必ず…ユキの所へ帰るから…」
進はそう言ってユキを強く抱きしめた。
進とユキの結婚式の予定は南部から相原を通じ、翌日一斉メールで知らされた。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)4 作家名:kei