島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)4
「まぁ…無難な路線は止めようと思い少し人と違うドレスを持ってきました。
なんせ何を着てもお似合いでしょうから…だったら…こんな感じで…。」
悠輝が取り出したのは深い緑のカクテルドレス。友布で作られた大きなバラがふんわりしたドレスにちりばめられ光沢のあるサテンで落ち着いているが華やかなイメージになる。トップはビスチェタイプになっている。
「これ、オーガンジーのショールでもいいんですが…ラビットで作った
ショールの方が…上品でしょう?このラビットの毛は実家の倉庫を整理
してる時に出て来まして…モノがよかったのでこのドレスに合わせて
染めたんですよ。」
ラビットのショールも深い緑で染められていた。ユキもそのドレスに見入っている。
「ユキさん、ちょっと向こうで着替えてきてくださいよ。俺ら次の物色して
待っていますから。」
南部が次から次へと衣装ケースのフタを開けドレスをボンボン出す。
「…ちょっと…失礼します。」
遠慮がちにそのドレスを受け取るとユキはフィッティングルームへ向かった。
「南部、いいのか?須藤さんも…」(進)
「いいんですが…古代さん、ひとつ…お願いしてもいいですか?」
悠輝が南部と顔を合わせた。
「結婚式の写真を…叔父さんのホテルの写真館に飾らせてもらえませんか?」
悠輝が済まなさそうに言う。
「ホテルの結婚式の打ち合わせのロビーと写真館のコーナー。まぁ宣伝、だな。
悠輝のドレスもうちの貸衣装コーナーに数点置いてるからその宣伝も兼ねて。
本番はタキシードじゃなくて士官服でやるけど宣伝用はタキシードで
撮影するからお前とユキさん、って気付かないだろ。普通にモデルさんだと
思うはず…。」
南部が説明する。
「宣伝費、って訳なじゃいけど…衣装代、写真代はサービスするよ。」
結婚式のドレスは借りるだけで十万単位の金額がかかる。
「それ、ちょっとユキに相談してから…じゃマズイ?」(進)
「う~ん、実はさその写真普通に撮るとモデル頼むだろ?モデル代が結構
バカにならないんだ。」(南部)
要はギブ&テイクだ。……そこへユキが着替えが済んで出てきた。
「どうかしら…。」
歩きにくそうにフィッティングルームを出てきたユキにそのドレスはピッタリだった。
「やっぱりお似合いですね。ちょっと失礼…」
悠輝はユキの後ろに回り
「髪の毛…ちょっといじらせてください。」
と言って持っていたゴムで軽くUPにした。すると首が長く見えてデコルテがきれいに見える。
「あ、やっぱりいいです。じゃぁショールを羽織ってみましょう。」
悠輝がショールを掛けて前のところをサテンのリボンで止めた。
「やっぱり落ち着きますね。まぁこれも候補、という事で…次は…。」
ユキは着せ替え人形のように次から次へとドレスを試着した。
「ふぅ…」
何とかドレスも決まり南部の実家で夕食までごちそうになっていたふたり。そこへユキの母から電話が入った。
<ユキ?さっき南部ホテルの方がいらしたからドレス渡しておいたわ。
後で確認してね。それと来週の土曜、私達はどうしたらいいのか判ったら
連絡ちょうだいね。>
「えぇ…ありがとう。」
短くそう答えると電話は切れた。
「作って3年も経ってるから少しくすんじゃってるかもしれないわ。」
ユキがそう言って笑った。
「大丈夫ですよ、南部ホテルの提携してるクリーニング屋に持って行きます
からきっと元通りになって帰ってきますよ。」
南部が時計を見て
「今日…引き取りで、出来上がりが3日後…来週の火曜日、先撮りしましょう。
先に写真だけ撮れば当日はゆっくりできますし…花嫁さんはだいたい涙で
お化粧崩れちゃいますから当日は避けた方がいいですよ。」
南部の提案をふたりは素直に飲む事にした。
「何もわからないので…すすめられるままにお願いします。」
ユキは深く頭を下げた。夕食をごちそうになった後は花屋さんがやってきてブーケの打ち合わせをしてふたりは南部家を辞した。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)4 作家名:kei