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島を想う(宇宙戦艦ヤマト完結編の後)10

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  「お帰りなさい。」

ユキが進を迎え入れる。

  「ただいま。」

なんどこの言葉を繰り返しただろう。あの真っ暗闇にいた頃は“ただいま”と言う言葉すら口から出た事はなかった。

  「もう一回言って?」

玄関を上がる前に進はもう一度ユキにお願いした。ユキは何の事?と思ったがにっこり笑うと進に歩み寄り耳元で

  「お帰りなさい。」

そう言ってそのまま進のほほにキスをした。

  「ただいま。」

進はそのままユキの身体を抱きしめる。

  「古代くん…。」

ユキもそっと進の身体を包む。

  「明日からお義母さん達が来るからこうすることもできないからなぁ。」

産後とは思えないほっそりしたユキの身体を進がしっかり抱いて離さない。

  「ふふふ、そうね。」

少しずつ進は力を弱めてユキを解放した。

  「明日からゆっくり眠れないわね。」

ユキは嬉しそうに言う。

  「でも、搾乳して届ける事もしなくていいし消毒もしなくていい。病院で
   時々直接飲まさせてたけど本当にかわいいのよね。あ、こんな事玄関で
   話す事じゃないわ。ごはん、出来てるの。食べましょ?手を洗ってきて!」

進は“腹減ったな”と言いながら靴を脱ぐと洗面所へ向かった。




         パパとママの想い出



その想い出の艦は今はもうない。

   だけどその想いは忘れられるはずもなく

      進の心に留まり続けていく。

         進の一生の中で一番穏やかな時間が流れていた。














                   終