ダンガンロンパ・ファンタジック/リロード-Chapt.1-1
「とりあえず、今は探索しても無駄みたいですね…」
と香が言うが、
「いや、無駄ではないと思うわ。
きっと、今は危険区域に指定されていないデパートとかそういうところに、危険なものがたくさんあると思うの。
それを確保して管理しておくだけでも、違うと思うわ」
霊がそれを否定した。
転ばぬ先の杖、と言うやつである。
「あーそうか、なるほどー」
香はそのことに納得した。探索の意味はあるようだ。
「昨日見たんだけど、デパートの6階の薬売り場にはいい薬もいっぱいあったけど、危険な薬もたくさんあったの。
今日は…私はそれを隔離してくるついでにいい薬を全て保健室に持っていくことにするわ」
そして、有言実行とばかりに真っ先に動き出したのは霊だった。
「あ、私も手伝います!
一人より二人の方がきっとはかどりますし!」
「私も…霊さん、手伝う」
その霊に、香とイティアがついて行った。
「そうね…3人なら、互いに監視することもできるし、丁度いいかもね」
そしてそう言って付いてくる香とイティアに合わせて、霊は歩いて行く。
その他の13人も、暫くして解散していった。
霊、イティアとガールズトークに興じながら、デパートの6階にやってきた。
早速、霊が薬を分配し始める。
「香、イティア?今のうちに、容器を持ってきてくれないかしら。
一つは鍵が付くものだといいわ」
「ああ、そうですね。
容器なら、4階の防犯グッズ売り場にケースみたいなのがありましたね」
この「キボウ」という名前のデパートは全6階+屋上の構成で、
1階…食品売り場
2階…衣服・装飾品売り場(ブランド物の服まで何でもそろっている)
3階…文具・玩具売り場
4階…催事場1。防犯グッズ売り場となっている
5階…催事場2。武器等が無造作に置かれている
6階…ドラッグストア相当の薬売り場。←いま香達がいるのはここ
屋上…屋上の遊び場。
と言った構造になっている。
このデパートにはエレベーターがあるのだが、屋上にはエレベーターでは上れず、階段かエスカレーターを用いる必要がある。
6階から4階くらいなら階段でも往復が楽なので、
香とイティアはささっと4階に下り、
「このケース、大きめだし鍵もあります。よさそうですね。これにしましょう」
パッと見で頑丈そうなジュラルミンケースを香が選び、清算所で電子生徒手帳を使い購入。
「安全な薬……プラスチック製の方が、いい。これにしよう」
イティアは頑丈ではないが、中身が判るプラスチック製のケースを選んで香にならった。
「そうですね。あくまで危険な薬を、この鍵付きジュラルミンケースに入れることにしましょう」
そう香がいい、イティアが頷きながら6階に戻る。
「結構あるわね…ってかベゲタミンA、ベゲタミンBとか5MeO-DMTまである…うわあ」
霊がごそごそと、薬をあさっていた。
そしてイティアが頑丈な危険な薬を入れるケース、香がプラスチック製の安全な薬を入れるケースを持ってくる。
霊がわけた薬を詰めると、危険な薬のほうは大分埋まったのに対して、安全な薬の方はまだまだ余裕があるような感じであった。
「ベゲタミンAとかベゲタミンBとか、5MeO-DMTってなんですか?」
「ベゲタミンAは『飲む拘束着』とまで言われるほどの超強力な睡眠薬でBがそれよりちょっとマシなやつ、5MeO-DMTは気体を吸うと丸半日はおねんね確定の強力な睡眠薬よ」
「ひ、ひぃ!?」
聞くのを後悔するくらいには……全部超がつくほど危険だった。
「これらはまあ隔離しておけば大丈夫よ、これらは加熱しないと気体にならない固体薬品とかただの服用剤だから」
しかし霊からそういう補足を受け、
「な、なるほど…」
ちょっとホッとしてからその5MeO-DMTとかをイティアに渡す香。
「って…ひぃ…これはヤバいわね」
と、ここで霊の顔色が変わる。あからさまにヤバそうな顔だ。
「霊さん、今度は何見つけたんですか!?」
「魔法で加工された睡眠薬…しかも揮発性液体となると―」
「ミステリーでよくあるアレですね!?
もう言わなくても判ります、速くしまいましょう;;」
所謂、ミステリーでよく出てくるクロロホルムのついたハンカチで口抑えられて眠らされました的なアレである。
※ちなみに実際、クロロホルムはそんな危険なものではない。
「ふぅ…それにしても睡眠薬だけでも40種以上あるとは思わなかったわ…どんだけそう言う類の薬品おけば気がすむのよこのデパート。現品限りだったのが幸い過ぎたわ。
でも、"毒薬は無かったわ"。それだけでもまだマシって所かしら」
「たしかに…もう薬でいっぱいです……。あ、毒薬は無かったんですね」
「ええ。あくまで主に市販品の薬が主だったわ。それに加えて睡眠薬があったって感じ」
イティアの持つ『危険薬品』と書かれたジュラルミンケースは見事に満タンとなっていた。
一方、香の持つ『緊急処置薬』と書かれた薬の方はそこそこの量しかなかった。
「まぁ、本来あるべき薬が主に風邪薬とか、基本的な薬と市販薬しかなかったっていうね…」
むしろこっちを充実させた方がいいのに…まあ保健室にそこそこあるはずだからいいかあとため息をつく霊。
ふと、自分の携帯を確認すると、メールがきているのに気付く。
「華から水着新調しない?って誘いが来たけど行く?」
携帯のメールを確認した霊はそう言った
(注・ギィズ、イティア以外の全員は携帯を所持しています。)
「あ、私にも来てます。行ってみません?」
「う、うん…でも、羨ましい……」
この3人の中で、唯一『けいたい』なるものが判らず少し劣等感を感じたイティアであった………
作品名:ダンガンロンパ・ファンタジック/リロード-Chapt.1-1 作家名:暗妖