二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ぼくのもの。じゃないのにね、

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

後ろから掛けられた声に肩を弾ませ、逃げる方向を定めて再び駆け出した渚は、あっさりと追い付いた怜に手首を捕らえられてしまった。
「元陸上部の実力です」
そう言って前に回り込もうとしては、渚は身を翻してしまう。
焦れた末に反対側の手で肩を掴むと、挑むように上げられたその顔は新しい滴に濡れていた。
「……ブレ、教えてください」
伝染したかのように表情を歪めて告げる怜に、ふるふると首を振った渚が答える。
湿ったくちびると相対し、からからに乾いた喉から声を振り絞って。
「レイちゃんはレイちゃんの泳ぎをして欲しい。キレイだもん、レイちゃんのバッタ」
「でも、」
「ごめんなさい。レイちゃんは僕のものじゃないのに」
きゅ、と瞑った目からまた、溜まっていた水の粒が頬を伝った。
反射的に舌で拭った怜は、瞬時に頬をあかく染めた渚に瞠目する。
「れー、ちゃん?」
「……っ、渚くんが」
背伸びして覗き込んでくる渚から顔を背けた怜の耳は、負けじと紅潮している。
「遙先輩の泳ぎが綺麗だって言うから、僕も、と……」
瞬きを繰り返していた渚の目に、微笑みが浮かんだ。
両手を怜の頬に添えると、自分の姿が瞳に映るのを確かめてから告げる。
「僕、好きだよ。すごく好き」
「あ、えっ……?」
繰り返す毎に上昇を重ねていく怜の熱を、発展途上の幾分小さな手が辿っていく。
「ゴウちゃんみたいだよね。だってレイちゃんの身体、キレイなんだもん。仕方ないよね」
「な、渚くっ……あの、えっと、ですね、やっぱり僕にはどういう事だかさっぱりで」
「レイちゃんがさっき僕を泣かしたぶん、今度は僕がレイちゃんを泣かしてもいいでしょ? いいよね」
いつもはくりくりと大きな渚の目が眇められ、色めいた視線を注がれた怜は硬直してしまう。
「でもレイちゃんが風邪ひいちゃうのは嫌なんだー、だからあそこ! 行こうっ?」
早く怜ちゃんと気持ちいい事したい。
無邪気に言ってのける渚は、ひたすらに怜の心拍を落ち着きないものにさせていく。
乾き始めたカルキの匂いに、体内の熱からは考えられない程の冷たい汗が噴き出して、混ざった。
今も直立したままの怜の手を引く渚の中では、既に目的地は定められているようだ。
「あ、あそこって、何処ですか……」
振り返る渚は上気したうち、片頬を膨れさせ、くちびるに艶やかな水の余韻を残したままで見上げてくる。
怜は困惑していた。今まで失礼ながら可愛いと思う事はあっても、こんなにも乱暴で淫らで、美しいとは言い難い本能を呼び起こされた事などは、記憶の限り一度としてなかったからだ。
渚が何度も繰り返す『あそこ』も、気になって仕方がなかった。
寧ろ気になる事ばかりで、理論で上手く制御出来たらいいのに。
性衝動のようなものが右脳の大部分までもを支配していて、馬鹿になってしまいそうだ。
「ねー、れーちゃん……僕、もう無理かもっ……お願い、触って……っ? れーちゃんのも、触りたいんだ」
長々と思考に耽っていた怜は、切羽詰った様子の渚に手を引かれていく。
何処に、向かうのだろう。
冷えた渚の背中に、触れたい。彼よりは幾分大きな手のひらで温めてあげたい。
否、手のひらだけでは足りないかもしれない。腕で。
目許に触れた時の舌は、熱かった。
怜の脳内辞書は不慣れな言葉を検索し続けていて、オーバーヒート寸前である。

蝶は愛らしい花の蜜を、深く深く誰も見た事のない秘密の場所まで潜り込んで、吸い尽くす事が出来るだろうか。