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 鎮守府の昼休みは騒がしい。
 私たち艦娘は何らかの指令が出ればそれに従って行動し、何も指令が出なければ鎮守府内で訓練に励むのが日常です。外出は非番の日しか出来ません。軍に所属している以上、これは仕方の無いことです。
 しかしそのような生活をしていれば当然ストレスもそれなりに溜まります。かといって鎮守府内にはストレスをスッキリと発散できるような娯楽施設などありません。そのような状況でストレスを和らげる手段があるものでしょうか。
 実はあります。
 それは食事です。艦娘にとっては一日三回のこの時こそが鎮守府内での唯一の娯楽と言っても過言ではありません。となれば、昼休みの食堂が艦娘たちでごった返すのは当然と言えます。みんな我先にと厨房前のカウンターに並びます。
 私、鳥海にとっても昼休みは待ちに待った瞬間です。他の艦娘たちと同様にいそいそとカウンター前の列に並びます。
「あー、腹減ったなぁ」
 摩耶姉さんも私の前でお腹をさすりながら嬉しそうにしています。
「でも今日は豚の生姜焼きだからな。これくらいワケないぜ!」
「お好きですものね、姉さん」
 ちなみに私も好きです。ジューシーな豚肉と刺激的な生姜のコンビネーションに勝てる艦娘などいませんよ。
 私も姉さんもワクワクしながら、前に並んでいる人たちが一人また一人と減っていくのを見つめ、ついに私たちの順番が回ってきました。
「はーい、お待ちどおさま」
 食堂のおばさんが差し出したトレイには大盛りのご飯、大皿には豚の生姜焼きとキャベツの千切り、小鉢には煮物、デザートのゼリーが乗っています。生姜独特の香りがたまりません。
「おう、待ったぜ!」
「んもう、姉さんったら」
 そんなこと言ったら失礼でしょう。気持ちはわかりますけど。
「お待たせしてごめんなさいね。でもその分おいしく作ったから」
 しかし食堂のおばさんは姉さんの態度などまったく気にしていないようです。良かった、いい人で。
「そいつぁ楽しみだな。んじゃ、ありがたくもらってくぜ」
 姉さんはトレイを手に取って、周囲を見渡しました。
「あっちの席が空いてるな。先に行ってるぜ!」
 忙しなく空席へと向かう姉さん。
「あっ、姉さん、待って!」
 そんなに慌てたら……!
「いてっ」
「あうっ!」
 私の忠告はわずかに遅かった。
 よそ見をしていた姉さんはこちら側に向かって歩いていた電さんとぶつかってしまいました。
「はわわ、ま、摩耶さん……」
「おう、わりーわりー、ちっちゃすぎて見えなかったわ」
 姉さんったらまた失礼なことを。
「ちょっと、何よその言い方!」
 電さんのそばにいた雷さんが姉さんに食ってかかりました。
 あんなことを言われればそれも当然でしょうね。
「お、ちっちゃいのがもう一人いたか」
「ちっちゃいって言うな! 私だってすぐにでっかくなるんだから!」
「はわ、はわわわ……」
「はっはっは、こっちのちびっ子は元気がいいな」
「ムキー! ちびっ子もやめなさい!」
「雷、も、もういいのです」
「でも!」
「わ、私は大丈夫ですから。そそ、それじゃあ摩耶さん、ごめんなさいなのです!」
「ちょ、電、わかったから引っ張んないでよ!」
 雷さんと電さんは足早に食堂から出て行ってしまいました。
「ははっ、可愛いやつらだ」
「んもう姉さんったら……」
 私は思わず溜め息を吐いてしまいました。
 よくあるのです、こういうことが。
 摩耶姉さんは口が悪いから無用なトラブルをしょっちゅう起こします。本人はトラブルが起こっても気にしていないようですが、このままではどんどん悪評が広がってしまいます。果ては鎮守府内で孤立無援ということだって十分あり得ます。
 そんなことにならないよう、ここは一度きっちりと叱っておかねばなりません。
「さあ、行こうぜ。もう腹が減りすぎて我慢できねえよ」
 しかし今は貴重な昼休み。そこに水を差すような真似は控えましょう。私だって食事を堪能したいです。
 私と姉さんは空席に座り、私は手を合わせました。
「いただきます」
「うめー! やっぱ豚の生姜焼きは最高だな!」
 姉さんは挨拶もなしにいきなり食べ始めました。
 ……うん、やっぱり言わないとダメですね、これ。
「姉さん、お話があります。食べながらでいいので聞いてください」
「あん? なんだよ、改まって」
「以前から言おうと思っていましたが、特にここ最近の姉さんの言動や態度は目に余ります。このままでは姉さんの評判がどんどん悪くなるばかりです。もう少し周りの人たちに失礼のないよう心がけてください」
「やなこった」
「ちょっ、姉さん! 即答ですか!」
 姉さんは口に含んでいた豚の生姜焼きを飲み込んでからお箸で私を指しました。ああもう、はしたない。
「アタシは相手が誰だろうが言いたいことは言うし、やりたいことは好きにやる。それで評判が悪くなったってかまわねえよ。別に困ってねえしな」
「今は困って無くても、このままではいずれ姉さんは鎮守府内で孤立してしまいます。それじゃ困るでしょう?」
「その時はうちの可愛い妹にでも助けてもらうかな」
 などと言って笑いながら、姉さんはご飯に手を付け始めました。
「ハァー……」
 本日二度目の溜め息。
 その妹にすら見捨てられるという可能性は考えないのでしょうか?
 ……いや、まあ、別に見捨てやしませんけど。
「姉さんだっておしとやかにしてれば可愛いのに」
「ブッ!?」
 姉さんが米を吹き出しました。
「きたなっ! ちょっと、姉さん!」
「おまっ、お前が変なこと言うからいけないんだろうが!」
「別に変なことじゃないでしょう? ただの事実じゃないですか」
「だからそういうっ……ああもう!」
 姉さんは顔を真っ赤に染めながら再びご飯を口に運び始めました。
 私は布巾で姉さんが飛ばしたご飯粒を拭き取りながら考えます。
 ――口の悪さ故に鎮守府内では姉さんのことを好ましく思っていない人もいます。電さんのように恐れている人もいます。姉さんはそれをまったく気にしていません。
 ご飯粒を拭き取り終わったので私も昼食に手を付けて、さらに考えます。
 ――でも本当は優しいところもある人ですし、可愛いところだってあります。だから私は鎮守府の皆さんに姉さんのいいところを知ってほしいです。
 プツッ、ザザッ。
 ――しかし一度定着してしまった評判を覆すことはなかなか難しいものです。どうすれば悪評を払拭できるでしょうか。
「あ、あー、マイク入ってる? 入ってるな。司令室より連絡。鳥海、摩耶、電、雷、山城、龍驤、以上の六名は一三○○に司令室に集合せよ。繰り返す。鳥海、摩耶、電、雷、山城、龍驤、以上の六名は一三○○に司令室に集合せよ。以上だ」
「提督から呼び出しか。こりゃきっと出撃だな。鳥海、お前もさっさと食わないとまずいぜ」
 ――姉さんの評判を上げる方法……うーん、いったいどうすれば……?
「おい、鳥海、聞いてるか?」
「ふぇっ? なんですか、姉さん」
「お前、聞こえてなかったな? 一三○○に司令室に集合だってさ」
「えっ、いつそんな指令があったんですか?」