島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結篇の後)5
式が終わり少しの間歓談の時間になった。
「お招きいただきありがとうございます。」
島と加藤と山本の家族が二人の所へ来た。
「すみません、お呼びしていいのか迷いましたが…」
進が申し訳なさそうに言うと
「もし、連絡が無かったら一生、恨みますよ。」
山本の母が山本によく似た整った顔で涙を流しながら言った。
「なんだか…息子がホッとしてる姿が見えたような気がして…本当に今まで
大変でしたものね…今回の戦いも…こうして地上で式を挙げられて……
これ以上の喜びはないわ。四郎がいつも話してくれます。とても良くして
くれる、って。早く結婚しないと兄貴もイライラしてるだろう、って。」
加藤の母も目頭を押さえている。
「お姉ちゃん、おめでとう。古代の兄ちゃんもおめでとう。お姉ちゃんすごい
キレイ。僕もお姉ちゃんみたいな人と結婚したいなぁ。」
次郎が嬉しそうに言うのを島の両親が笑顔で頷ずく。
「よかったよ、古代くん。これからが始まりだね。大介の分も幸せになって
もらわないと…。」
島の父が言う。
「そうだ、明の分もな。」(山本の父)
「兄貴の分も!」(加藤四郎)
進たちのところに相原がやってきた。
「あ…(相原を前に出して)コイツも予備生から一緒だった相原です。」
進が紹介すると加藤の母と山本の両親が頭を下げて自己紹介した。
「そうですか…よく話は聞いていました。明の父と母です。そうですか…
ヤマトで一緒、とは聞いてましたが…。これからもがんばってくださいね。」
「四郎から話を聞いたことがあります。どうぞこれからもよろしくお願い
します。」
進とユキはひとりひとり、レリーフに結婚の報告をした。懐かしい顔を見ては涙が浮かぶ。
そして最後のレリーフに挨拶が終わった時、声を掛けられた。
「おめでとうございます。」
ふたりが振り返るとそこに真っ赤な目をした香山が他の女性乗組員と立っていた。
「香山さん…ありがとう…皆様も…わざわざ…嬉しいわ。時々軍でお顔は
拝見するけど…。」(ユキ)
「森さんが忙しくてお話しできないんですよ。」
香山が代表して“せぇの”と言った後女性乗組員全員で
「ご両人、ご結婚おめでとうございます!」
と言ってライスシャワーを浴びせた。ふたりは何が起きたかと思ったが突然のお祝いに笑顔で返した。
「あの時、うわさで婚約中、って言ってたけど全然そんなそぶりもなくて
“本当?ってウソじゃないの?本命は島副長、真田副長?それとも一生
苦労しなさそうな南部さん?”って言われてたんですよ。」
香山が当時の暴露話をする。ユキは驚いて“そうなの?”と返す。
「よほど島副長の方が優しそうで…真田副長は強面だけど森さんにだけは
いつも笑顔だったし…」
技術班の女性が答える。
「私達には絶対笑わなかったんですよ!」
と言う女性もいた。
「そうかしら?」
ユキが顎に人差し指を当てて考えていると
「しょうがないだろ?真田さんにとってユキは特別なんだから。」
と進が言った。進の特別、と言う言葉に女性は反応する。
「ひどい、森さん!古代艦長だけじゃ足らないんですか?」
「古代くん、その言い方は誤解を招くわ!」
ユキが叱るように言うと進が少し小さくなって“え…でも…”と言ったから周りはクスクス笑う。
「ホント、生活班長の方が強いって伝説は本当だわ。」
それがユキの耳に聞こえて
「コラ、そこ、聞こえてますよぉ。」
英雄の丘は笑顔と幸せがいっぱいだった。
「長官、今日はありがとうございます。披露宴で挨拶していただきますので
よろしくお願いします。」
進とユキは藤堂を探して声を掛け藤堂の妻にも“ご無沙汰しております”と声を掛けた。
「あぁ…そんなのお安い御用だ。ユキの為なら…なぁ。」
藤堂は上司としてではなく孫娘を見る眼になっている。
「そうですよね?晶子よりユキさんのお話出ますもの。本当におめでとう。
「ありがとうございます。」
ふたり頭を下げる。
「沖田に…この姿を見せてやりたかった。」
藤堂が沖田の像を見上げると進とユキも一緒に見上げた。
「きっと…どこかで見ていてくれていると思います。」
ユキの涙がほほを伝った。
しばらくするとシャトルバスがやって来て来賓を運び始めた。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結篇の後)5 作家名:kei