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【腐】 愚問 【亜種】

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夜明け近く、暗闇に沈んだ部屋の中。アカイトは音もなくベッドに近づいた。沢山の縫いぐるみに囲まれた少女が、穏やかな寝息をたてている。
彼女を起こさないよう、静かに布団の端をめくって、細い腕に光る「時計」に触れた。

『これは首輪かもしれないけれど、私に安全で豊かな暮らしを与えてくれた。今更外せない』

緩く握られた手の中に、端末を滑り込ませる。カイトから与えられた時間と、自分が貯めた時間を全て。

「・・・・・・もう一つ、首輪をあげるよ。どちらを選ぶかは、自由だ」

いつかあいつがマスターに飽きたとしても、永遠に近い時間は、少女の望んだ「豊かな生活」を保証してくれるだろう。

「さようなら、マスター」

もう二度と、会うことはないだろう。アカイトは眠る少女に背を向けると、姿を消した。



高層ビルの上から、夜景を眺めるアカイト。
まるで暗闇を恐れるかのように、明かりが絶えることはない。それは豊かさの象徴なのだろうかとぼんやり考えていたら、背後から抱き締められた。

「何だよ」
「残り時間は?」

耳元でカイトの囁く声がする。

「まだある」

ぐいっと向きを変えられ、口付けされそうになったので、

「今度は本当にあるって。無駄な時間は持たない主義だ」
「私と過ごす時間は無駄か?」

その言葉に、アカイトはまじまじとカイトを見た。鮮やかな青い髪、端整な顔立ち。吸い込まれそうな瞳。

「・・・・・・はっ」

アカイトは息を吐くように笑いを漏らすと、黙って唇を押し当てた。




終わり
作品名:【腐】 愚問 【亜種】 作家名:シャオ