島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)9
<天使1>
「まだ…3週間だって。紫先生が無理する親だから早めに自分がいる、って
主張したかったのかも、って言ってたぞ?」
進がユキの手を握る。
「安定期まではとにかく普段の生活も大事にするように、って言ってた。」
ユキは頷く。
「すげぇなぁ…ここに赤ん坊がいるんだ…。男の子かなぁ?女の子かなぁ?
名前どうしようか?」
進はユキのお腹のあたりを布団の上から撫でる。
「やだ、古代くん、まだ小指の爪の先、ぐらいの大きさよ?早すぎるわ!」
そう言いながらもユキは堪えきれず涙が溢れてきた。
「あ…。」
ユキは両親に報告しなくちゃ、と思って携帯を取り出そうカバンを探す。
「ヒロシマには連絡しちゃった。…ゴメン、倒れた時一応連絡しなくちゃ
って思ったから…まさか妊娠で貧血で倒れた、なんて思わんかったから
それから変な心配させるなら言っちゃった方がいいかな、って思ってさ。
余計な事、だったかな。」
ユキは進が母を苦手に思っている事を知っている。母も進に容赦なく攻撃(口撃)するから…多分いろんなことを聞かれただろう。
「大変だったでしょう?ママ…」(ユキ)
「うん、まぁね。でもおめでとう、って言ってたよ。」
進の言葉に新たな涙がユキのほほを伝う。
「大事に育てよう。強く、優し子に…。」
ユキは心の奥で“古代くんの様に”と付け加えた。
「島…」
進は入院に必要なもとを取りに行く、と言ってユキの病室を出て自宅に戻る前に英雄の丘に来た。芝生が剥がされ新しいレリーフが並んでいる。その先頭に島のレリーフがあった。
「島…俺、父親になれるかな?」
そっと島のレリーフに触れる。
「俺さぁ…父さんに甘やかされた記憶しかないんだよな。」
10歳も離れた下の子…“子”言うより“孫”に近い感覚だろう。
「俺、いい父親になれるかな?」
{お前らしく生きていれば大丈夫だ}
進の頭の中で島の声が響いたような気がした。
(俺らしく…)
{真っ直ぐ…それが古代進だ}
進は青い空を見上げた。
ユキは時々出血があり流産の危険が伴っていた。入院は一週間となっていたがその後はどうなるか分からない状態だった。ユキが入院してると聞いて長官夫妻を始めヤマトのクルーがどっと押し寄せた。妊娠の事は藤堂とメインクルー以外には知らされておらず体調不良で入院、という事にしていた。みんなへの報告は安定期に入ってから、という事になった。
「どうしてみんな私が入院してるの知ってるの?」
ユキが不思議がる。
「倒れた場所が食堂だからね。目立つだろ?しょうがないよ。」
ユキは進がお姫様抱っこをしたままダッシュで中央病院に運んだことを知らない。
進は仕事の途中でも病室に来てユキと一緒に食事をする。軍と中央病院は隣同士の建物。…時間がある時はふたりでいる事…それが二人の鉄則。
「今日は午前中に山崎さんの奥様がいらしてくれたの。で、おいしいスープを
作って来てくれたのよ。冷凍庫にあるから後で温めてくれる?」
ユキがお願いすると
「了解しました、お嬢様。」
進が立ち上がってお腹のあたりを撫でる。
「その“お嬢様”は私?それともこの子?」
ユキが聞くと
「両方。」
と進がミニキッチンから返事をした。
「まだどっちか分からないのに。」
ユキは進に聞こえない小さな声をお腹にかけた。
「まだ…3週間だって。紫先生が無理する親だから早めに自分がいる、って
主張したかったのかも、って言ってたぞ?」
進がユキの手を握る。
「安定期まではとにかく普段の生活も大事にするように、って言ってた。」
ユキは頷く。
「すげぇなぁ…ここに赤ん坊がいるんだ…。男の子かなぁ?女の子かなぁ?
名前どうしようか?」
進はユキのお腹のあたりを布団の上から撫でる。
「やだ、古代くん、まだ小指の爪の先、ぐらいの大きさよ?早すぎるわ!」
そう言いながらもユキは堪えきれず涙が溢れてきた。
「あ…。」
ユキは両親に報告しなくちゃ、と思って携帯を取り出そうカバンを探す。
「ヒロシマには連絡しちゃった。…ゴメン、倒れた時一応連絡しなくちゃ
って思ったから…まさか妊娠で貧血で倒れた、なんて思わんかったから
それから変な心配させるなら言っちゃった方がいいかな、って思ってさ。
余計な事、だったかな。」
ユキは進が母を苦手に思っている事を知っている。母も進に容赦なく攻撃(口撃)するから…多分いろんなことを聞かれただろう。
「大変だったでしょう?ママ…」(ユキ)
「うん、まぁね。でもおめでとう、って言ってたよ。」
進の言葉に新たな涙がユキのほほを伝う。
「大事に育てよう。強く、優し子に…。」
ユキは心の奥で“古代くんの様に”と付け加えた。
「島…」
進は入院に必要なもとを取りに行く、と言ってユキの病室を出て自宅に戻る前に英雄の丘に来た。芝生が剥がされ新しいレリーフが並んでいる。その先頭に島のレリーフがあった。
「島…俺、父親になれるかな?」
そっと島のレリーフに触れる。
「俺さぁ…父さんに甘やかされた記憶しかないんだよな。」
10歳も離れた下の子…“子”言うより“孫”に近い感覚だろう。
「俺、いい父親になれるかな?」
{お前らしく生きていれば大丈夫だ}
進の頭の中で島の声が響いたような気がした。
(俺らしく…)
{真っ直ぐ…それが古代進だ}
進は青い空を見上げた。
ユキは時々出血があり流産の危険が伴っていた。入院は一週間となっていたがその後はどうなるか分からない状態だった。ユキが入院してると聞いて長官夫妻を始めヤマトのクルーがどっと押し寄せた。妊娠の事は藤堂とメインクルー以外には知らされておらず体調不良で入院、という事にしていた。みんなへの報告は安定期に入ってから、という事になった。
「どうしてみんな私が入院してるの知ってるの?」
ユキが不思議がる。
「倒れた場所が食堂だからね。目立つだろ?しょうがないよ。」
ユキは進がお姫様抱っこをしたままダッシュで中央病院に運んだことを知らない。
進は仕事の途中でも病室に来てユキと一緒に食事をする。軍と中央病院は隣同士の建物。…時間がある時はふたりでいる事…それが二人の鉄則。
「今日は午前中に山崎さんの奥様がいらしてくれたの。で、おいしいスープを
作って来てくれたのよ。冷凍庫にあるから後で温めてくれる?」
ユキがお願いすると
「了解しました、お嬢様。」
進が立ち上がってお腹のあたりを撫でる。
「その“お嬢様”は私?それともこの子?」
ユキが聞くと
「両方。」
と進がミニキッチンから返事をした。
「まだどっちか分からないのに。」
ユキは進に聞こえない小さな声をお腹にかけた。
作品名:島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)9 作家名:kei