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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)9

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  「そのふたりに子供が出来た、となればこれ以上の明るいニュースはない
   だろう。キミ達にはいつまでたっても静かに暮らせない日々が続くかも
   しれないが地球の未来の事を思えばそれは喜ばしい事、なんだよ。実際…
   私もひ孫が出来たようなそんな感じだ。」

藤堂の眼に光るものがあった。

  「すまんな、ユキを頼む。」

進は敬礼して長官室を出た。




  「古代くん。」

長官室を出るとその隣の秘書室で心配そうに相原が立って待っていた。

  「いろいろありがとうな。相原が提案してくれたんだろう?」

進が笑顔で聞く。相原は無言で頷いた。

  「余計な事かもしれない、って思ったんだけどユキさんにはどうしても秘書
   として復帰してほしくって…。」(相原)
  「俺も…ユキから仕事を取り上げたくなくて…どうしたらいいか考えてた。
   助かったよ…これがどう世間に出るかわからないけどな。」

進は誰もが自分たちにいい方へ考えるとは思っていない。

  「さて…モリタ先生の所へ行って診断書を長官宛てに送るよう伝えなきゃ。
   ついでに…(時間を見て)ちょうどいいな、お昼行ってくるよ。」

進はそう言うと“じゃぁ”と右手をあげて長官の秘書室を出て行った。









  「ユキ?」

進は静かにユキの病室に入った。眠ってるのか静かだ。

  「ユキ?寝てるの?」

ベッドの方を見たがユキの姿がなかった。進が洗面所へ向かうと洗面所に座り込むユキの姿があった。

  「どうした?大丈夫か?」

進が抱え込むようにユキを抱き上げる。

  「力が入らなくて…トイレまでは行けたんだけど…。」

どうも吐くためにトイレに入ったがうがいをした後足腰が立たなくなってしまったようだ。

  「そうか…ベッドを洗面所のそばに移動してもらおうか。」

進は軽くなったユキの身体を少し強く抱きしめた。

  「古代くん…。」

ユキがそっと身体を寄せる。

  「なんだい?ゆき。」

冷たいからだ…少し冷えてしまったようだ。

  「温かい…少しの間だけ…こうしていて。」

ユキが珍しくお願い事をした。それもこんな小さな事………進はベッドの上の肌掛けを一枚手に取りユキを抱いたままソファーに座った。

  「上から掛ければもっと温かいだろう?」

手に持っていた肌掛けをそっとユキに掛ける。

  「温かい…古代くん…とっても温かい…。」(ユキ)
  「うん、ユキ、冷えちゃったね。一枚上着を着てトイレ行った方がいいよ。
   あのまま誰も来なかったら大変だからね。洗面所に一つイスを置いて
   おこう。ベッドから移動する途中で具合が悪くなったとき座れるように。
   直に座るより冷えないだろう?」

進がユキの頭をそっと撫でながら話す。ユキは黙って頷く。

  「ユキ、ちょっと話があるんだ。今後の話なんだけど…。」

進がぎゅっとユキを抱きしめる手に力を込める。

  「診断書を書いてもらって軍に提出する事にしたんだ。だからユキの妊娠も
   世間に出てしまうかもしれない。結婚式の時の様にマスコミが騒ぐかも
   しれない。本当なら安定期に入るまで、って思ってたけど…病気療養中
   って事にすれば軍に籍を置いていられる。」

進は一呼吸置いて
 
  「それでいいかな?」

とユキの顔を見て言った。

  「古代くん?それって…。」

ユキが不安げに進の顔を見上げる。

  「軍を辞めなくても出産まで休めるように、って長官から。ユキがいなくて
   困ってるみたいだ。相原がユキが復職できるよう調べてくれたんだよ。
   出産の後は育児休暇があるし。」

ユキはこのままだと仕事を辞めなくてはいけないのではないか、と言う不安をずっと抱えていた。

  「さっき、お母さんには連絡しておいた。ご迷惑かけてしまうかもしれま
   せん、ってね。」(進)
  「古代くん…。」

ユキのホッとした顔に進も笑う。

  「大丈夫だよ…長官が守ってくれる。相原もユキが戻って来ればまた宇宙に
   飛べる。一時の事だから甘えよう。」

進はそう言いながらユキの背中をそっと撫でる。ユキは温かいその手のぬくもりに安心したのかそのまま寝息を立て始めた。進はポケットから通信機を取り出すと早退する旨をメールで伝え幸せそうなユキの寝顔を見つめながらいつの間にか自分も寝てしまった。