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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)10

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<天使2>
それからしばらくしてユキの病気療養が認められた。医師の診断書を定期的に提出する事が義務付けられたが。するとどこからかユキの妊娠が漏れ出し2.3日するとマスコミから軍に電話がかかって来るようになった。軍も個人の事に関してなので特にコメントしないが噂話が好きな連中はどこにでもいる。知人を頼ってその情報を得たマスコミがニュースとして流し始めた。

  「相変わらず情報流出早いな。」

仕事を終えてユキの病室で一緒にテレビを観ながらくつろいでいる進。すでに10時を過ぎているのでニュースぐらいしかやっていない。

  “宇宙戦艦ヤマト艦長古代進さんとご結婚された古代ユキさんが妊娠されま
   した。(結婚式の映像が流れる)いやぁ、美しいですねぇ…。真っ青な
   空と海と…(先日の英雄の丘で来賓席でひっそりしているユキが映る)
   この時古代ユキさんはパンツスーツで秘書としての仕事はお休みされて
   います。体調不良で休暇を取ってらして代わりに相原通信士が秘書を勤め
   られていました。ひょっとしたらこの時、すでにお腹の中にお子さんが
   いらしたのかもしれませんね。いやぁ容姿端麗、才色兼備とこれ以上
   褒めようのない古代ユキさんともちろん文句のつけようのない古代艦長…
   先が楽しみですねぇ。”

キャスターが非常に饒舌に話す。

  “そうですね、たくさんの苦悩を乗り越えて結ばれた二人ですからそっと
   しておいてあげたい反面、その後が知りたい、と思ってしまいますね。
   いや、本当に素晴らし事です。今、二人を見習ってか若いカップルの結婚
   が増えています。ただ、なかなか子宝に恵まれず悩んでいるご夫婦もいま
   すので古代ユキさんの妊娠はその若いカップルに明るい希望を与えたと、
   思いますね。”

いつも辛口のコメンテーターもこの日ばかりはいい事を言っている。

  “まだ出産予定日などは発表されておりませんが無事ご出産される事を祈り
   ましょう。……さて、次のニュースです。この度…”

  「本当にニュースがないのね。」

繰り返し報道される自分の事にため息をつくユキ。ただここは世間と離れた世界だから自分の生活に余り変化はない。

  「そうだね。」(進)
  「古代くんは何か言われたりするの?」(ユキ)
  「ん?まぁ…おめでとう、とか…本当ですか?とか。」(進)
  「で、なんて答えるの?」(ユキ)
  「はい、って。」(進)
  「……それだけ?」(ユキ)
  「そう。」(進)
  「おめでとう、って言われて“ありがとう”ぐらいは言うでしょう?」(ユキ)
  「まぁね、それぐらいは。」

進はいろいろユキの事を聞かれるのが嫌いだった。普段何もなくてもいろいろあるのにここぞとばかりに聞いてくる輩もいる。

  「そうだ、今日の夕方、泉さんとバッタリ会ったんだ。」(進)
  「え?泉さん?お元気でらした?」

ユキの表情が明るくなる。

  「あぁ、噂は本当か?って聞いて来たよ。さすがに無下にしなかったぜ?
   “そうです”って言ったら心底“よかったなぁ、おめでとう!”って言って
   くれたよ。力いっぱい握手してくれてブンブン振り回された。周りの連中は
   驚いてたよ。今は復興支援に回ってるらしく他の基地に行く予定はないそ
   うだ。元気な赤ちゃん産んでくれよ、って言ってたよ。」(進)
  「そう…会いたいわ。」

空間騎兵隊の泉はユキが地球に残ってパルチザンとして一緒に戦った仲間だ。

  「病院にいる、って言ったから今度連れてくるよ。隊員も一緒に、って言って
   たけどユキもあれ以来だろ?ここだったら多少の人数は気にしないでいいし…
   つわりで辛い時期が終わったら声を掛けるよ。さすがに今のユキを見たら
   驚いちゃいそうだ。」(進)
  「…いいの?クルー以外なのに…。」(ユキ)
  「だって、ユキを守ってくれた仲間だろう?ユキにとって恩人なら俺から見ても
   恩人だよ。それに斉藤と繋がっている人だからな。斉藤がいなかったら俺は
   ここに存在していないだろうから。」

進の最後の一言があの激しい戦いを思い出させる。ユキは無言で頷いた。