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ぼくのもの。じゃないのにね、

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岩鳶高校水泳部の面々は照り付ける陽射しの名残を受け、本日も自己鍛錬に勤しんでいる。
ただひとりを覗いては。
一方、ただひとりは常日頃を超える全力を以て。
「レイちゃんもそのうち言い出すの?『僕はフリーしか泳ぎません』って」
何度となく水の底に顔を沈めてはもがく怜の身体を引き上げた渚が、彼の口調を真似てみせる。
「……」
眉根を寄せた怜の見つめる先は、水と一体化したかのように自由に漂う遙の姿だった。
「……ブレは?」
ぽつりと呟いた渚は、怜の隣で水を掻く。
「ほらっ、レイちゃん。こうやってね、水を」
必死に説明を加えるけれど、怜の視線が此方に向けられる事はない。
もうずっとこの調子で、真琴も密かに気に掛けているのを渚は知っていた。
けれど彼が抱くものとは別の感情を胸に滞らせている事も、自覚している。
水を掻く腕の動きが、次第に大きくなっていく。
跳ねた飛沫が叩き付けられるように、怜の髪を頬を濡らしていった。
「責任とってって、言ったのに……」
次の瞬間訪れる静寂の中、ぽつりと零された渚の声が震える。
え? と怜が視線を戻した頃には、渚の両目からぽろぽろと滴が溢れ出しはじめていた。
「れーちゃんが、言ったのに……っ」
引き留めるより先、プールサイドまで泳いでいった渚が両手をアスファルトに置き、反動で浮かせた身体をそのまま走らせてしまった。
どうしたのだと訊ねてくる真琴や江、視線だけを送ってくる遙に「体調を崩されたみたいです。様子を見てきます」と断って後を追った。
靴も履かずにグラウンドを駆け抜けた渚の足は泥だらけだ。美しくない、と渚は呟き、また泪を零す。
「渚くん」