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Curiosity killed the cat.

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 他愛もないふとした好奇心は、時に思いがけない結果を手繰り寄せる。
 







  定期的にリタの手によって行われる心臓魔導器の診断の後。数分前まで検査結果およびいくつかの注意事項を明朗な声で紡いでいた唇を今は真一文字に結び、リタは黙々と広げた手帳に何かを記している。その横顔を何の気なしに眺めながら告げられた内容を反芻していたレイヴンは、その隙間からふと浮かび上がってきた疑問を、数秒逡巡したのちそのままのカタチで口に出した。


「リタっちってさ。ほんとにおっさんのこと嫌い?」


  紙面に目を落としていたリタが、顔を上げる。まだあどけない顔は、怪訝そうに思い切り眉が顰められていた。


「何よ、いきなり。そんなこと聞いて何が目的なのよ?」


 苛立ちを含んだいつもより低い声は、ぎりぎりと引き絞る弦の音に似ている。今にも罵倒する言葉が矢のように飛んできそうだ。
 多少は反発は予測していたものの、想定以上に過剰な反応を見て、レイヴンはわずかに怯む。


「いや、特に理由はないんだけど。リタっち、おっさんのこと「嫌い」って言う割にはこうやって魔導器のメンテナンスしてくれるし」
「あたしが魔導器をほっとくと思う?」
「何だかんだで体調とか気に掛けてくれるし」
「あんたが調子悪くして倒れたら、他のみんなも倒れる可能性が高くなるでしょう」
「……料理当番の時も、他の皆と違って甘いもの作らないし」
「それはただの偶然。今夜はスコッチエッグとクレープだから」


 切り捨てるような言い方で並べられる反論に、流石にいささかショックを受けたレイヴンはがくりと肩を落とした。


「要するに、おっさんのこと嫌いだって言いたいのね……」


 時折ぶつけられる「嫌い」という言葉、それが本心ではないことは重々承知だ。その上で 敢えて問いかけて、少女の反応を見てみようと悪戯心を出したのは自分であり、それで反撃されても文句などは言えない。けれど、こうもすっぱりと言い切られてしまうと、そこはかとなく泣きたくなってくる。もちろん実際に泣きはしないが。 
 今回はこのあたりが潮時だろう。どういう訳か、自分はどうも思っていた以上にリタの機嫌を損ねてしまったらしい。その証拠に、何か一言言ってやらないと気がすまないと訴える、不穏な視線をこちらに向けている。後は、ひとつふたつリタからけして好意的ではない言葉を投げつけられて、それでこの話は終わりだろう。そうレイヴンは考える。



  だが、険しくした双眸はそのままに、一度息を整えるように深呼吸をして、口を開いたリタが選び取った言葉は。
作品名:Curiosity killed the cat. 作家名:緋之元